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一度はやってみたい女体ネタ。
でも読むのは好きでも書くのはあまり得意では無い事が判明。
過去にも何度もやって続ける事が出来なかったのにこりずに書いてますよ椎名さんは。
そんなわけで続きはありません。
でも読むのは好きでも書くのはあまり得意では無い事が判明。
過去にも何度もやって続ける事が出来なかったのにこりずに書いてますよ椎名さんは。
そんなわけで続きはありません。
レディグレイ
パチンと薪の爆ぜる音を聞いてリタは本から視線を上げた。
周囲を見回せば焚き火を囲むように思い思いの場所で横になって静かな寝息を零す一行を見て口の端を上げる。
すぐ傍らで眠るエステルの寝顔をそっと見て彼女が目を覚まさない事を確認してから立ち上がり、足音を殺して一人の男の横に膝を折る。
眠りの浅い男ではあったが、あの心臓魔道器がばれた一件以来、時折こうして無防備な寝顔を見せるようになった。そしてその傍らに腰を下ろしてその胸元へと手をさし伸ばし・・・
コンソールパネルを展開した。
口に出して見せてくれとは言えないけど、初めて見る心臓魔道器の仕組みが気になってしょうがなかった。
もし、機会があって見るチャンスがあったとしてもこの男は決して見せてはくれないのは判りきっている。
なので食事当番の日、遅効性のあまり効果の強くない睡眠薬を料理に混ぜ、もう少し本を読みたいと言って夜の焚き火の晩を買って出てはこうやってこっそりと心臓魔道器を見せてもらっていた。
焦りは禁物だと時間をかけて調べていくも、ヘルメス式魔道器の特徴から大体の流れはわかっていた。
エアルの代わりに生命力をエネルギーに変換している仕組みも、おっさんの生命活動の最低ラインを維持する為。
きっとこれ以上、例えば私達みたいな感覚で居るとあっという間に平均的な生命力を使い果たしてしまうからだろうと予測する。
一度死んだ人間をもう一度生かしてるのだ。生活に差し障りのない程度で変換していれば、きっと平均的な年齢まで生きる事が出来るのだろうと算出する。その傍らで、この男の心臓が自前の物で何も不都合がなければ一体どれだけの実力を秘めているのかを考えてやめた。今更ありえない事を考えても意味がない。それにこんなおっさんがかなりの有能な人物と認めざるを得なくなるかもと思うと腹立たしい。
更に言うとそんな人材を見つけて自分の思いのままに操っていたアレクセイにも腹が立つものの、何でおっさんの為に腹を立たせなくてはいけないのかと考えたらまた腹が立った。
堂々巡りねと思考を切り替えて、前回まで解析した所まで辿り着く。
今まで見た単純な作りの魔道器とは違い叡智を詰め込んだこの複雑な魔道器に触れるだけで好奇心は止まらない。
そして今から未知の世界へと飛び込む。
前回は厳重にロックされたブロックに梃子摺ってる間に朝になってしまったが、おかげで解除方法は予測がついた。
短いカウントの中である一文を入力する。
ある一文は有名な文学書の一文で、帝都ではよく演劇にも使われるロマンティックな文章だった。
出典も著者もわかっているのだが、如何せん。リタにはその手の本は興味がまったく持てなかった。
なので、何気にこう言うときのエステル様に訊ねれば、彼女は今では砕けた一文に変わり果ててしまった例の一文を原本からの言葉で朗々と歌うように、そして舞台に立つかのように披露してくれた。
本の趣味としてはまったくかみ合わなかった私との共通の話題にその日は如何にその本が素晴らしい愛に満ち溢れた内容かという事を延々と語り継いでくれて、やっぱり私には合わないわと再確認したまでは良かったが、その聞くだけで鳥肌の立つ愛を囁く言葉をあのでかくてごついおっさんがどんな顔でこのパスワードを決めたのか考えただけで背筋に寒気が襲ってきた。
なるべくその事を考えないように時間的に無理だろうパスワードを8回目の挑戦、2回の強制シャットダウンののちに成功すれば未知なる世界がそこに広がっていた。
見た事のない術式、想像もつかない展開に目を輝かせていれば何かを選択するだけのボタンが3つ並んでいた。
青、紫、ピンク。
何故にこんなかわいらしいピンクと悩むも、そのボタンについては詳しい事な何処を見ても書いてなかった。
基本この心臓魔道器は他人にみせるつもりがなかったのだろう。ここに辿り着く前にも色々と省略して何もかかれてない物が幾つかあったが、別にこれといった問題は何もなかった。
繊細な作りになってはいるが、私の手にかかりちゃんと解析すればどんな学術書よりもわかりやすく親切で丁寧な、説明書さえ入らない作りになっていた。
とは言え、どうやらこの先に進むにはこの三つのボタンを選ばなくてはいけなく・・・おっさんの心臓魔道器なのにピンク色と言う違和感と言うか好奇心に勝てずにそのボタンを押した。
一瞬変化はなく拍子抜けした物の、その後、魔核から溢れんばかりの光があふれ出し、同時にモニターがいくつも展開したかと思えば物凄い勢いで次々と情報が画面が流れて行った。
人の目に触れる必要がないと対の目では終えないスピードに慌てて止めようとするも、緊急停止装置は無いといわんばかりに画面は流れ、コンソールパネルさえ呼び出す事が出来なかった。
そんな事をしているうちに背後からリタ?と名前を呼ばれた。
恐る恐ると振り向けば寝ぼけ眼のエステルが立っていて、その声で起されたと言うようにジュディスやパティ、ワンコ、ユーリ、フレンまで起き出した。
唯一大の字で眠っているカロルは無視をして、おっさんにおきているこの光景に面子がこの状況はどういうことかと説明を求められる視線に乾いた笑い声を零した。
とりあえず今だ展開を続けているおっさんの魔道器を止める術が無い為にみんなに囲まれて、夜な夜なおっさんに睡眠薬を持って心臓魔道器を見せてもらっていた事を白状した。
あふれ出した魔核の光はいつの間にかおっさんを包み込んでいるのを見てユーリは痛いくらいに私の両肩を掴み
「それでおっさんは大丈夫なのかよ」
ゆさゆさと振り出す腕をフレンが慌てて止めてくれた物の
「大丈夫よ」
と、唯一小さく一つだけ忙しなく画面を流さないモニターを指差した。
「心拍とか、脈拍とか、体温とか、ずっと変調は無いみたいだから、おっさんは大丈夫よ」
と言ってたぶんと付け加えた。
体調は問題なくてもこの先の展開に何が待ているかなんて想像が付かない。
みんな口には出さない物の、無言で責めているのが痛いくらいに判った。
「ごめんなさい」
みんなに言ってもしかたがないのだろうが言わずには居られない謝罪だった。
「まさか、こんな事になるなんて想像もつかなかったの」
小さな、本当に小さなジュディスの溜息が聞えた。
それは謝って許されるの?と言うものだったが、
「今更騒いでも仕方がないのじゃ」
ラピードと並んで光に包まれているおっさんを見ていたパティの呟きにこの光が治まるのを待つ事にした。
それから小一時間ほどして漸く光が衰えてきた。
強烈な光で姿さえ見えなくなていたおっさんがやがてゆっくりとその姿が露になっていくのを誰ともなくほっとしながら見守っていれば、その姿に誰も口には出さずに違和感を感じていた。
いつも縛っていた髪が解けていたのは良しとしよう。
無精ひげが無いのは・・・おっさん剃ったのか?と言うユーリの呟きになんともいえないように誰もが納得したが、それ以降は見なかった事にしたい。
体型が一回り小さくなったとか、胸にありえない二つの山が出現したとか、このまま立ったらズボンが落ちるのでは無いかと言うような細い腰とか、後、色々。
その変化に誰もがついていけずに目の前の現実に唖然としていれば、あれだけ展開していたモニターがいつの間にか一つのみになり、差し出されたかのようなコンソールパネルはOKとのボタンが一つのみ。
他に選択は無いと言うように仕方がなく押せばパチンと言う音がするようにみんなに見つめられる中おっさんは目を開けていきなり自身の胸を鷲掴んだかと思えば、羽織からやっと出た細い指の先っぽを覗かせた手で私の肩を掴み、何処か柔らかくなったような知っている物よりも大きな瞳で私を睨む。
「おっさんの心臓魔道器弄ったでしょ?!」
あまりの剣幕に反射的に「ごめんなさい!」と謝るも謝罪なんてないと関係ないと言うように言葉をかぶせる。
「ピンクのボタン押したわね!」
わふっ?とワンコが意味判らないと言うように吠えるも黙殺された。
暫らくの後私は小さく頷く事でそれを認めれば、おっさんは滂沱ともいえる涙を流しながらうわぁぁぁ・・・と、その場に伏せ込んだ。
その際エステルが慌ててハンカチを広げ、腰から半分以上ずり落ちて丸見えになった場所を隠してそっぽを向いた人物と、顔を赤らめながらも瞳を閉じた人物に睨み付けていた。
とりあえず何か事情を知っているおっさんに話しを聞くべく、とりあえず蹲って涙する姿が治まるのを待つように朝を迎えた。
「おはよー」
何処か眠たげな瞳を擦りながら焚き火横ですでに集ってる俺達の所にカロル大先生が登場した。
今だ眠たいのかふらふらとした足取りでエステルから貰った紅茶を一口啜ればふとレイヴンの顔を見て顔を顰める。
「レイヴンどうしたの?目が真っ赤だよ?」
さすがカロル大先生と言った所だろうか。
これだけの変化に気がつかないと言うようにもう一度紅茶を啜り
「そう言えばひげ剃ったレイヴンなんて初めて見たかも」
何処かくすぐったそうに笑うもジュディスに差し出された朝食を受け取ってぱくつけばそこでレイヴンに関する興味は失せたらしい。早速今日はどうしようかと予定を立て始めたカロルに殴るのはリタの仕事だ。誰とも無く目を瞑ればタイミングよくゴンと言う音が聞えた一拍ののちにお約束のように酷いよリタ!と叫び声が聞えてふーっと溜息を零した。
「カロル事件だ」
大騒ぎになる前に俺はカロルをレイヴンへと向かって軽く突き飛ばせば躓きながらその胸へと飛び込んで行った。
バフッと羽織が風を受け取るように軽く翻ったかと思えばカロルは振り向き
「ユーリもひどいよ!いきなり突き飛ばすなんて、レイヴンの胸が柔らかくなかったら怪我する所だったじゃないか・・・って、あれ?」
言って自分の言葉に矛盾を感じたのか小首傾げて、今だその胸に手を置く辺りを視線を合わせずに軽く叩きながら確認する。
さーっと血の気が引いていく顔を眺めながらニタニタとこれが笑わずに居られるかと口の端を吊り上げれば
「ギャーッ!レイヴンにぃぃぃ・・・」
思わずダッシュして逃げようとするカロルを捕まえおっさんはカロルを正面からその胸へと顔を埋ませる。
ギャーッ・・・と言うなんともいえない悲鳴を聞きながら紅茶を啜れば隣のフレンがポツリと一言。
「羨ましい」
盛大に頷きたい所だがエステルがキッとフレンを睨みつけ、フレンはさっと反対方向を向くが
「えー?フレン君も羨ましいの」
おっさんの胸の中でなきながら暴れるカロルを解放したかと思えば今にもフレンを襲わんとする態勢にフレンは顔を赤くしながらしどろもどろに怪しげな言葉で弁明してる合い間に捕まってしまうが、その前にジュディスの咳払いに二人とも大人しく座った。
「じゃあおじさま、カロルも起きたことだし説明してくれるかしら?」
「ちょっと長い話しになるかもしれないから適当に座って聞いてちょうだい」
何時もより少し高めのアルトの声で促し、力なく胡坐をかいて項垂れるように話し始める。
が、小さく細くなった体におっさんのシャツはでかいのか思わず懐が見えて、相手はおっさんなのにラッキーと思ってしまえばエステルから本日両手では数えきれない警告が発せられた。
おっさんは今だショックから抜け出せないと言うように熱い紅茶の入ったカップを両手で掴み
「アレクセイに魔道器を処置してもらってまだ間もない頃の話しなのよ」
アレクセイと言う名前に思わず眉間を寄せてしまうも、熱い紅茶をずずっと一口啜って
「魔道器を処置してもらった頃は体が拒絶するのか拒否反応を何度か起しておっさんよく倒れていたの。
体の中に異物を埋めるんだから拒絶反応が出ても仕方がないってアレクセイは言ったんだけど、それにしてもよくバタバタ倒れてたから一度本格的に微調整しようって言う事になったの。
この魔道器は既に仕組みあがっていた物を丸々使って、アレクセイが調節だけしたものだけど、これを作ったヘルメスって言う人はクリティア族らしくって、クリティア族標準で設定してあるかもって言い出して分厚い説明書を見ながら毎晩男二人密室で向い合っていたわけよ」
考えるとあの男と密室だなんて空恐ろしい話しだなと思わず涙ぐむおっさんに同情してしまう。
「で、10日ほど作業を進めた所でリタっちも知ってる3つのボタンの所にきたのよ」
よくは知らないが、リタは何かを思い出したかのようにあー、あれねという。
「3つのボタンのうちにね、ピンク色のボタンがあってこれは一体なんだろうって言う事になったの。
他にこんな色のパラメータとかもなかったし、押してみないと判らないなって事になって、後はみんなの知っての通り、次に気が付いた時はおっさんそりゃまた可愛らしい女の子になってたのよ」
自分で言うかと思うも、35になっても型崩れしないその姿だ。今は何処か消えかけている若さがプラスされた姿はどんなものかと想像するも、思考は軽く拒絶していた。
「そこでアレクセイも慌てて分厚い説明書を端から端まで何度も読むけど、こんなボタンの事なんて全然書いてなくてね、ついに大将ってばキレて説明書を真っ二つに破り捨てた所で、一枚の封筒が説明書の表紙の厚い厚紙と貼り付けた綺麗な紙の合い間に隠してあったの」
そして一同をちらりと見た後盛大な溜息を吐いて
「何でも、そのヘルメスさん?大将の友人らしくてね、とってもお茶目な人で、その手紙によると・・・
『前々から気になっていたのだが、お前は仕事に没頭するあまり自身の幸せと言うものを考えなさ過ぎる。
結婚はいいぞ、愛すべき妻に可愛い娘。
お前も一度ぐらいは家庭を持つべきだと俺は思う。
そこで私が提案するのはこの魔道器にはちょっとしたオプションをつけておいた。
アレクセイがこの魔道器を使うぐらいの相手だ。女性よりも仕事を取るお前にはピッタリの相手だと思う。だがきっとこれを使う相手は男だ。
それではお前は何も変わる事がない。
これから書いたプロセスを辿り着くと3つのボタンがあるはずだ。
そのうちのピンク色のボタンを押してくれ。
私からのささやかなプレゼントだ』
・・・そう、このオプション・・・プレゼントなの」
言ってまたぶわっと溢れ出した涙に慰めるようにラピードがその顔を舐めれば、優しさに思わず首にしがみ付いていた。
「つまりなんだ?仕事人間に少しは私生活を見直せって言うことか?」
聞けば
「単に楽しんでるだけでしょ」
とそっけなく返されてしまった。
「で、でもおじさま、今の姿・・・とっても素敵よ?」
珍しくしどろもどろと言うように慰めるジュディに何か違和感を覚えるも
「それよりもまず服装をどうにかしなさいよ!さっきから丸見えで目のやり場に困るじゃないの!」
女性同士でも恥かしいのか顔を赤くしているリタに思わずちっと舌打ちするも
「じゃあ、リタたち服を貸してあげればいいじゃないか」
言うも
「少年も乙女心わかってないわねぇ、いくら今おっさんがおばさんでも自分の服を貸すのに抵抗あるでしょ?」
あるでしょといわれても、フレンと服を貸したり借りたりが日常だった為に抵抗は今ひとつない。
「それもだけど、サイズが合わないわ」
ジュディスの言葉に思わず長身の彼女を見上げて一同納得。
その中で
「なら、折角なので私のドレスを着て見てください!」
どこか喜び勇んでテントへともぐりこんだかと思えば、あのふわふわの白いドレスを持ってきて着てくれと彼女は言う。
「わ、悪いけどさすがにこれ着るの抵抗あるわ・・・」
遠慮するレイヴンに今回の功労者、もとい、責任を負うリタが仕方なく自分の荷物からユウマンジュで貰ったシャツを取り出す。
「私の責任だもの。着てもいいわよ」
と差し出すも、レイヴンは申し訳なさそうにごめんと言う。
「多分・・・それも着れないから」
何故と首を傾げるも、いきなり立ち上がりとことことおっさんの背後に回ったパティはいきなりおっさんの背中から腕を回し
「うひょー!おっさんジュディ姉並みに大きいのじゃ」
両手でがしりと、持ち上げた大きさに俺やフレンでなくてもエステルまで釘付けだ。
「ギャーッ!パティちゃん、やーめーてー!!」
叫ぶおっさんにパティはなお続ける。
「む、35と言うのにまだまだ張りはあるの。この大きさだとうちの手じゃさすがに掴み切れないのじゃ」
むにむにと指を動かすその肉の動きに思わず空気を飲み込んでしまうこの状況を如何にかしてくれと願えば、エステルの小さな手が視線を隠す。
「パティ!」
今度はパティにペナルティイコールが飛べば仕方なくと言うようにおっさんから離れ、酷く疲れたと言うように地面に転がっていたおっさんの・・・普段なら踏んで通り過ぎれるその姿なのにそのまま助けて何処か連れ込みたくなるような錯覚に少しだけ犯罪者の気持ちを判ってしまって軽く落ち込んだ。
「そんなわけだから、おっさんの事守って」
のろのろと起き上がったおっさんはその場に座り込み俺達に土下座をする。
いきなりの土下座に俺達はうろたえる。
「守ってって、今迄だって助け合ったりしてたじゃないの」
リタの尤もの言葉におっさんはぷるぷると頭を振る。
「このオプション恐ろしい事に、自動解除されるまでおっさんこの姿のままなの」
あちゃーとカロルが目を覆って暗く不気味な星喰みが覆う空を見上げた。
「その間に、おっさん・・・」
と言っていいにくそうに俯き小さな声で、やっと届くかと言う声で言う。
「妊娠すると子供まで産めちゃうらしいから、それだけはムリだからお願い守ってぇぇぇっ!!!」
何時ものように反射的にしがみ付かれてお願いされてしまう。
一同その言葉の意味が飲み込めず茫然としていれば
「ヘルメスの野郎、明るい家族計画とか言って大将に家庭を持たせる事を目的にしてるらしいからって、こんな事まで、こんな事まで・・・」
言いながら溢れる涙を擦り付けられる。
「わ、わかったって。それよりも前におっさん一度女になってたんだろ?その時はどうしてたんだよ」
聞けば鼻を啜りながらその時の事を話してくれた。
「あの時は大将が気を利かせてくれてシュヴァーンは長期の単独任務に出ているって事にしてくれて、おっさんは戦争で壊滅した町出身の貴族の娘って言う事でアレクセイを頼って身を寄せていたって設定になっていたわ」
「貴族の娘・・・」
いくらなんでも無理あるだろと言う言葉は飲み込み
「よくばれなかったな」
少しだけ感心して言えば
「上等のドレスを着て俯いていればバレやしないわよ」
「深窓の令嬢って所ね」
間違ってもなれなさそうなジュディスの意見に頷けば、そう言えばと正真正銘の深窓の令嬢がいた事を思い出した。
実物は少々規格外ではあったものの、その彼女はうれしそうに何かを思い出して手を一つパンと叩いた。
「思い出しました!」
キラキラと輝く瞳に何をとリタが訊ねれば
「戦争の終わった頃アレクセイはよく一人の女性を連れて歩いてました」
ウットリと昔を思い出すように胸の前で手を組み瞳を閉じて過去を語り始める。
「舞踏会や夜会、演劇場にもつれて居た女性の事は当時の城でもすごく話題になってました。
私も何度かすれ違った事があります。とても品のある方で、当然あったやっかみにも笑顔を絶やさなくって、いつもアレクセイにエスコートされて、城中の憧れの的でした」
懐かしく美しい思い出といわんばかりに呟きながら
「あの頃はアレクセイがいつ結婚を申し込むのかと言う事が毎日話題になってましてね、私も子供心に憧れました」
思わぬ暴露話にあんた何やってたんだよと突っ込まずにはいられなかったが
「ですがある日を境にその姿をまったくお目に掛ける事はなくなってしまったのです。
何でも、戦争で生き別れた家族と再会したとかで、家族の元へと行ってしまったからと言う話しをメイドたちから聞きてました」
ザーフィアスの騎士団長の悲恋は当時かなりの話題にもなった。
その女性もアレクセイを取るか生き別れの家族を取るか随分悩んだらしく、最後はやはり親を見捨てる事は出来ないと去って行った彼女をみんなは親しみを込めその髪の色からレディ・グレイと呼んだ。
そしてアレクセイは去って行った彼女を今でも思い続け一人身を貫き通していると言う、思わぬ感動してしまう話しにほっこりしたものを覚えてしまうが、よくよく冷静になればなんて事もない。
寧ろおっさんを哀れとも思ってしまうような真実に誰とのなく気まずそうに視線を反らせた。
とりあえず、と言うようにジュディスは言う。
「一度近くの街に行きましょう。おじさまの服を幾つか見繕わないといけないし、リタにもう一度見てもらっては?」
といわれるもレイヴンは頭を横に振るだけ。
「アレクセイにも随分見てもらったけどどうやら解除方法は無いのよ」
「つまり、元に戻るのを待てと言うことですか?」
フレンの疑問にコクンと小さく頷くだけのおっさんに誰もが溜息を零した。
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