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拍手ありがとうございます。
まだセクハラの域を出れなくてとても残念(?)です。



おっさん総受ワンダーランド。
苦手な方は見る前に逃げてください!



ダブルセカンド 03


さわさわとそよぐ心地良い風と瞼を通し明るく柔らかな陽光の眩さにゆっくりと目を開ける。
頭上には真っ白なレースのカーテンが風に戯れ、その美しいドレープが柔らかく波打っていた。
見覚えのあるようなないような、そんな風景にゆったりと体を起こせば、かすかな布団の衣擦れの音に気が付いたというようにドアが開いた。
この大きな扉はこの人の為にあつらえたという規格よりも十分に大きくそして重厚な装飾を施されているというのに、ドアを開けた人物は下級兵士の宿舎の扉のようにぞんざいに扱い、ツカツカと鎧でブーツを補強した踵を鳴らしてベットの傍らに寄れば膝を付き俺の顔に手を添えてその紅玉の瞳で覗き込む。
「気分はどうだ?」
添えられた手と反らせようのない視線に驚きつつ大丈夫だと一つ頷く。
だがその秀麗な顔は眉間を僅かに歪めただけでまったく信用してなかった。
「昨日は随分と無理をさせたようですまない」
言いながら長い話しでも始めるかのように立ち上がってベットの隅に俺の視線を逃さないように座る。
「話しを蒸し返すようで済まないが、昨日の最後の言葉を覚えているだろうか?」
魔道器の事だろうか。
左側の腰に差していた短刀がないのが酷く無防備で怖かった。
「君は、その胸の魔道器を触れながらこれは何なのだと言った」
そうだっただろうか?
かつての主の言葉で頭の中がいっぱいだった事は覚えているがその他の事となると覚えていない。
「あのあと、我々は随分と話したのだが、まずは確認させて欲しい。
 レイヴン、君は一体何処から来たのか?」
「何処からって・・・」
それこそ俺が教えて欲しい。
言葉に詰まる俺の無言に一つ頷き
「では、帰る場所は?」
「帰る場所・・・」
この類似した世界に俺の帰る場所などあるのだろうか・・・
「では、君を待つ人達は・・・」
「・・・」
この世界には何処にもいない。誰もいない。
姿形が良く似た愛しい存在はそろっているのに、きっと誰一人として記憶の人達では無いのだろう。
俺の顔を覗いていたアレクセイは珍しく驚いたような顔をしたかと思えばグローブを外した手で俺の目元を拭う。
どうやら涙を零していたらしい。
いい歳してみっともないと思うも、改めて現実を受け止めた俺はきっと・・・寂しいと思っているのだろうか。
止まらなくなった涙に戸惑うアレクセイはその両腕で頭を抱き寄せ優しくあやし始めた。
「すまない。どうやら君を不安にさせてしまったようだ」
「いえ、今頃気付くなんて間抜けな話ですね」
はははと苦笑を零せば
「診断から言えば頭部への衝撃による記憶の損失だといえよう。
 時間が過ぎる事により思い出す事もあるそうだから、今はゆっくり傷を癒しなさい」
・・・はい?
いまなんと?
「いや、記憶の混乱程度かもしれないがだ、とりあえず治療が優先だ。
 身元引き受けは君の救出の際立ち会った私がなろう。
 騎士団は賑やかだからあまり休まらないかもしれないが、良ければ私を頼って欲しい」
ちょっと待ってください。
言おうとするも先に言葉が重ねられる。
「もし君に帰る場所や心安らぐ場所があるのならそちらに戻るのが一番なのだろうが、記憶を喪失してる今はどうか私の元で・・・」
トントン
木を軽く叩く音に二人して振り向く。
そこには四人の人物が思い思いの方向を向き、一人を覗き罰の悪い顔をしていた。
「団長、それ以上なんかしようとしたら俺達はあんたを暴行罪で捕まえないといけなくなるんだけど」
言ってずかずかと部屋にはいって来たのは漆黒の髪を揺らして歩くユーリだった。
団長に向ってそんな乱雑に扱って良いのかと言う位強引に肩を押したかと思えば、ユーリは俺の顔を見て何処か中性的な美しさを誇る顔を無残にもゆがめる。
「あんた泣いてたのか?まさかもうこいつに変な事された後なのか?」
「ユーリ、アレクセイ団長に向ってそれは・・・」
「怪我人を泣かせたんだ。こいつでも十分すぎるくらいだ」
「さすがにその言い分はどうかと思うわ」
頭がいたいというキャナリとは反対に、キャナリの視界の外に居たイエガーはどちらかといえばユーリ側の言い分を納得するように首を縦に振っていた。
「あ、あのねユーリ、話しを聞いてちょうだい」
なんだか大事になって行く気配に慌てて訂正をしなくてはいけない。
「別にアレクセイ・・・さん?に変な事されてないし、ただいまはちょっと混乱しただけで・・・」
「じゃあ変な事言われたのか?」
「だから違うって・・・」
どうやらユーリの中ではアレクセイは変人、もしくは変態の部類に分けられているらしい。
「それで、彼はやっぱり?」
「どうやらそのようだ」
アレクセイを睨むユーリを無視してイエガーと主語のない会話を手短に終わらしてこの場の全員を見る。
「騎士団でレイヴンを救助した以上騎士団が最後まで面倒を見る。
 私の一存だがら周囲からとやかく言われるかもしれない。出来る限りのフォローを頼む」
「はっ」
さっきまで不貞腐れていたユーリもドアの向こう側の三人も背筋を伸ばし敬礼の態度を取る姿はまさに騎士の姿だった。
ただ、その後キャナリが顔を歪め、閣下と小さな声で呼びかける。
「私3日後より産休に入るのですが」
「ふむ。予定日は5日後だったな」
そんな切羽詰った状況だったのかいと、軽快に小走りする姿を見かけていただけに冷や汗を流すも
「じゃあ、キャナリ隊は俺が預かるな」
キャナリ隊の小隊長殿は至極当然と言うように言うもアレクセイは顔をゆがめている。
「ユーリ小隊長でもキャナリ隊隊長代理は務まるとは思うのですが・・・」
ふっと笑うイエガーの顔には何処か小馬鹿にしたもの。
アレクセイもキャナリも少し顔をゆがめ
「君には十分隊長としての腕はあると私も思うのだが・・・」
「そうね。いつも言ってると思うのだけどあなたにはやっぱり隊長としての品格が足りないのよ」
「うちのフレンなら申し分ないのだが、如何せん別の隊だからな」
うーんと頭を悩ます三人にユーリは不貞腐れてみせる。
「所でキャナリ・・・さんの復帰はいつ頃予定で?」
ああ、もう呼びなれた名前だっただけに今更さん付けはめんどくさいと心の中で罵りつつ訊ねれば
「産後60日は城を離れている予定なの」
折角キャナリと再びあえたというのに残念だと思うも、
「無事生まれるといいですね」
言えば彼女は幸せそうに笑い、イエガーに寄り添う。
相手がイエガーと言うのには腹立たしいが、それでもキャナリの幸せそのものの笑顔は見てる方が幸せになれる、そんな笑顔に若くしてこの世を去った彼女にもこんな幸せもあったのかもしれないと想像してみた。
「で、キャナリ隊はどうするんだ」
いつの間にかベットに座っていたユーリは組んだ足に肘を乗せて頬杖を付いていた。
「ユーリ、その態度が品格を問われるんだよ」
フレンのお小言にぷいとそっぽを向いたユーリに思わず苦笑し
「いっその事任してみてはどうです?」
まったく関係のない外部の意見はどうかと思うも、アレクセイはこんな俺を面白いというような視線で真意を促す。
「隊長の代理を務めればいかに自分が未熟だったか良く判るだろうし、生長を促すにはそれなりのシビアな世界に身を置いた方がいい。どっちにしろ60日間限定とすれば、彼には良い経験になると思います」
「なるようになれか」
「あなた、思ったよりも大胆な発言するのね」
驚くイエガーとキャナリは楽しそうな顔をして感心してくれるも当の本人はまだ意味が飲み込めないというようにキョトンとしている。
「確かにそれも一理ある」
考えるように天井を見上げるもアレクセイはユーリを見て
「今から人材を探すよりはマシだろう」
何処か投げやりな認可にフレンが良かったねとユーリの肩を叩くも、本人はまだ驚きの真ん中にいる。
「まぁ頑張んなさいよユーリ隊長代理」
ポンと肩を叩けばどこかはにかんだ様な笑みが返って来た。

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