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4月1日の(私が)バカ企画の第三弾。

今回は騎士団のお話。
オリジナルキャラ注意報。

何だかんだ言ってもフレンはまだ新米騎士団長よねと言うお話。
おっさんややキレ気味なほのぼの騎士団。




星喰みの事件も終わり、正式に騎士団団長に任命された僕は、代々の団長が執務したその部屋を譲り受ける事になった。
平民出身の、二十そこそこでついこの間まで小隊長だったこれと言った武勲も立てていない僕が騎士団の長になるに当たって貴族出身の騎士や、年長の騎士などの反感を買うには十分な理由だった。
若い騎士には圧倒的に歓迎されているのは肌で感じているつもりだったが、年長者、上司の反感は買いたくないと時が経つにつれて鳴りを潜めて行った。
団長とは孤独だ。
かつてレイヴンさんがそう揶揄した事があった。
先日まで騒いだりした仲間は今では敬礼とイエスかノーの返事のみ。
そんな僕に付いて来てくれたソディアだって、前以上に事務的な口調になっていた。
孤独がこんなにも辛いものだとは知らなかった僕はいつの間にか陰鬱な溜息を零すのが日課になっていた。
旅をしていた頃は大変だったが楽しかったな・・・
すすまない書類のサインの空欄をぼんやりと見て溜息を落とす。
かつてなら書類は溜め込まなかったのに、気が付けば隣に設置されていた机の上の書類はいくつもの山を積み重ねていた。
アレクセイもこのように仕事を抱え込んでいたのだろうか。
何度か入室したこの部屋にはここまで書類が積み重なっていた記憶は無い。
今日も終わらない仕事に手にしていたペンを手放せば、コンコンとドアをノックする音。
「はい」
慌てて転がしたペンを改めて持てば
「シュヴァーン隊長がお見えです」
ソディアの声と同時に開かれたドアの前には橙の隊服に身を包んだレイヴンさんが立っていた。
窓から注ぎ込む陽光を浴びたくすんだ金の鎧が鈍く反射するのをまぶしく見上げながら席を立つ。
「お久しぶりです」
レイヴンとしての訪問ではなく騎士団の鎧に身を包んだその姿に自然と笑みが浮ぶ。
お茶をお持ちしますと断わって席を外してくれたソディアを見送ってから年期の入ったアンティークの応接セットを勧める。
「今日はどういった御用ですか?」
レイヴンさんが騎士団とギルドの両方に身を置く事を決めて行ったり来たり、橋渡ししたりと忙しくしているのを正直ありがたく思いつつも、今はあと10日ほどはギルドの仕事に専念しているはずだった。
「いや、先日エステリーゼ様を連れた青年達に出会い、団長が苦労されてるという話しを聞いて、こちらに赴くように要請が入ったのですが・・・」
ちらりと書類の山を見て苦笑い。
「エステル嬢ちゃんから聞いた話よりすごい事になってるわねえ」
シュヴァーン隊長の口調から砕けたレイヴンさんの口調へと変わり、何故だかいっきに僕まで気が抜けてしまった。
レイヴンさんはその書類の束を一つ手に取り、ぱらぱらとめくれば
「うわ、なにこれ。こんなのフレンの仕事じゃないでしょ?」
あれもこれもといきなり仕分けを始めたレイヴンさんにこれ持って、これをあっちに置いてと言われるまま分別している合間に戻ってきたソディアも巻き込まれて部屋いっぱいに書類を並べる。すると不思議な事にあれだけの憂鬱な原因だった書類は小さな山に変化し、いくつもにも別れた書類の山にレイヴンさんは溜息を落とす。
「フレン君さあ、団長なんだから不備な書類は受け取っちゃ駄目でしょう」
やっとありついたお茶は既に冷め切っているものの、淹れ直して貰うまでもないと冷たいまま頂く事にした。
「嘗められているのでしょうか・・・」
「よく言えば試されているって言う状態よね」
つまりは嘗められているという事だ。
頑張ってるつもりだったのに、からかわれていただけと判れば自嘲気味な笑みを零す。
「駄目な物は駄目、通せない事は通せない。はっきり言う事が大切なのよ」
仮令かつての上司であろうが、年上だろうが、貴族だろうが、フレンがこの騎士団の団長なのだと諭すシュヴァーン隊長の口調は総てが身に沁みて、どれも厳しかった。
隣で一緒に無言でお茶を頂いていたソディアもまるで自分の事のように俯いている姿に、僕がしっかりしないから巻き込んでしまったと反省をしていればコンコンとノックの音。
はい、とソディアが立てば新たにやってきたのは
「グラナダ隊長、丁度良い所に」
「シュヴァーン隊長、お戻りになってたのですか」
満面の笑みを浮かべ、久しぶりの再会に抱擁でもするかのように両手を広げるも散々足る部屋に視線を移してさっとそっぽを向いた。
そして背中に隠した書類を目ざとく見つけたレイヴンさんはさっと盗み取り書類に目を通す。
「・・・グラナダ隊長ともあろう者がこの程度の出来の書類を団長に提出されるとは酷いのでは無いのかな?
 無駄に団長の仕事を増やし、さらには騎士団の任務に支障を加えるようではヨーデル殿下に顔向けが出来ないと思うぞ」
ああ、いや、そのな・・・
などといい訳を始めたグラナダ隊長は何処か青ざめたように
「実は書類作りは苦手なんだ。だが新しい団長はお優しく、多少の不備があっても書類を受け取ってくれるのでついつい甘えてしまって・・・すみません」
がたいの良いグラナダ隊長はその大きな体を二つに折るように頭を下げて謝罪を述べた。
「書類作りが苦手だったら得意な文官を振り分けよう。ぜひとも得意ではなくとも苦手意識を克服するように」
はっ、と子気味良い返事で敬礼を返し改めて書類を作り直してお持ちしますと言って退出しようとしたグラナダ隊長をシュヴァーン隊長は引き止める。
「グラナダ隊長、忘れ物を。提出期限が迫っているものばかりなのでこちらを至急に」
床の上に仕分けた書類の山の一部をグラナダ隊長に押し付ける。
「あはは・・・シュヴァーン隊長、ひょっとして見ました?」
「見ました。再提出だ」
ガクリと項垂れたグラナダ隊長はそれでもシュヴァーン隊長はかわいい顔してるのにきついんだからと愚痴を零す。
言われた方は何故か口元を引き攣らせもう一度グラナダ隊長と呼び止める。
今にも泣き出しそうな大きな長身の男を見上げ、
「忙しい所悪いのだが、ウェステリン隊長、ノイエス隊長、カーネオル隊長、スルタン隊長、ゼゼット隊長、グレース隊長、へスター隊長を至急団長室に召喚するように連絡を頼む」
ひいと悲鳴を上げたのは今の時間城内に滞在する総ての隊長の名前総てが並べられたからだろうか。
「ひょっとして怒ってます?」
「怒ってるように見えるか?」
綺麗に笑って見せた顔に今度こそ逃げるように出て行ったグラナダ隊長を見送ればふうと溜息を付き、僕を見る。
「半分は団長の責任だな」
「申し訳ありません」
「反省するなら1つでも仕事を終わらせる」
「はい」
そう言って書類の山を崩さないように慎重に足を運んで、未だ不慣れな書類仕事を教えてもらいながら片付けていく。
やがて集った隊長達の、グラナダ隊長同様項垂れて書類の再提出を宣告された隊長達の後ろ姿は見た事もないほど何処か寂しそうだった。

後日グラナダ隊長以下シュヴァーン隊長に呼ばれた隊長達と偶然にも話しをする機会に恵まれて、あの日は何で温厚なシュヴァーン隊長があそこまで怒っていたのか訊ねれば、全員が口をそろえる。
「グラナダが主席をかわいいなどと言ったのが原因だ」
どうやら密かなコンプレックスなようで、思っても口に出さないのが鉄則らしい。

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