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間違いがあってもいいと思ったそんなユーリとレイヴン。
寧ろ起せと言いたい。
でも何も起きないのがうちのユーリとレイヴン。
今更ながらフレンの男前さ(?)に気付きました。




レイン・レイン05



水の都と謳われるセヴェネーゼの朝は何処かひんやりとしている。
町中を水路が走り、その傍らに人の生活があるのだから当然といえば当然だ。
気候は年間を通して暖かく、風呂と言う概念がない変わりにどの家でも水を直接家の中に引き込み家事や選択、水浴びまで済ます事が出来る。
そして今ここにいる宿屋も例外ではなく、客室ひとつひとつに水路から取り入れた水場があった。
窓の外には静かな水路があり、庭には細い水路を通しての小さな池があり、そして家の中にまで削りだした石で作った水場と、木の香り高い床の部屋がある事を寝起きのぼんやりとした頭で思い出し、酒気を抜く為にもその水場へと向おうとすれば、隣のベットに黒く艶やかな髪を真っ白のベットに散らした青年が体を横向きにして二つに折りたたんだよなカッコウで眠っていた。
そう言えば酒に付き合わさせたのに先に眠りこけてしまったのだっけと思いついて気まずさもあわせてぼりぼりと頭をかく。
が、かといって青年を起こすのも申し訳なく静かな足運びで水場へと向った。
何度か利用した事のあるこの宿の水場は階段状になっていて腰まで浸かれる深さがある。
適当に服を脱ぎ裸になれば冷たいと言うよりどこか暖かな水の中に足を進めていく。
流れる水の水温は本来冷たいと感じてしまう物だが、それでも風呂と言う文化にあまり馴染みのないこの世界では桶に水をはりその中で体の汚れを落とすのが普通だった為にこの程度の水温はさして気にならない。
強いて言えばユウマンジュのあの心地良さを覚えてしまってからは、人肌よりやや熱めの湯が恋しいと今では思うようになった。
少しずつ水温に慣れていけば何処からか迷い込んだ魚が足元を通り過ぎる。
おや?と水面を覗き込めば既にここにえさは無いと去っていく優美な赤い尾びれが愛想もなく去って行ったところだった。
そんな珍客を送り出した後、水を掬い顔を洗う。
冷たい水を顔に浴びた所でそのまま頭も洗い、汗を拭うように体も手早く洗う。
体が冷え切る前に水場から上がり、用意されていたタオルに手を伸ばせば、不思議な事にタオルから俺の方へとやってきた。
思わず視線をタオルから外して正面を見ればいつのまに来ていたのだろう青年がそこにいた。
「おっさんおはよう」
「おはよう」
顔をぬぐって滴る髪の水滴を軽く吸い取らせる。
タオルはそのまま肩に、今更でも心臓魔道器を隠すようにかけて脱ぎ散らかした服を拾い集めた。
「青年も水浴びする?頭しゃっきりするわよ」
「ああ、気持ち良さそうだな」
言えば帯をほどき躊躇いもなく衣服を脱いでいく。
ユウマンジュの常連ともなればお互いの裸なんて見慣れたものだが
「青年一回り筋肉付いた?」
「んあ?そういや最近力仕事ばっかりだからな」
ザーフィアスの下町だけが世界だった頃に比べて食生活もよくなり、行動範囲も格段に広がった青年ならば逞しくなるのは当然だ。
漆黒の髪と相対するかのような抜けるような白い肌は何処までも健康的で、腹部の醜い傷跡さえなければ、いや、それすら美しいと思える肉体が正直羨ましいとまで思う。
服を着込みながら今だ左胸で微かな点滅を繰り返す心臓魔道器はかつて程嫌悪感は無いものの、今でも無意識に見ないようにしている自分に気づいていてユーリに見られないように自虐的な笑みを浮かべる。
だけどそれも一瞬。
「おっさん」
呼ばれて振り向いた時にはそんな顔を消してなあに?と振り向けば足元を覗いているユーリが子供みたいにくったくない顔で笑っていた。
「魚が紛れ込んできた」
木の床の上から水面を覗き込めば幾匹もの魚がユーリの足を突ついていた。
くすぐったそうに笑う彼は
「捕まえてもいいのかな?」
既に捕まえるつもりなのか魚に狙いを定めている。
「まあ、捕まえてもいいと思うけど」
言って少し考えるようにユーリの足元の魚を見れば彼の何処か不安そうな顔。
「なんだよ」
黙っていれば誰もが誉めちぎるその美貌を無残にもゆがめるのを勿体無いと思いながら
「肉食の魚もいるから青年が食べられないように注意しなさい」
言えば「げっ?!」と呻いた悲鳴と共に慌てて水場から出てきた行動についに爆笑。
「なわけないでしょ?!昨日子供達が飛び込んで遊んでいるのをおっさんと見たじゃないの」
ケタケタと笑えば、まんまと騙されたと気づいた青年は顔を赤らめながらも子供のように仕返しはせず、代わりに
「ここの宿代おっさん持ちな」
現実的な嫌がらせに思わず俺の方が「げっ?!」と呻いた物の、誘った時からそのつもりだったのだ。
「はいはい。それで青年のご機嫌が治るなら安い物よ」
言えば満面の笑みを浮べ
「ここのメニューに瞬の果物を使ったタルトがあるんだけどよ」
それ以上言わなくても判るくらいに爛々と輝く瞳に降参。
「全部制覇するつもり?ちゃんと朝ごはん食べてからね」
言えば嬉しそうに笑みを浮べ、じゃあ早く飯にしようともう一度水場に戻り、さっさと顔を洗い汗を落としていく姿に苦笑しながらもさっさと水場を後にした。
呼び鈴を鳴らし、朝食の準備を頼めばすぐに朝食が用意され、それからユーリが所望する甘味のパレードに見せの従業員は苦笑を通り過ぎ呆れ果てて朝食の隣に用意してくれた。
これは嫌がらせか?と焼き魚に甘い砂糖の匂いを覚えながらも程よい塩気のある魚をバリバリと食べていれば
「そういやおっさんはこの後ダングレストか?」
突然の質問にそうだけどと言えば
「俺もカロルと待ち合わせしてるんだ。他に用事がなけりゃ一緒に行っても構わないか?」
随分改まった言い方に思わず目をパチクリとしながら聞いていれば
「あんた、騎士団の仕事とかギルドの仕事とかあるだろ?」
関係ないユーリがいても問題ないかと聞いているのだと気づいて思わず失笑。
「んだよ」
少しだけ拗ねた視線に
「笑って悪かったわね。だって青年がそんな事気にするなんて思わなかったもの」
くつくつと喉を鳴らしながら笑えば味噌汁を啜った後に桃のタルトを食べると言う脅威の視覚的な攻撃からさっと視線をそらせた。
ある意味フレンの親友だわと思いながらも、ふと思い出した名前と、なんでもないような幸せを覚えている今にほんの一瞬呼吸が止まる。
今何を考えていた?と自分に問う。
続いてレモンクリームタルトを頬張る青年は何も気付かずに目の前の幸せに浸っている。
強い意志を持ち、己と言う芯が真っ直ぐ在り、仮令結果罵られる事があっても最善を選べる眩しいくらいの存在に、意思もなく、己もなく、ただ指示されるがままの自分から見れば彼は憧れ以外の何者でもなかった。
そんな彼の苦しむ所も悔やむ所も総て真近な所で見てきたのだ。
ただ美しいだけの存在では無いと知っているだけに魅了され、いつしか特別な存在へと変化して行った。
だけど、周囲には彼を慕うそれこそ花の様な少女や、彼と堂々と渡り歩ける美貌の女性、そして無二の親友、と言った者達に囲まれているのを見れば完全に部外者だと感じずにはいられなかった。
ただ唯一の繋がりが、星喰みの一件なのだ。その事件も終わればただの顔見知り程度の関係になり、今では偶然の遭遇でしか会う機会がなくなってしまった。
いや、約束すれば会う事はいくらでもできるのだろうが・・・
それは何故か躊躇われた。
理由は判らない。
ただ、約束を取り付けてまで会う理由が見つからなかった。
それに尽きるのだが、彼なら顔をみたいからと言う理由でも十分だろう。
だけどその一言がどうしてもいえなくて、気がついたら声もかけづらくなっていて、次第に細々とした縁になりかけていた関係を悲しく、寂しく思っていた。
世界中を飛び回っている彼でも家はザーフィアスにあると自分に言ってはザーフィアスに駆け足で駆けつけ、彼らのボスの所在地がダングレストだと考えては偶然の再会に期待を馳せて駆けつけて、何やってるんだと自嘲していた所にあのフレンの一件があった。
日当りの良くない庭だが歴史ある建物と言うようにどこか薄ら暗い壁に囲まれ、野生化しかけた植物に囲まれた裏庭は人の目から隠されたと言っても良い場所でもあり、酷く安心が出来た。
その中で優しく髪を撫でられ、心地良い体温が頬をすべり、触れるような優しげなキスを交わすうちに心がぐらりと傾いた。
中々会えないかの人を探すよりも、傍らで優しく手をさし伸ばしてくれる存在に傾くなと言うのは難しい話しである。
強い意志があり、己を確かに持っていさえいればぐらりと揺れる事もないのだろう。
10年間殺してきた心と感情に、そういったものはまだ朧気で、優しく、それこそ愛しむように重ねられた唇の数についに折れたのはそう遠い話では無い。
彼は俺だけの彼では無い。
判りきっている言葉で密かに大切に温めてきた想いに蓋をして、目の前に差し出された手を取る決意をしたのだった。
なのに、罪には罰を。
優しい誘惑に負けた俺に神は残酷な仕打ちをする。
その決意を決めた瞬間を彼は見ていたのだ。
真っ白になった頭の中で去っていく後ろ姿をただ見送り、何処か悲しげな後ろ姿を払拭するように若い恋人の想いを受け入れてきた。
フレンの無条件の優しさに年下なのも構わず甘えてしまう。
その傍らでユーリのあの何処か悲しげな佇まいが忘れられないでいる。
怒っているとか嫌われているわけでは無いと言うのは昨日の内に理解したつもりだが、あの悲しげな理由は聞けないでいた。
再会から一夜明けて聞こうにも今更で何所か聞きづらく、なのに彼とのこの一時をとても楽しんでいる自分に何か見つけれそうになったが、結局判らないままだった。
にこやかな顔を絶やさず甘ったるい匂いに囲まれた朝食を食べ終えればダングレストへと向い、かつて一緒に旅をしただけに何の気負いもなく移動を続ければあっという間についてしまった。
町の入り口の橋を渡った所でユーリはくるりと振り向き
「じゃあ俺はカロルの所に行くから」
「少年にもよろしくいっといてね」
「ああ、おっさんもあまり無茶すんなよ」
「青年もね」
当たり障りない別れの言葉に手をヒラヒラとふってユニオン本部へと向おうとすればその手がつかまれる。
思わず跳ね上がった心臓がばれないようにゆっくりと振り向けば、意識しての行動では無いと言うようなどこか驚いたような顔のユーリ。
一体何なんだと繋がった手の熱に意識が集中してしまえば、何処か困り果てたような顔のユーリが
「今夜さ、一緒に食事でもどうだ?」
思わぬお誘いに目をパチクリとし
「カロルにも最近あってねえだろ?」
と出された名前の少年を思い浮かべている合い間に
「あいつちょっと見ない間に随分背伸びたんだぜ」
言う言葉に何が言いたいのか判り、ああと頷く。
「そういやおっさんも少年に最近会ってなかったわ」
同じダングレストに住んでいながらお互いこの町にはほとんどいない状態だった。
一瞬危うげな想像をしてしまったが、ユーリらしい提案にただしと断りをつけておく。
こう見えても街の外でも一人で放り出しても安心な数少ない人材なのだ。ユニオン本部戻ったらすぐ何処かに派遣されるかもしれないと言えば、それじゃあ仕方がねえなと納得するも、飯時になったらユニオンに顔を出すからとその時に決めようと当てにならない約束を結んでユーリはカロルの街外れにある小さな家に、俺はユニオン本部へと向かった。

入り口の見張りと久しぶりの再会に挨拶をし、松明の燃える廊下の奥の一際大きな扉の前に立ち
「ハリー、入るわよ」
ノックもせずいつものとおりのレイヴンの何処か暢気な声で挨拶をすれば
「お、良い所にきた」
すっかり書類の山に埋め尽くされた執務机を離れて適当な場所で座り込んでいる姿の前のもう一つに目は注目してしまう。
「あら~?カロル君じゃないの。大きくなったわねぇ」
「レイヴンも久しぶり!」
立ち上がり駆け寄って旅をして居た時みたいに飛びついてきた少年のまっすぐな純粋に輝く瞳に思わず笑い返すも
「そういやさっき橋の所でユーリと別れてきたばっかりなのよ」
すれ違った二人に誰かを使いに出してユニオン本部に呼び寄せようかと考える前に
「ユーリに?ユーリダングレストに来てるんだ」
まったく知らなかったと言うかみ合わない言葉に思わず二人して小首を傾げてしまえば少し奥からのハリーの咳払い。
「それよりも魔物退治の以来はどうなった?」
ハリーのギルドの首領とした顔に
「どうもこうももないわよ。依頼主がいくつも依頼をしたみたいで青年とブッキングしちゃってさぁ。
 あ、依頼料は俺様の独断で半分コにさせてもらったわよ」
そんな事情を話せば少し顔をゆがめる物の仕方ないと言うように溜息を吐き出しながら一枚の封筒を持ち出した。
「帰って来たばかりで悪いんだがノードポリカの戦士の殿堂の所まで手紙を運んで欲しい」
真っ白な封筒だが上等な紙にユニオンの刻印の入った蝋封が押し付けられたユニオンから差し出す手紙としてふさわしい物だった。
「ひょっとして急ぎ?」
「出来る限り早い方が良いんだが・・・」
何処か疲れた顔はきっとややこしい何かが隠れているように見えたが、言わない所を見ると俺様がいなくても大丈夫と言うところだろう。
信頼する所は信頼すると決めてひったくるようにその手紙を奪う。
「んじゃ、行って来るわ」
デズエールのノードポリカも今じゃ随分と行きなれたものねと苦笑を隠さずそして思い出す。
「そうそう、青年と今夜ご飯一緒に食べましょって約束してたんだけどどうやら無理っぽいからおっさんの代わりに謝っといて少年」
ひらひらとお別れの挨拶の代わりに封筒を持つ手を振ればえ?!と驚くカロルの声を聴きながら笑みを浮かべる。
何処か安心したようなほっとしたような。
青年と一緒にいるのは正直楽しい。
だけど何かが狂ってしまいそうで、間違いを起こしそうで、裏切ってしまいそうなそんな不安を感じていた。
まるで逃げ出すように本部を出て黄昏時のダングレストの人込みを泳ぐように喧騒の中をくぐっていく。
つい先ほど渡ったばかりの橋に辿り着き街を振り返ってもそこに知った顔は何所にもない。
当り前だと橋を越えて船に乗るべくトリム港へと続く道に足を運んでいった。

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