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ユーリとレイヴンの幸せを考えてみたらこんな事になってしまったと言う作品。
とりあえずいろんな裏要素織り交ぜてみたのでにがてなかたはぶらうざでおもどりください。







星喰みをこの大空から一掃し3年。
ユーリ達凛々の明星は相変らず便利屋のようなギルドの活動をしていた。
元々人が困っていたら無視していられないという気質の集団に、力が総てでは無いと言う小さな首領の思いの基、なぜか武力派とまで言われた彼らはそこそこ知名度の高いギルドへと育っていた。
今日も一仕事終わり、ダングレストにあるユニオンの本部のある街の近く、カロルの故郷でもあるこの街に立ち寄り情報収集する事となった。
入り口の橋を渡り宿屋へと向う石畳を歩けば、人が集り活気のあるこの街は相変らず喧騒に溢れていた。
夜でも騒がしいこの街が静かだったのはユニオンの元首にして天を射る矢の首領であるドン・ホワイトホースがその生涯に自ら終止符を打った日位だっただろうか。
豪快だったあの老人に相応しい街だと思えば、この喧騒も嫌いにはなれない。
カロルとジュディスとラピードの四人(?)で今日の晩飯は何しようかと話していれば街の奥から一人の青年が走ってきた。
見覚えのある金の髪と顔に横一文字に入れた刺青。
よお、ハリーと声をかけようと手を上げようとした所で、ハリーの後ろに続くごつい肉体の・・・天を射る矢のメンバーだろうか。
一緒になって走って向かってくるではないか。
何事だ?と視線の並ぶジュディスに問えば、小首傾げてさぁ?と答える。
いつの間に友情を育てたのか、カロルもどうしたのかと駆け寄ろうとした所で
「やっと見つけた!凛々の明星!!!」
更に続いた厳つい男の大きな声に驚き、反射的に身構える。
「久しぶりだって言うのに挨拶だな」
鞘を投げ捨て剣を構えればカロルが知った相手だけにおたおたと穏便にと喚いている。
ジュディスだってやる気満々で槍を構えていれば
「ユーリ!」
今度は背後からも知った声。
聞きなれた声色に後ろを向けば、城でお仕事忙しいんじゃねーのかよと言うフレンがいた。
当然ながらソディアと言うおまけ付き。
「なんつーか、こう言うのも久しぶりだな」
最近は所業よろしく騎士団に追いかけられる事もないのにと思っていればやっぱりカロルも同意見か
「今度は何をやったのさ!」
涙目の彼の表情にちょっとだけ懐かしさを覚えた。
というか、
「最近はみんなでずっと一緒だったから心当たり無いはずよ?」
ジュディスも最近の所業を思い返すも、戦士の殿堂で賞金を稼ぎまくって暫く来ないでくれとナッツに土下座でお願いされたぐらいと、だから騎士団とは関係ないと言う…さすがのユーリもちょっと引き気味の事情を説明してくれた。
では、なんだと思えば道の一角を埋めるような集団と化した俺達にハリーは目立つから本部へ移動しようと場所を移す事にした。
今ではすっかり様変わりしてしまった五大ギルドのタペストリーが飾るユニオン本部にはユニオンに参加していない凛々の明星の旗もなぜか飾ってある。
あとは馴染みの天を射る矢、 幸福の市場、遺構の門が並ぶ。
あと一つはいまだ名前がうろ覚えの、パティが率いる海賊ギルドのシンボルマークがが壁を飾っていた。
魔道器頼りの航海時代は終わったのだ。
これからは潮の流れと風向き、天気、星を読むかつての航海時代に戻るも、元々陸では暮らしていけない集団。
魔道器が無いというだけで臆しはせず、海図を作り海の航海図を作り上げ、惜しみなく広めていた。
俺達がその一席に並ぶのに色々ともめたらしいが、パティのように集会にさえ顔を出さず、遺構の門のように興味さえ示さない連中もいるのだ。
結束力を求めるだけなら別にユニオンに加盟しなくても良いという俺達の主張は・・・いざこざを起さないでくれと言う程度の約束になった。
まあ、名前を貸すだけなら別に悪くは無いだろう。
それによって知名度が上がり、仕事の依頼が増えるなら悪くは無い程度でしか俺達には意味合いを持たないのだから。
華美もなく不可もなく、ただ質だけは上等の簡素と言ってもいいような飾り気のない部屋に俺達は思い思いの場所に足を止める。
かつて、ドン・ホワイトホースの場所だった一際大きな椅子にハリーは座り、視線でその側に立ったフレンに説明を促した。
「まずはこれを見てくれ」
差し出された封の切られた手紙。
ジュディスとカロルにも判るようにその手紙を読み上げる。

「退役届」

と最初に書かれた文字にカロルの息を呑む音を聞く。

「人魔戦争より生き恥を晒し今日まで残された者として帝国に身を捧げてきましたが、病に身を冒されし昨今。通常勤務にさえ支障をきたすようになり、団長始め騎士団に迷惑をかける前に剣を陛下に返上したくおもいます。
一身上の都合とは言え、騎士として全うする事無く去る事をどうかお許し下さい。
 ―――シュヴァーン・オルトレイン」

「って、これなんだよ!」
目を閉じてきっと何度も読み直しただろうフレンに問い詰めるように胸元を掴む。
貴様何を!と言うソディアのおなじみのフレーズを無視してそっとそらされた視線を睨み上げれば
「僕が留守の合い間に提出していたようで、もうヨーデル陛下にさえどうする事は出来ないんだ」
悔しそうに食いしばる歯の音を聞くも納得なんて到底出来ない。
「エステリーゼ様が隙を見てこの退役届を持ち出してくれて僕も後れて知る事になったのだが・・・」
「でも普通は順番が逆じゃなくて?」
普通なら団長に届けてからヨーデルへと受理されていくものでは無いのかとジュディスは言う。
その言葉にフレンはコクンと一つ頷き
「本来はそうなるはずなのだが、さっきも言ったように僕もいなくて、城に残っていたレイヴン隊長がヨーデル陛下の護衛に当たってて、その時に提出された物らしい」
ヨーデルの奴何やってんだよと吐き捨てようとする前に
「評議会の方々もいる前でこの書類と共に口頭で願い出たんだ。
 もともと敵の多い方だったから、ヨーデル陛下もその場で即決を求められてしまい、本当にどうする事もできなかったのだ」
まるでいいわけでもするようにソディアが付け加える言葉はまるで・・・
「で、アンタは何もせず見てたのかよ」
半分キレかかったユーリを見るのは久しぶりだというように対処の判らないカロルがおろおろとする。
「私だってフレン閣下の事を考えれば今退役するのは早すぎると止めたのだ」
しかし、昇格したとは言え小隊長の身分では意見する事さえ許されず憚れただけだった。
ヨーデル陛下だって苦汁の決断だったのだと小声で、絞り出すように吐き出した言葉は彼女にとっても苦痛を伴う現場だったらしい。
「で、俺の所にもこれが来た」
もう一通の、烏の足の刻印が刻まれた封蝋のもの。言わずと知れたレイヴンの刻印の手紙を取り出して、言葉でなぞるよりも視線が追う。
「んだよ、これはっ!」
カロルに押し付けてやり場の無い怒りを壁に向けて右腕を叩きつける。
背後で気配が怯えるように揺れるのを無視をして、みんな何度も読んだだろうその手紙を読み上げた。

「ハリーへ。
 手紙で言うのもなんだけどね、俺様ユニオンはもちろん天を射る矢を辞めさせてもらうわ。
 本当なら手紙じゃなくってちゃんと話さなきゃいけないと思うんだけど、そうするといつまで経っても辞めれそうに無いのよね。
 だから手紙にして書いたんだけど。
 あ、誤魔化しが効かない様にメアリーの所にもおっさんユニオン辞めましたって手紙書いておいたから見なかった振りしちゃダメよ。
 とりあえずは、ちょっとやらなきゃいけない事とか出来たから当分あちこち飛んで回ってるけど、間違ってもギルド辞めた人間を探すような愚かな真似だけはしないように。
 長い間ありがとう
 ―――レイヴン」

何処か優柔不断な内容な物のしっかりと意思を表示した言葉に最後まで読みきる事の出来なかったカロルの目には涙がいっぱい溜まっていた。
出会った頃から泣き虫だったけど、最近はあまり見なくなった涙にギリと歯を鳴らし、もう一度右手を壁に叩きつけ、部屋を出た。
「ユーリ!」
フレンが慌てて駆け寄り、肩をつかんで呼び止めれば、振り向いた顔は今にも殴りかかりそうなほど怒気を含んでいる。
「納得いかねぇ!レイヴンの奴探しだすっ!」
剣を持つ手でフレンを振り払い、ジュディスやカロルが追いかけてくるのも無視して外へと飛び出した。
「待ちなさいユーリ!」
クリティア族の人よりも長けた身体能力をフルに活かして何とか街を飛び出そうとしたユーリの前に飛び出してジュディスは息を飲んだ。
目を真っ赤に腫らし、ぽたぽたと流れ落ちる涙を隠しもせずしゃくりあげる呼吸さえ無視して怒りを露にする。
「俺は、俺はレイヴンに何も聞いてねえっ・・・」
この気持ちはなんだというように両腕をユーリに掴まれる。
感情をコントロールできないというように両腕に食い込む指先に悲鳴を上げそうになるも、何とかそれを誤魔化すようにユーリを抱きしめる。
「判ったわ。判ったから、一緒に探しましょう」
何度も背中を撫で付けて、幾筋も雫を落とす目元をそっと指先で拭えば、自然と指先の力が抜けて、真っ赤な痕を残す腕に気づいて少しだけ気分が落ち着いたのか「わりぃ」と小さな声の謝罪に気にしなくていいのよと笑みを作った。
限りある広さとは言えダングレストの街並みは随分と入り組んでいる。
ジュディスは大通りで探しているだろうカロルの視線を避けるように入り組んだ裏道へとユーリをつれて潜り込む。
怪しい店だとか如何わしい商品だとか並ぶ一角さえ抜けて薄暗い住居地区の一角にある水飲み場で足を止めた。
ジュディスは今まで気づいていて口にしなかった事がある。
ユーリも気付かれているだろうと知っていて口にしなかった事がある。
お互い別に説明しなくてはいけない事でもないし、あえて言う必要性も感じなかった。
そう思ったからこそ見て見ぬフリでは無いが、あえて説明を求める事でもないと判断していた。
が、今はこの状況を正しく理解する為にもきちんと話さなくてはいけないと、初めてこの事に向いあった。
「ユーリはおじさまの事が好きなのね?」
こんな錯乱した姿を見せられて好きと言う枠組みで収まるわけないと判っているのにあえてそう口にした。
ユーリにとっても今更の問題に鼻で笑って
「そうだ、好きだ。愛してる。今更確認するような事か?
 今まで黙っていただけで気持ち悪いとか言うつもりじゃねーよな」
皮肉気に口元を歪め目は何かあったら飛び掛りそうな色をしている。
「まさか。人を愛するという事はすばらしい事だと私は思うわ」
心からと言うように胸に手をあて
「ただ、ほんとにユーリは何も聞いてないの?心当たりも?」
「ああ」
一度怒って泣いた事によって何処か落ち着きを取り戻した感情は理性的な眸で答えていた。
「騎士団にはちゃんとした公式の手続きを踏んで退団しているわ。
 何かそれらしい兆候とか覚えはなくて?」
優しく最後に逢った日を思い出させる。
記憶を確かめるように目を瞑ってゆっくりと開いた口からは確かオルニオンだと、いずれ拠点の地に決めようとしたその名にもう10日以上前の話だと思い当たった。



雪の舞うオルニオンの街はどの家も寒さに強い厚い木と煉瓦の家作りになっている。
カロルがコツコツと貯めた貯金はいつのまにか小さな家を建てれるくらいの準備金が溜まっていた。
ギルドと言う職業柄あまり素行のよろしくない連中に絡まれる事もあり、オルニオンの端の一角に立てようと決めたのはそれだけの事情だけでは無い。
バウルとあまり離れたくないという私の意見にバウルが休むのに丁度良い岩場に近いからお願いと言う意見を汲んでくれたもの。
バウルも凛々の明星の一員だというからにはあまり離れたくないという仲間意識に感謝した日の事を忘れる事は出来ない。
その日は確かレイヴンも珍しく騎士団の仕事で同行していたのだ。
拠点が決まっておめでとうと喜んでくれた笑顔は心からの祝福。
何時もの胡散臭い笑みを消してお祝いといわんばかりに宿泊先の宿でご馳走してくれたのだ。
15歳になったとは言えお祝いだからとお酒を振舞われたかカロルはあまり口にした事がないせいか一杯を飲み終える頃にはふらふらとし始め、ジュディスはまだ飲み続けている二人にカロルをつれて先に寝るわねと言い残して部屋へと上がった。
カロルをベットに寝かしつけて暫くの間岩場で休んでいるだろうバウルと取りとめの無い話しをしていた。
小一時間経ったぐらいだろうか、二つの足音が隣の部屋に消えていく。
戻ってきたのねと思えばあまり厚いとはいえない壁からユーリの声がかすかに聞えた。
思わず何の話しをしているのかしらと耳を澄ませば

「なぁ、レイヴン・・・」
「仕方ないわねぇ。ほら、こっちにおいで」
「お、珍しく積極的?」
「失礼ねぇ。おっさんはいつもその気よ」
「ほー・・・」
「ただ青年ほど若くないから体力がね・・・」
「仕方ないだろ。俺はおっさんと違って若いんだから」
「おっさん・・・ちょっと・・・逃げたくなった・・・」
「逃がさねぇ」
「ははっ、逃げないからそんなおっかない顔しないのユーリ。美人が台無しよ」

そんな何処か陽気な楽しげな内容に壁の向うを睨目つけてベットへと潜り込む。
布団をかぶっても聞えてくるお互いを呼び合う声には慣れたものだけど、何でここにこんなにもとびっきりの美人がいるのに男共は私を恋愛の対象にしないのか拗ねてみる。
「私って魅力が無いのかしら」
自信なさそうに溜息をこぼすも、二人には大切にされている思いは常にある。
あの二人に美的センスが無いのだと決め付けて、既に会話にも成り立たなくなっている声を寝物語の代りに瞼を閉じた。

次の朝にはレイヴンとは別れたから、その日が最後だと思い出せば同じ日を思い出しているユーリの何処か苦しそうな顔を盗み見る。
「あの日おじさまに何か変った事なかったかしら?」
一番側で接していたのはユーリなのだからと何か気付いた事はないかと再度問う。
「変った事って言えば、まぁ・・・あれだ」
少しいいにくそうにして顔をそらした。
「なに?」
話が進まないと気付いただろう何時もとは違う彼との記憶を強引に言わす。
「いつもより積極的だった」
背中を向けてポツリと漏らした言葉と同時に微かに見えた顔が真っ赤に染まっていく。
「積極的って・・・」
何の意味かは判ってるつもりだが、ユーリはご丁寧にも説明を付けてくれた。
「朝まで寝かしてくれなかった的な?」
寝た時間は遅かったとは言えあの日、私がさっさと眠ってしまった後に延々とめくりめくる甘美な時間を過したという。
こめかみに指を添えてあえて言わなくてもいいのにと思っていれば、乙女心を理解できない男はなお言葉を続ける。
「だって、もっとって強請られたら張り切っちまうのは仕方ないだろ?」
「もういいわ」
酷くなりだした頭痛にいまだ顔を赤らめているユーリが何を思い出しているのか考えない事にしておく。
淡白な関係だと思ってたのに、意外と濃厚な時間を作ってた事に驚きはしたものの
「つまり、それがおじさまのさよならだったのね」
普段ありえないような濃密なまでの思い出を最後に彼は姿をくらます決意をしたのだろう。
いや、決意が先なのだろうが、今となっては足取りさえももう掴む事は出来ない。
再びレイヴンの消失に向き合ったユーリは何処か暗い瞳の携えてジュディと彼だけが呼ぶ私の名を口に出す。
「俺、暫く一人で行動するな」
口に出した言葉は既に決意したもの。
「ユーリ一人におじさまの探索に当てるなんてそれは不義に当たるわ」
おじさまが心配なのはみんな一緒。
しかも手がかりの無い探索に一人押し付けるなんてそんな孤独な事とてもじゃないけどさせられない。
少しだけ顔を歪め苦しそうにそういうんじゃないかと思ったと笑う。
「だけど俺だけなんだ。まださよならしてないのは・・・」
そういって言葉を濁す。
ポツリポツリとまたユーリの足元だけに降る雨の中彼は笑って見せる。
「俺にはまだレイヴンを探す権利がある」
さよならの別れ話もなしに一方的に捨てていかれる恋人なんてこの世にはどれだけいるだろう。
だが、それを甘んじて受け入れれるほど出来た人間ではなく、諦めが悪い事がユーリの売りだ。
「レイヴンを探すのは俺の権利なんだ」
はらはらと涙を零して笑うユーリを見上げれば、もう何も言う事は無い。
「仕方が無いわね」
既に決めてしまった決意に私達が出来る事と言えば彼の無事と目的の達成を祈るだけ。
「カロルと合流してギルドの事を少し相談しましょう。
 おじさまを追いかけるのはそれからでも十分でしょ?
 それぐらいの時間ぐらい私達に割いてくれてもいいわよね?」
止まらない涙を指先で優しく何度も拭う。
はれぼったい瞼と真っ赤な瞳のユーリをとりあえず宿屋に置いて、カロルを見つけて三人で話し合いを始めた。
ユーリ一人がおじさまを探しに行くのはさすがに驚いた様子だけど、幾つかの約束を決める事でカロルもユーリがレイヴンの探索に行く事に納得をしてくれた。

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