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最後のおにーさま登場です。
やっぱり残念なおにーさまです。
そしておにーさまと言うのはとても残念な生き物だと思います。





寒い夜だった。
ひょっとしたら雪でも舞うのではないかと言うような寒い中、バイト先でもらった肉じゃがを片手におっさんとおにーさんの家へと足を運ぶ。
ピンポンとチャイムを鳴らせば暫くもしないうちにおっさんが出てきて顔を顰める。
「出会い頭にその顔はひでーんじゃないか?」
と、思わず言わずにいられないような顔だった。
それには「悪いわねぇ」とすぐ謝りながらスリッパをひっかけて外へ出る。
「せっかく来てくれた所悪いんだけど、シュヴァーンが熱を出してるから今日は帰ってもらえないかしら?」
言いながらエレベータホールまできて珍しい事に送ってくれる。
そのまま止まって居たエレベータに一緒に乗り込んで
「熱って風邪ひいてんのか?」
「まぁ、ちょっと虚弱体質って言うか、もともと気管支が強くないのよ。
 今日みたいな寒くて乾燥してるような日はボンって熱が上がっちゃうのよ」
「熱って、高いのか?」
「39度ぐらい。点滴打って一日寝てるから明日には復活するわよ~」
「明日って、早いな…」
「そりゃ社会人ですもの。2日も3日もだらだら寝てるわけいかないじゃない。
 それにおっさん達には専属のお医者様が居るんですもの。何があっても1日で復活させられるのよ」
「専属のお医者様って、おっさんもどっか悪いのか?」
「そうね。ちょっと奥歯が痛いとか、いくら寝ても朝起きれないとか」
「今テキトーにはぐらかしただろ」
「これもまた事実…」
「ダメを絵に描いたようなおっさんだなぁ」
「青年もあと10年ぐらいすればよくわかるわよー」
なんて話をしてる合間に一階に辿り着く。
そのまま近くの駅まで送ってもらう。
こんな事はおっさんの家に来るようになって初めての事だけに妙に緊張してそわそわとしてしまう。
薄い雲が広がる少ない星空の下で他愛もない話に心を躍らせているもすぐに人通りの多い駅前に辿り着いてしまい
「送ってくれてサンキュー」
今まで家の前でバイバイからの思わぬ進展にはにかんでしまうも
「せっかく来てくれたのに追い返して悪いわね。お土産までもらっちゃったのに」
「風邪なら仕方がないさ」
勿体ないと言う本音は隠して聞き分けの良い子を演じる。
シュヴァーンの事でまいってるだろうおっさんにこれ以上迷惑は掛けませんと言うように「じゃあな」と改札口をくぐれば電車でも来ていたのか改札口が込み始め、流れに逆らう俺は自然に隅っこへと追いやられた。
その中から一人の人物を見出した。
背が高く長い銀髪の…
「レイヴン」
おっさんの名前を呼んだ。
おっさんは驚いているようで込み合う改札口へと迎えに来る。
思わずと言うように俺も改札口の方へと向かえば
「デューク、いきなりどったの?」
驚くおっさんに
「おっさんの知り合い?」
改札口を挟んで声をかければ、縁っ子の使用禁止の所まで移動する。
ちなみに銀髪ヤローその2は既に改札を出ていたが、声をかければおっさんはどこか嬉しそうな顔をするから内心面白くない。
「デューク、彼がユーリ・ローウェル。たぶん聞いた事あるでしょ?」
聞けば何を見ているかわからない赤い瞳が小さく頷く。
「で、彼がデューク」
「それよりもだ。お前はなんでそんな恰好をしている」
「そんな恰好って、ああ、今青年をちょっと駅まで送ってきた所だから…」
「バカ者が」
言って自分が蒔いていたストールを首へとぐるぐる巻きつけながら
「こんなに冷えて」
むき出しだった首筋をあたためるように背中から抱きしめるも、周囲が振り向く美貌・・・と言うか、妙齢の大人の理解不能な大胆な行動に誰もが振り向く。
なんというか居た堪れないと言うか…
それどころか銀髪ヤローはおっさんを腕の中に閉じ込めている事もあってかそのままおっさんに自分の顔を寄せて
「お、おい!」
慌てて止めるも二人の顔は銀髪の長い髪に隠れてしまう。
そのまま駅全体が沈黙に叩き落された。

「やっぱり熱がある」

沈黙の中でやけに真面目な声が響いた。
どことなくほっとしたように動きだした雑踏の中、男は厳しい顔を容赦なくおっさんに向け
「熱があるのはシュヴァーンだけじゃなかったのかよ」
おっさんに聞けば
「あー、言われたらなんかボーっとしてきたかも」
「馬鹿者が」
今度は静かに怒りながら、自分のコートを脱ぎおっさんに強引に着せようとする。
「無理やりは嫌われるわよ!」
いい年して恥ずかしいと逃げようとするおっさんに向かってコートの下は見るからに仕立てのよさそうなスーツを着ている男は感情のない顔で
「ここで救急車を呼ぶか、おとなしく言う事を聞くか選択をさせてやる」
「おとなしく言う事聞きます」
「二択かよ…」
あまりに慣れた二人のやり取りに嫉妬すると言うか、何この漫才…なんて、さっきまでの妙な嫉妬心はなくなってしまった。
「では、行こう」
改札口すぐそばのタクシー乗り場へと腰に手をまわしてエスコートして停まっていたタクシーに乗り込み、おっさんの自宅マンションと違う方向へと走り出して行った。
「なんなんだあれ…」
おっさんが拉致られた事も知らず1人マンションで寝てるだろうシュヴァーンが気になり改札口を出る。
そのままマンションへと駆け足で向かえば、そこそこ熱が下がったかのようなシュヴァーンがいて何やら携帯で連絡を取り合っていた。
そのあと俺に暖かなコーヒーを入れてくれてからすまないと詫びる。
「君には兄達が迷惑をかけっぱなしで本当に申し訳ない」
と。
「あれもおにーさんですか…」
聞けば
「二番目でただの医者だ」
穏やかないつもの顔とは違いイエガーを前にしたような怖いおにーさんの顔のまま俺へと顔を向ける。
どうやらもう熱は完全に下がったようだ。
戦闘モードのおにーさんに思わず背筋を伸ばしてしまえば
「どうもうちの兄達は弟を溺愛する傾向がある。一番迷惑な例がアレクセイだ。
 だがデュークも気に入らん。あれはレイヴンを手懐けすぎた」
「気持ちはわかりますけど、手懐かされてるおっさんも問題だよな」
よく理解した!と言わんばかりに何故かおにーさんと握手をしていた。
そして
「アレクセイからは逃げ通せ」
「りょーかい」
「学校ではイエガーに近寄らせるな。レイヴンが穢れる」
「お、おう…」
「問題はデュークだ。レイヴンが懐いているからな。気に入らんがそれで喧嘩するほど馬鹿馬鹿しいものはない。が、レイヴンが懐いている。それだけで抹殺するには十分な理由だ」
「…そういや、弟を溺愛する家系なんだよな」
シュヴァーンの下にはレイヴン1人。
「私にはレイヴンがいれば十分。青年もこの家の敷居を跨ぎたくば物事はよく考える事だ」
「…」
どさくさに紛れて釘を刺されてしまったが、シュヴァーンも例に漏れずしっかりとその共通の精神を持つ確かにレイヴンの兄だった。

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