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シュヴァーンとユーリのシリーズ(?)
シュヴァーンが増えてきました。
カテゴリー独立した方がいいかな?
とりあえずシュヴァーンブームが去るまでストイックなおっさんが続くと思います<開き直ったw
シュヴァーンが増えてきました。
カテゴリー独立した方がいいかな?
とりあえずシュヴァーンブームが去るまでストイックなおっさんが続くと思います<開き直ったw
珍しい事にデイドン砦でその姿を見た。
オレンジ色の隊服に赤いアシンメトリーのマント。
弓ではなく紅い剣を腰に佩き、正面に並ぶ騎士に何やらと指示をしていた。
暫く眺めて、その騎士達が小さな小隊を作って去っていくのを眺めてからよおと声をかけた。
振り向いた顔が驚きの色を浮かべる。
「こんな所で珍しいな」
「それは俺のセリフ。で、こんな所で何してるんだ?」
聞けば砦からハルルへと向って歩き出した騎士達の背中を見送りながら
「単なるこの辺の魔物の討伐だ」
「ああ、ハルルにはエステルが居るからな」
少しでも安全な旅路になるように根本的な絶対量を減らそうとしているのだろう。
「まあ、エステルの場合そこらの騎士なんかより強い気がするけど・・・」
「だからと言って、そうは行かないだろ」
二人で苦笑。
とんだはねっかえりなお姫様だと言葉にはせず遠くに見えるハルルの木を眺めていれば
「折角だ。茶ぐらい飲んで行け」
「隊長自ら入れて頂けるとあれば断わるわけにはいかないな」
断わった事がフレンの耳にでも入ったらどんな小言を言われるかと苦笑を零していれば、詰所へと案内していたシュヴァーンは不思議そうな顔で俺を見ていた。
詰所は前回忍び込んだ部屋以外にも小奇麗な部屋があった。
ザーフィアスの帝国旗を壁に飾り、騎士団の旗も掲げてあった。
ひょっとしたらここは作戦本部と言うか、隊長格しか入れないとか言うような部屋なのではと思いながらも紗をかけた窓からは薄明るい陽光が遠慮がちに忍び込んでいた。
トントンと同時に開けられたドアには器用にも片手に銀色に輝くトレーを手にしていた。
「悪いが茶菓子が見つからなかった」
そういってお茶請けにはパンをミルクとタマゴと砂糖に浸した軽食とも取れる物を目の前に置かれた。
シナモンの香りが室内に広がっていくなんとも違和感を覚えながら、そういうシュヴァーンの前にはカットされたフルーツだけが置かれていた。
「アンタ、何か俺の事誤解してるだろう」
食べやすいように切り目の入っている一角にフォークを突き刺して口へと運べば、女性受けするからと苦手な甘い菓子作りの才能を発揮する相手に面と向かって言うも、口の中に広がるプリンにも似た甘さに二口、三口と黙って食べる。
「青年は甘いものがほんとに好きだからな」
とりあえず出しておけば文句は言わないと思ったと零した愚痴に思わず苦笑。
「アンタって無駄に気遣い出来る奴なんだな」
「上司に恵まれたおかげでね」
今は亡き紅玉の瞳を思い出して無意識に眉間がよってしまう。
「折角の至福の時間を汚すな」
「悪いな。私にはそれほど悪いだけではなかったからな」
最後の最後まで彼の人の心変わりを願った目の前の男との過去は知り合って浅い俺には計り知る事が出来ない。
だが、レイヴンならともかくシュヴァーンが言うのだ。
どんな目に合わされてもきっと心の何所かがいつまでも慕っているのだろう。
「なんかさ、あれだよな」
黙々と食べて最後の一つをフォークで刺した物をシュヴァーンの目の前に突きつけて
「黙って聞いてるとあれだ。亭主に先立たれた未亡人みたいだぜ」
言ったほうも言われた方も思わず沈黙。
感覚でなんとなくそう思っただけだが、いざ言葉にするとなんとも言いがたい破壊力を持っていた。
おっさんは方肘を付いた手に頭を押し付けながらぶつぶつと亭主に先立たれた未亡人と何度も意味を確認するように繰り返し呟き、俺は俺で何かを認めてしまったようで気持ちが酷く落ち込んでいた。
ちらりと正面に視線を送れば、俺よりも落ち込んでいるおっさんを見上げ
「単なる物の例えだって、そんなに落ち込むなよ」
「いや、知り合ってまだ深くは無い青年にそう見られていたって言うのがね。
そうなると付き合いの長い騎士団の奴らにはどう見られているかと思うと頭が痛くなってきた」
額を押し付ける手から苦笑紛れの視線が俺を見上げる。
死してなお道具として生かされた男の、彼の人を思う長い前髪の合い間の瞳は何所までも穏やかで、何があってこの男にそう想わせるのか追いつかない想像に胃の下辺りがぐるぐると渦巻く。
だけど、それさえどんな意味かなんて判らなくて、フォークに刺したままの最後の一欠けを口へと放り込む。
「ま、未亡人はともかく、そう見られるのはおっさんに隙があるだけなんだろ」
附け込まれないように注意しろと言えば、女性なら大歓迎なのだがと軽口で返す男をただ呆れて眺めた。
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