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今回は予約投稿で投入です。
このブログでは初めてなので上手く行くか心配ですが、失敗したら失敗したで幻になっておしまいと逃げる気満々です。

おっさん総受ワンダーランド。
苦手な方は見る前に逃げてください!



帰った頃にはすっかり陽も暮れていて、アレクセイの部屋で何時ものとおり夕食をとる事にしたのだが、留守をしていた間に緊急では無いが至急の仕事が入り食事はキャンセルとなってしまった。
そして代りではないが、俺達が戻ってきたのを確認にでもしに来たのかユーリがやってきた。
「団長どこ行ってたんですか」
登城する為にバタバタと鎧を着込んでいるアレクセイにユーリはサインお願いしますと隊長らしく仕事をきちんとこなしていたらしい。
「デイドン砦までの途中の小川までだが」
「ピクニックですか」
「散歩程度だ」
騎士団長ともあろう人物が部下も引き連れず魔物退治だなんて言う事は出来ない。
なんか納得しないというようにユーリは適当に相槌を打つが
「じゃあさレイヴン」
何だと呼ばれて振り向けば
「俺これから飯なんだけど食堂まで食いに行かないか?」
「食べにでしょ?」
品性と言うより口調から直さなきゃだめだなと訂正すれば少しだけ罰の悪そうな顔が
「食堂ですが一緒に食事にまいりませんか?」
胸に手をあて正式な態度で誘われれば苦笑するしかない。
「良いけど、俺様一人で城内歩けないから、食べ終わったらちゃんとここまで連れて来てよ」
迷子になっちゃうなんて可愛らしく言えばユーリは楽しそうに笑って
「では団長、食堂は早く行かないと混むから先行きます。書類はまた明日改めて取りにきます」
礼儀正しく、言葉遣いも堅苦しくない程度の丁寧なものに合格を与えれる。
「すみません。先に食事に行ってきます」
「ああ、そうしてくれ。私はいつ戻れるか判らないからな」
ふう、と溜息を零してアレクセイが手甲を付ければ迎えに来た親衛隊が廊下の両側に並んでいた。
じろじろと刺さる視線が痛かったがユーリに案内されるように騎士団の食堂へと向う。
お馴染みの食堂は活気に溢れよく厄介になったわねえと空いた席で待つように言われた。
そしてそのまま待つこと数分。
さすがに好奇心旺盛な周囲の視線に苦笑を隠せないで居ればやっとユーリが戻ってきた。
「ここのお勧めのビーフシチュー。おばさんに頼んで肉多目にしてもらった」
カレーじゃないのねと思いながらも、これはこれで確かに美味しい。
そして食欲旺盛な青年は1杯だけじゃ足らずお代りを取りに行く。
ユーリが留守をしている間周囲を眺めれば面白い事に知った顔を何人か見つけた。
彼らは俺の事は噂で知っていたのか「怪我は大丈夫なのか?」「記憶が戻ると良いな」といったふうに噂所か筒抜けで苦笑をこらえていればそこにユーリが戻ってきた。
周囲に睨みを利かせて
「何か変な事でも言われたか?」
心配そうに顔を覗き込まれるも違う違うとゼスチャーで返答。
「いやね、騎士団なんて堅苦しい所だと思ってたけど、意外とおおらかなのね」
言えばビーフシチューをぱくつくユーリがうんうんと頷く。
「堅苦しいのは団長ぐらいだからな。レイヴンが可哀相だとこれでも同情してるんだぜ?」
あれで堅苦しいねえ・・・もっとすごいのが居たんだけどと類似品の穏やかな性格にちょっぴり羨ましく思えば
「ユーリ隊長代理」
周囲の空いていた席を厳つい男達に囲まれてしまった。
騎士団のお姉さん達なら大歓迎なのにと思うも、回りに並ぶ見知った顔に齧っていたパンを噴出しそうになった。
「俺達にも客人を紹介してくれても良いんじゃないですかな?」
「そうそう、なんせ団長が溺愛してるって噂じゃないか」
ぶっ!!!
今度はさすがに噴出した。
「なんなのなんなのその噂わっ!!!」
思わずユーリを絞め上げていた。
「いや・・・だから・・・」
次第に言葉がなくなったというか、まともに絞め過ぎたせいで酸欠状態になっている。
慌てた周囲も手伝って意識があるうちにユーリは咽返っていた。
「せ、青年ごめん」
慌てて背中をさするも大丈夫だからと涙目で笑ってくれた。
これがうちのユーリだったら間違いなくたこ殴りにされた挙句秘奥義一発咬まされる所だろう。何て優しい子だろうと背中をさすりながら椅子に座らせてコップにはいっていた水を進めた。
「まあ、性質の悪い噂だって」
からかっていた周囲もすまなそうに
「我々も暇だからつい・・・な?」
視線がリレー式に繋がる所は、そう言う事だろう。
頭痛いとからかわれた身としては呻くがユーリはガツガツと男前にビーフシチューを掻き込む様に食べて
「ここに居るとおっさん達に遊ばれるだけだから部屋に戻ろうぜ」
おっさんねえと周囲の顔を見れば、確かに21歳から見ればおっさんの集団だろう。
おっさんなんて俺に向けられた呼称だと思っていたのに俺以外に向けられた事にくつくつと一人笑っていれば、ユーリの言動に呆れたようなおっさん連中はそれでも笑みを浮かべていて、ユーリには飛び出さなくても良い状況と言う事に酷く安心をした。
逃げるように食堂を飛び出したもののその後はゆっくりと中庭を散歩しながら部屋へと送り届けてくれた。
まだ人が住むには何もない部屋だけど、魔道器の灯りを付けてくれて何か必要な物が在ったら言ってくれよと笑顔で言う。
知っているユーリよりも純粋なのか、記憶喪失と言う設定に心配してくれるのかは知らないがともあれ外見はユーリなのだ。些細な親切さえ感動してしまいそうになれば不意に目の前に影が落ちた。
触れる温もりに「ん?」と視線を上げる。
睫までも漆黒なのねと案外長いのねと薄っすらと閉じた瞼を鑑賞していれば、啄ばむ唇からちゅっとどこかかわいらしい音が落ちた。
「じゃあレイヴンおやすみ」
ユーリの頬に何処か赤みが差していたようだが、彼は颯爽と長い髪をひるがえして去って行ってしまったのだ。
パタンと閉まったドアに向って「おやすみ」と返した物のこれは一体なんなんだと思い返しながら・・・暫らくぼんやりと考えて、きっとこれはおやすみなさいの挨拶なのだろうと纏めた。
うん。ありえないから。
青年がおっさんにキスする意味はそれ以外ないから。
照明魔道器のの灯りを落としてもそもそとベットに潜り込む。
まだアレクセイは戻ってきてないようだからさっさと寝てしまおう。
カーテンのない窓から燦然と輝く月だけが窓の外から覗いていた。

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