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空に向かって手を上げて
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引き出しの中から久しぶりに同人誌を発掘して読みふけってしまいました。
やっぱりユリレイ好きだな…なんてネットまで網羅して日がな一日が終わってしまいました。
細々ですがまだまだ継続中ですよ(苦笑)







レイヴンはこの日、シュヴァーンの隊服を纏い自分の執務室に居た。
溜りに溜まった書類は副官では処理できない物ばかりで、朝から一日書類に目を通してはサインを書き込んでいた。
時折部下が任務の報告に来たり、エステリーゼがお茶に誘いに来たり、フレンがご機嫌をうかがいに来たりと…最後のは何故に?と疑問は尽きないが、そのたびに手を止めてひと時の休憩を兼ねていた。
だが、さすがに日は沈み、月も高く夜も更ければもともと静かなシュヴァーン隊隊舎の付近はさらに静かになる。
ランプの明かりを頼りに最後の書類を片付ければ背伸びをして背筋を伸ばす。
ランプを消してもう眠ってしまおうと思えば、閉めずにいたカーテンから柔らかな月光が室内に忍び込んで作り上げた自分の影に小さく笑みを向けた。
こんな時間までまじめに仕事をしているなんて自分でも意外だと、自分に正当な評価をしないシュヴァーンはそのまま隊服を脱いでベットに潜り込む事に決めた。

その日、遅くにユーリはザーフィアスの下町に辿り着いた。
既にどの店も火を落として眠りについた時間。
さてどうした物かと考えるも、最近増えた自分の塒へと足を向ける。
慣れた手つきで木の枝から枝を渡り歩けば華やかなザーフィアスの城でもどこか陰鬱とした一年を通してあまり日の当たらない隊舎へと足を向ける。
もっとも今は夜なので、昼間ほどの影の濃い地域ではないものの、それでも目映い月明かりのせいか、そこは何処か夜でも暗く感じた。
だが、月の角度が良いのか柔らかな月光がそこにも等しく降り注いでいて、木々の合間から月明かりを頼りに目的地へと向かえば、こんな時間だと言うのに室内からランプの明かりがこぼれていた。
まだ遠い物の、目を凝らしてみれば見覚えのある夕闇にも似た男が窓の外に背中を向けて何やら一人仕事をしているようだった。
周囲の通路にも明かりは灯されているものの隊舎にはそこと詰所の二か所だけが明かりがこぼれていて、思わず夜遅くまでご苦労さんと心の中で呟け太い枝に足を乗せて幹にもたれかかる。
仕事の邪魔するのも悪いからと、どうせすぐ終わるからとたかをくくって仕事が終わるのを待つ。
それがいけなかった。
気が付いたら転寝をしていたようで、目的地の明かりもいつの間にか暗くなっていた。
しまったと思いながらも、枝から枝に飛び移って目的地へと向かう。
窓のカギをかけてないのは知っている。
別の窓の向こう側に居る幼馴染の所でもよかったのだが、今日はなんだかこっちの窓の向こう側の男に会いたかったから、悩む事もせずそのまま向かう事にした。
この男の取り扱いその1、気配を隠してはいけない。
かなりと言うか非常に気配を上手く隠したつもりで居ても何故か読まれてしまい、ちょっとしたお茶目で驚かすつもりが、命がけの反撃にあうリスクを背負わなければいけない。
なので、足音を鳴らしながら可能な限りいつもの調子で居れば大体誰がいるかわかるらしく、部屋の扉をノックして呼びかける以上の返答を貰える謎の高性能さを発揮してくれる。
本人いわく無駄な能力というが、それで誰がいるかわかると言うんだから一芸もそこまで行けば立派なものだ。
窓も外までたどり着いてノックをすれば、ひょいと伸びた手が窓を押して広げてくれるのを手伝うようにして窓を広げその中に滑り込む。
器用な事にベットから伸ばされた手はぱたりと落ちて「何かあったか…」なんて、その姿の通りシュヴァーンモードで一応の心配をしてくれる。
「悪い、遅くなりすぎたからこっちで寝かせてもらってもいいか?」
聞けば器用な事にベットの中をもぞもぞと移動して半分ほど明け渡してくれる。
剣をベットのすぐ下に置いてブーツを脱いでもぐりこめば
「今帰って来たばかりなのか?」
何処か寝ぼけた声で伺う様子に俺はあくびを一つ零し
「思ったよりも時間喰っちまってな」
シュヴァーンの体温で温まっていたベットはひどく心地が良く、疲れた体はどんどん重くなっていくが、考えれば体温の低いシュヴァーンには夜の空気を纏ってやって来た俺に温もりを奪われる形で寒くなければと思うも、すぐに聞こえてきた静かな寝息に俺も瞼を閉ざした。

どれだけ時間が過ぎたか知らないが、頭上をゆれるカーテンのドレープが作る影の気配に目が覚めれば、この部屋には俺は1人だった。
サイドテーブルには簡単な食事と水差しがあり、目が覚めたら食べるようにとのメモが1枚挟まっていた。
気を遣わせて悪いなと思うも、用意されたサンドイッチに思わず目を瞠る。
旅の間に食べ慣れたおっさんの手作りサンドイッチが用意されていたのだから、思わず懐かしくなり何度も咀嚼してゆっくりと味わうように丁寧に食べる。
そして、隣の部屋に続く扉へとノックをして開ければそこには一人の男と、机を挟んで立つ白と水色を基調とした驚く顔が面白い幼馴染の顔があった。
「ユーリ?!」
「よう、フレンおはよう。おっさんも急に悪いな。朝食まで用意してもらって」
「え、ちょっと、何でユーリが…」
「だいぶ疲れていたようだがよく眠れたか?起こそうと思ったのだが、なんかよく眠ってたからそのままにしておいたのだが予定はなかったか?」
「何でユーリがシュヴァーン隊長の寝室に!」
「予定は昨日まで。いきなり悪かったな」
「いや、気にしなくてもいい」
「いえ、気にします!」
「何が?」
ユーリはフレンに向けて小首を傾げて少しの間考えてやっと思いついた。
「おまえ、いくらおっさんに憧れているからって一緒に寝たいって言うのは騎士団長としてどうよ」
「えー?」
「違うだろ!!!」
ユーリがわざとからかうようににやにやと人の悪い顔で笑えばシュヴァーンもちょっと困った顔で控えめながらも抵抗の声を零すのだから、顔を赤くすればいいのか、青ざめればいいのか器用にも忙しく一人で百面相をしている。
「冗談だって」
「そうそう。フレンちゃんも真面目なんだから」
「お願いですから二人してからかわないでください」
疲れたと言うように肩を落とすフレンに悪かったってと言って謝るユーリとシュヴァーンだが
「おっさん悪いけどもうちょっとベット借りてていい?」
「どうせ今日も缶詰だから別に構わないぞ」
言ってシュヴァーンは昨晩すべて終わらせた書類が朝目を覚ましたらすべて一新されて山積みになっている光景にあまりの長期の留守に副官が静かに怒っている事を察して黙って書類仕事に精を出す事にしたのは二人には知らなくてもいい事だと思うのだが…
「んじゃ、悪いけどもう一眠りさせてもらうな」
そのまま寝室に向かおうとするユーリを呼び止め抽斗から包み紙を一つ取り出す。
「念の為だが、それを飲んでから寝なさい」
真っ白の紙を五角形に折り畳められた物をユーリは不思議そうな顔で眺めた後少しだけばつの悪い顔を作る。
「悪い」
言ってドアをぱたんと閉じた後フレンの何か不思議そうな声が聞えるのを苦笑して聞いた。
真っ白の包み紙の中には真っ白の粉が入っていた。
微かに茶色の点々も混ざっていたが、それを口の中に放り込んで、水差しの水を一気に煽る。
「にっげー…」
思わず顔を顰めてしまうも体を横たえればすぐに眠気は襲ってきた。
睡眠薬でも混ざってるのかと聞いたくもあったが、それよりも疼く背中の傷の事を何も尋ねず、そして黙っていてくれたおっさんに少しだけ感謝して、落ちるように眠りにつく事にした。

次に気づいた時にはすでに周囲は真っ暗だった。
ランプの明かりが零れていて、ドアを開け広げた向こう側にはシュヴァーンが執務室でまだ仕事をしているようだった。
ぼんやりと眺めていれば、自分の状態が変わっている事に気が付いた。
着ていた服はサイドテーブルの上に折りたためてあり、上半身は裸だった。
思わず服に手を伸ばせば
「悪いが服に血がついていたから洗わせてもらったぞ」
顔も視線も書類から離さずに声だけが俺に届く。
「わりぃ」
「あと、傷も直しておいたが、心配だったら嬢ちゃんの所でしっかり治してもらうと良い」
「おっさんが直してくれたんなら問題ないさ」
言って消えた背中の痛みに手を伸ばすも、そこにはもう怪我の跡もない。
「珍しくドジふんだな」
「あー、まぁ、魔物とはいえ子連れ相手は一瞬ためらうって話だ」
「ああ、それは迷うな」
「迷った結果こうなりました」
「で、その親子は?」
「どっかで育児に励んでいると思う」
「そうか」
言って、シュヴァーンが小さく笑った気配につられるように笑えば
「そう言えばフレンが目が覚めたら自分の所に来るようにって言ってたぞ」
「なんで?」
「さあ?」
書類から一切目を離さない男はそれでも首だけを傾げて小さく笑う。
「君達は仲が良いのだな」
「まぁ、だけど心配はさせられねえし」
「で、俺様の所には来るんだ」
「そりゃ、おっさんなら何も言わないだろ?」
言えば初めてそこでシュヴァーンはペンを置いて席を立った。
それから俺の前まで来て立ったまま俺を見下ろす。
左側の目を隠すように伸ばされた髪の間からでも両目でしっかりと、まるで睨みつけられるその双眸に思わず眉間を狭めてなんだよと言うように無言で訴えれば、いきなりげんこつが頭に振ってきた。
「い、いってー…」
予想外と言うか、何というか…思わず頭を抱えてベットの上に蹲れば
「心配はしたぞ」
「も…申し訳ありません」
涙目になりながらもあまりの迫力に丁寧に謝罪。
ふうと零れ落ちた溜息に許された事は判れば、ギシリとベットがしなる。
隣にシュヴァーンが座っていた。
「青年の事だから無理するなとは言わないが、あまり心配はさせないでおくれ」
「悪い」
大切な物を失ってばかりの男のどこか懇願にも近い言葉。
フレンじゃないが随分と近くにいる事を許されているなと思いながらも、座るシュヴァーンに背中からもたれて
「おっさんだから甘えられるんだ」
自分で言った言葉にびっくりした。
近くに居る事を許されていると思ったばかりなのに、近くに寄り添っているのは自分じゃないかと気づいて思わず叫びそうになる口に手を当てて動揺を誤魔化すも、思わぬ告白をされてしまったシュヴァーンの様子を伺えがどこか呆れたような顔。
一瞬反応なしかよと何処か残念がる心だが俺は見てしまった。
ほんのりと染まる耳にシュヴァーンでも嘘は隠せないのなと、どこか呆れながらも誤魔化しきれない本心にもたれさせた背中でぐりぐりと押しながら甘えるように体重をかけて行けば、無言のまま俺の体重を受け止めるおっさんに何気ない話題を提供してやがて訪れる眠気まで静かに話を続けて囁くように笑いあっていた。



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