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今回はお友達が参加です。
親友設定はやっぱりすてきですよね。






夜遅くアパートの階段を歩く音がした。
角部屋の為廊下を歩く距離にユーリのバイトがやっと終わって帰って来たのかと時計を見た。
時計はもうすぐ日付を回ろうとする時間に溜息をこぼす。
ここの所バイトから帰ってくるサイクルが少し遅く、遊び歩いているのかと心配からか問質したらあっさりと白状した。
「おっさんの所に顔見に行って来ただけだって」
何処か嬉しげに言う非常識と取れる夜の訪問に僕は彼の名前を強く呼んだ。
「ユーリ、いくらなんでもバイト終わってからお邪魔するのは迷惑だよ」
キツク言っても知らん顔でそっぽ向いてるユーリは台所に置いてある炭酸ジュースに手を伸ばす。
「まあな。でもおかげでいいもの見れた」
「いいもの?」
珍しくご機嫌にニヤリと笑う。
「おっさんのおにーさんと知り合いになれた」
何所となくしていた嫌な予感にがっくりと項垂れた。
ついこのあいだ、とある僕の親友が放課の時間になるたびに生徒は立ち入り禁止のはずの理科室の準備室に現れて迷惑していると苦情を受けたばかり。
それを30分ほど掛けてとくとくと説得したつもりだったのに準備室から直接家まで訪れるなんて・・・またレイヴン先生に泣きつかれてお願いされる破目になるのかと溜息を零す。
今日もこの時間だとこれから風呂にはいって、それからレイヴン先生の話しを始めるのだろうと待っていればいくら待てども家の中に入ってこない。
さすがに何かおかしいと解いていた計算式を途中でやめてコタツから離れる。
ぞうりを履いてユーリがいつ帰ってきてもいいようにと鍵を開けていたドアから首を出せば、玄関すぐ横の壁にもたれながら膝を抱えるように突っ伏していた。
「ユーリ、大丈夫かい?!」
慌てて駆け寄れば顔を上げた彼は涙こそ流してないもののまるで泣いているようだった。
「な、何があったんだい・・・」
引っ張るように家の中に上げてこたつに座らせる。
これほど落ち込んだ姿見たことないというようなユーリの姿に口を開く事をひたすら待てば
「バイトの帰り道に駅でおっさんを見たんだ」
「へえ、それは良かったんじゃないか」
ユーリの許には人が集る。
人望とか頼りがいがあるとか、そんな感じの理由でユーリの周りにはいつも人が溢れていた。
その中でユーリは友達になりたいとか誰かと付き合いたいとか自分から何を求めると言う事はなかった。
それが高校に入ってよほど馬が合うのかレイヴン先生に懐き、かまってもらおうと一生懸命周囲をうろついた彼は最上級生になったある日、こんな夜中にポツリと告白した。
「俺、おっさんが好きなんだ」
と・・・
一瞬何を言ってるか判らなくなりポケッとしてしまったものの、彼らしくない真っ赤な顔で自分の言った事に枕を抱えての悶える姿を見ていれば何とか言葉の意味が理解できた。
俺→ユーリ
おっさんが→レイヴン先生が
好きなんだ→恋愛上の好き
小学生的な文法を頭の中で繰り返せばユーリは俺を正面から見据えて
「卒業まで残り一年。おっさんを落とすからフレンも協力しろ」
「そんな面倒な事に僕を巻き込まないでくれ!」
反射的に言い返してもユーリは目の据わった視線で僕に強制的に協力を押し付けていた。
レイヴン先生の授業で赤点を貰わない程度に協力をし、僕にカミングアウトした彼のレイヴン先生への想いをひたすら聞き流していたが、何をこんな急に落ち込む事があったのか想像付かなくっていつの間にかちゃっかりと肩までこたつの中に潜り込んでいたユーリの肩を揺らす。
「レイヴン先生と何があったんだい?」
駅で何かあった事は決定的だからと聞けばユーリはポツリポツリと呟くように語りだした。

バイト先の居酒屋でリンゴを沢山貰ったという店長のドンからのおすそ分けを理由に、明日は学校も休みだからと終電ギリギリまでおっさんの家で遊んでやろうと企みながらバイト先の居酒屋の目の前にある駅へと向った。
丁度地下鉄が駅に着いたのか混雑した改札口付近に人込みをかき分けながら近付けば、切符売り場近くにおっさんが立っているのを偶然見つけた。
ひょっとしたいつも夜遅く遊びに行くからたまには迎えに来てくれたのかと、自分の中でんな事あるはずもない事を考えながらおっさんに向けて歩き出せば、地下鉄からの人波の中に珍しくも銀髪の男が目に入った。
あまり見慣れない色だけに珍しいなと感心してみていれば、その男は誰かと待ち合わせでもしていたのか軽く手を上げて待ち合わせの人物と再会の挨拶をしていた。
さぞモテるだろうなとその相手がどんな奴か好奇心で眺めていれば、無造作に髪を縛るおっさんがその男へと真っ直ぐ、いや、突撃と言わんばかりの勢いでその胸へと飛び込んで行ったのだ。
おっさんより頭一つは背が高いその銀髪は、事もあろうに俺には触らせてくれないおっさんのぼさぼさ頭を何度か撫で、腰に手を回してそのまままた地下鉄へと行ってしまったのだ。

「んで、なにがなんだかよくわかんなくっておっさんのマンション行ったらおにーさんが居てさ、おにーさんにおっさん出掛けているのかって聞いたら今日は用があって泊まりで出かけているなんて言うんだぜ」
それがどんな意味か判らない年でもない僕とユーリとしては思わず無言になり、ユーリの鼻を啜る音だけを聞いていた。
「でも考えようによってはレイヴン先生は男の人もOKって言うことだろ?今は無理でも諦めなければ・・・」
年齢の事を考えれば相手が男だろうがそんな遊びな関係なわけないよなと考えつつ、それでもユーリを励ます。
「フレンは見てないからんな事いえるんだ。そいつおっさんより年下かな?すげー綺麗な奴っつーかビジュアル系?でさ、女ならぜってーおっさんのストライクって言う見てくれだぜ?」
「どういう関係だろう」
レイヴン先生は三年間お世話になってるのに謎な部分の多い先生だ。
学園ではちょっと居ないタイプで浮いた存在なのに、苦情を言う先生は誰も居ない。
どの教師よりもやる気のない教師なのに生徒には絶大な人気があった。
主にサボれるからと言う理由だが、一応大切な事は摺込まされるまで同じ事を繰り返す。
非常に退屈な授業だが、覚えさせられた事はこの三年間忘れた事は無い。
クラブ活動の理科クラブは学園最多の部員人数を誇るも、主に進学組や、部活に時間を費やせない生徒が願書のスペースを埋める為に在席していた。
悔しい事に僕もその一人だ。
そんな普通ではありえない事をやってのけるだけに学園でも人気の高さは指折りなのだが・・・プライベートな部分はまったくと言っていいほど聞いた事がない。
伝わっているのは寒がりで甘い物が嫌いと言う事ぐらい。
そしてユーリに教えてもらった双子の兄がいると言う事だけ。
まったく人物像が見えてこない教師だった。
ちらりとユーリを見る。
すんすんと鼻をすする彼になんと言う声をかけようかとおもうも、かける言葉が見当たらなくなんでこんな事になったのだろうと溜息だけが代わりに出てきた。

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