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エイプリルフール限定イベントですのでタイトルは単に付けてみただけです。
ええ、エイプリルフールですので。
何かイベントやってみたかっただけです(爆)


フレンはいつからシュヴァーンを尊敬始めたのだろうかと考えてみる。
入隊前じゃんと行き着くけど(みもふたもない)
何か仲良くなるきっかけはあったはず・・・


そんな妄想1話目です。<え?


シュヴァーン隊長と初めて言葉を交わしたのはまだ入隊したばかりの見習いの頃だった。
あっという間に退団してしまったユーリの居ない孤独に与えられた雑務をこなして寂しさを紛らわせて居た時だ。
遠征に出かける準備を平民出身の見習い騎士が中心に埃とカビっぽい地下室でそろえていた。
漆黒の闇が訪れる頃になって漸く準備が出来たと言う所で貴族出身の見習い騎士が一枚の紙を俺達に差し出した。
「小隊長がこれも揃えてくれってさ」
隊長、小隊長が貴族で占める部隊に配属されて、平民出身の俺達は小間使いのように働かされるのには慣れたつもりだったが、これはわざとだろうと隣の同期が今にも飛び掛らんばかりの様子にそのメモ用紙を奪うように取り上げる。
「判った、後はこれだけなんだな」
語尾を強調して言えば一瞬怯んだ貴族の見習いはそれでも胸をそらしてそうだと見栄を張る。
メモには弓矢の矢を10箱もってこいと書いたもので、こんな重要な物を忘れたら大変だったなと少し青ざめた顔でみんなで慌てて取りに行った。

寄宿舎に帰る頃にはもうへとへとになっていた。
埃を派手に被ったために井戸で顔だけでもと洗いに一人向えばそこにはあまり見慣れぬ隊服の男が井戸の縁に座っていた。
月明りの下でその姿はよく判らなかったものの、井戸から汲み上げた水を飲み、それから魔道器でも使っているのか何度か淡い光に包まれていた幻想的な光景を幻でも見るかのように眺めていた。
暫くして井戸の縁に座りなおし、溜息を吐く音さえ聞えてきた。
もう良いだろうか。
こっそり盗み見していた気まずさもありわざと鎧の音を立てながら井戸へと近付けば、井戸の男は気づいてくれて、俺の方へと視線を向けた。

「こんばんは」

なんて声をかければ良いかなんて判らなく、当たり障りの無い言葉を投げた所で初めて気が付いた。
男の纏っていた橙色の隊服といい、意匠凝らした唯一の隊服といい、改めてその人物を思い出せば、ガチャリと鎧の音を立てて敬礼をする。

「失礼しました」

目下から声をかけるのは大変失礼な事で、知らずとは言え無礼を働いてしまったのでは無いか、気を悪くしてしまったのでは無いかと焦る心臓の音が大騒ぎをしている。
前髪を片方だけ長く伸ばした男は別段気にして居ないというように
「今上がりか?」
「は、はい」
落ち着いた声がやけに心地良い。
青とも緑ともいえない複雑な色の瞳が僕の姿を見て
「明日から遠征では無いのか?」
「はい。船での移動になります。行き先は当日発表の為まだ知りません」
と言った所で、相手は隊長だ。そんな事判りきってるだろうに思わず言葉にしてしまって顔が恥かしさに染まっていく。
それを見てか、隊長はくつくつと笑う。
まだ騎士団に入隊する前に遠くから時折見た姿といい、入団してからもあまりお目にかかった事は無かったが数少ない遭遇の時の感情を殺したような姿しか知らなかった為に、何処か人懐っこそうな笑みに何処かがほんわりと暖かくなる。
「シュヴァーン隊隊長のシュヴァーン・オルトレインだ」
そういって彼は右手を差し出してくれた。
思わず差し出された手を凝視してから慌てて埃を拭ってその手に握手を返す。
「フレン・シーフォです。今年入団しました」
簡単な挨拶の今年の新人かと呟き
「面白いのがいると聞いていたが・・・君では無いようだな」
クスリと笑う顔にすみませんと謝り、何故か思い浮かんだ親友にはずかしい思いをしたと心の中で毒づく。
「となると、真面目な方は君なのかな?」
え?と、何故他の隊の隊長が入ったばかりの新人を知っているのだと思わず顔を見てしまうが、シュヴァーン隊長はただ静かに笑い、立ち上がって僕の肩をぽんと叩く。
「明日は忙しくなる。早く休みなさい」
そういい残して立ち去って行った。
長い廊下を去っていく後姿を見送った後、軽く叩かれた肩に手を添える。
今度はもう少しまともな話が出来るといいな。
突然の遭遇に会話らしい会話が出来なかった事に気付いて小さく苦笑。
井戸から汲み上げた水を掬って顔を洗い、何処か勇気付けられた気分に明日はがんばろうと気合を入れた。

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