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最終話です。
いきなりですが。
ただこれはぽつぽつと書ける設定なので、とりあえず幸せにしてあげようよー的な感じで最終話にしてみました。
本当なら前回で終わらすのがベストだったんだろうけど…
あまりに兄達が自由すぎてユーリが不憫すぎる話におまけと言うかなんといか。
なので最終話です。





ピンポーン

見慣れた扉すぐ脇にあるチャイムを鳴らす。
高校を無事卒業して大学も出て無事社会人になっても会いに行くのは結局辞める事が出来なく
「はーい。鍵空いてるよー」
「お邪魔しまーす」
年月が過ぎて変わった事と言えば
「シュヴァーンがいないときったねー部屋だな」
「青年のトコと大して変わらないじゃないの」
「まぁ、客を迎え入れる心構えがある日とない日の違いはしょうがないだろ?」
「それを言ったらおっさんだってそうよ」
言いながらもゾウリを脱いで春になって片づけられたこたつのテーブルの前に座り、出してくれたコーヒーを飲む。
当然ミルクと砂糖入りで。
「で、この春もシュヴァーンは帰ってこなかったんだな」
「まさかのニューヨーク支店からロンドン支店に栄転なんて、本人もびっくりな転勤だったんだし」
「出世街道まっしぐら?」
「優秀なのも問題よね」
きっと最愛の弟の許に戻る為に一生懸命働いた結果だったんだろうが哀れすぎる結末だと心の中で涙を流してみる。
「それよりも青年だってフレン君と別居して大丈夫?」
「別居ってあのな…今ん所お互い何も問題なしだぜ」
「そりゃおめでとう」
「そういうおっさんはシュヴァーン居ないのに慣れたのか?」
「なんか未だに」
慣れないと言う。
たぶん半生を共に過ごした片割れが仕事とはいえ居なくなったのだ。
最初こそ寂しいとめそめそしていたおっさんだったが、今ではそれでもまだ寂しいと言う程度に落ち着いている。
「依存しすぎだって言うの」
「そりゃ分っているけどね」
言いながらも俺の目をじっと睨む。
「一つ聞きたいんだけど、青年はなんでおっさんを押し倒そうって言う体勢になってるのかな?」
「そりゃ寂しがってるおっさんを慰めようってだな…」
ずりずりと体を引き抜きながら俺の下から抜け出したおっさんは俺を睨みつけながらも帰れとは言わない。
「それよりご飯食べたー?」
「うんにゃ。朝起きてすぐ来たからな」
「だろうね。でなきゃ何で休日に朝一で起きなきゃいけないのよ」
言うも俺が来る事が判ってかラフなスタイルに変わっている。
「お泊り禁止令が出てるからなシュヴァーンに」
「にーちゃんグッジョブ」
壁にかかってある写真にびしっと親指を立てる。
思わず兄離れがいまだに出来ないおっさんの上にかぶさり
「いやいやいやいやー。おっさん一人じゃなにかと不安だろ?」
「もう40にもなればそんな不安なんてかけらもないわ―」
再度押し倒されそうな体勢を足も使って押しのけられる。
「あのな。いくらなんでも恋人にこんなふうに抵抗されると悲しいんだけど」
「俺としてはいつのまに青年がおっさんの恋人になったのか未だに理解できないんだけど」
半目で睨みつければ青年はまだ子供っぽさを残す表情でキョトンとし
「そりゃ、俺がおっさんを抱いt・・・」
「言わんでもいい―!!!」
思わず近場に在ったクッションを投げつければ見事顔面キャッチをした青年は、それでもニコニコと思い出し笑いでもしてご機嫌でいた。
「あん時の可愛さは半端なかった…」
「ううっ、酒の力ってホント恐ろしい」
ぐでんぐでんに酔っぱらった挙句の朧気な記憶をかき集めた結果の出来事と結末。
もっとガッツリと酔っぱらっておけばと思ったのは一度や二度の話じゃない。
「俺としてはもっとコミュニケーションがあってもいいと思うんだけど。せめて週2とか」
「やめて。せっかくの休日にそんな生っぽい話」
キッと睨んでくるもそれは御馳走と言うものですよと注意を促したいがあえて沈黙。
「えー?だってそういう所自覚してくんないと俺これでも焦ってるんだけど」
「なにが?」
「おっさんを狙ううら若き狼どもの巣窟に身を置いている現状に」
「安心しなさい。今も過去もそんな悪食なのは青年1人だけよ」
「イエガーの奴が露払いしてくれてるからな」
「何その事実。イエガーの奴、んなことしてたの?」
衝撃の真事実にあんぐりと口をあけっぱなしの顔にニヤリと笑う。
「'ガキの分際で最愛の弟に手を出そうとは、末代まで祟ってやるって’ステキな日本語で仰ってましたよ」
「ほんと兄馬鹿ねぇ」
「テストの返却ん度に真っ赤なペンで呪いの言葉が書いてあった時はこわーって思ったけどね」
「もっとやれー」
棒読みの力ない応援に苦笑。
とりあえず腹も減ったしと台所に立って冷蔵庫の中を物色。
「なんか軽く作るな」
「そういや塩切らしてたんだっけ」
「あー、ほんとだ。家から持ってくるわ」
「悪いわねー」
言ってゾウリをひっかけてパタパタと出かけて行く後姿を眺めて独り苦笑。
すぐ隣から聞こえてくる扉の開閉の音と壁一枚隔てた隣からの物音。
シュヴァーンのお泊り禁止令もあまり意味をなさないご近所物語に彼が知った時の顔は今思い出しても笑いが止まらない。
そんな光景を思い出しながら数分も置かずに戻ってきた姿に気づかれないように目を細める。
「塩鮭あったんだけど食べるよな?」
「豪勢ね」
「あんたは1人だと最小限の生活しないからな」
「青年良いお嫁さんになるわよ」
「だろ?俺の伴侶は幸せになれるぜ」
「おっさんなんか見て言うのはやめなさい」
「結婚してくださいっておっさんから言わせるようにまずは餌付けだ。胃袋をガッツリ掴めって奴だな」
「あのね。男の子なんだからもうちょっとプライドもとうよー」
「おっさん相手にプライドなんかぶら下げてたらあの銀髪どもに掻っ攫われちまうからな」
「ほんと青年はアレクセイとデュークが苦手なのね」
「得意とする奴の顔を見てみたいです」
「デュークだけならおっさんいけるぜ」
「くそう。辛口同盟め」
二人仲良い理由は酒の好みも食の好みどころか話の好み温泉めぐりの趣味まで恐ろしく一緒と言う…思わぬ一致と言うと言う理由だった事。
そして認めたくはないが俺はアレクセイとほぼ同じような酒や食の好みの為に何故か仲間意識を持たれていると言う…逃げ出したい罠にはまっていた。
そんな時はイエガーとシュヴァーンは少し離れた所で生暖かい目で見守ってくれるも決して助けたり仲間になろうとはしない。
そんな彼らは淡口派だから。
今度こそ過去に何があったか問い詰めてやろうと頭の片隅にメモをしておく。
「さて、ちょっと待ってろよ。すぐ食わせてやるから」
包丁を握りしめて台所に立つ後姿を眺めながら
「随分と俺も絆されたものだわね」
あまんざらでもないこの環境に明日も休みだし今日は仕方がないかと考えてる自分に失笑してみた。

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