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いかん、いかんぞぉ!
一度休むとサボリ癖が出る(笑)
おっさん総受ワンダーランド。
苦手な方は見る前に逃げて!
一度休むとサボリ癖が出る(笑)
おっさん総受ワンダーランド。
苦手な方は見る前に逃げて!
複雑な人生を歩んできたおっさんには俺の告白なんて35年のうちの小石に躓く程度の出来事だろう。
自分自身でさえはっきりとしなかった告白のうちに入るだろう告白はまるでなかったかのような顔で俺の前に立っていたのだから。
そもそも同性だし、一回り以上の年齢差だってある。
あの流れはむしろ慰めの域で解釈されていたりするのでは無いだろうかと、相変らず意味ありげな笑みをたづさえているおっさんを見下ろし溜息。
「ちょっと何よお、人の顔見ていきなりため息はないでしょ?」
「あー、相変らず元気そうで何よりで」
そう。何でこんなおっさんなんて好きになったのかがそもそも疑問だ。
「何よ、つれない事言って」
「つれないのはおっさんだろ」
何気ないやり取りの中渋面を作るおっさんを見てまたやったかと頭を抱えたくなる。
おっさんの方が頭抱えたい気分だろうが、こうやって無意識に口説いている自分にげんなりしていたりする。
他にもダングレストの街でレイヴンに声をかけてくる女の子にいらだったり、一番近くのジュディまでも対象になってるのだからたちが悪い。
もっともジュディから見たら俺のこのジレンマは大層面白いらしく、自らわざとレイヴンに絡んで楽しんでいる様子すらある。
最悪だ・・・
「一人で百面相するのもいいけどね、今からハリーに報告に行くんだけど当然来るでしょ?」
「もちろん!」
カロルが元気一杯に返事をする。
今は亡きドンに今もあこがれるカロルは天を射る矢とのつながりは事のほか嬉しいようだった。
仲良くなったハリーを兄のように従い、そしてギルドのボス同士として深まる友情は微笑ましい物がある。
長い廊下の最奥にある部屋の扉を開ければ、そこには天を射る矢所か魔狩りの剣の顔も並んでいた。
他にもユニオン傘下のギルドのボスらしき面々が並び、レイヴンの帰りを待ち構えていたよただった。
「で、どうだった?」
部屋の主らしく一際大きな椅子に深々と座るハリーは小難しそうな顔でレイヴンに問えば
「だーめ、もう何時ものとおり。のんびりしたもんだったわよ」
間延びした答えに室内がざわつく。
「ったく、どうなってんだ」
苛立たしげにハリーが舌打ちすれば、敵は居ないと知った魔狩りの剣のクリントはティソンとナンをつれて早速帰ろうとする。
それを見て場を去ろうとする顔ぶれも立ち上がるが
「で、判った事が一つ」
もったいぶったようにレイヴンは口を開いた。
なんだ?と言うようにハリーの視線がレイヴンを見上げれば、レイヴンは天を射る矢のメンバーだというようにハリーの後方に回る。
「この何日かケーブ・モックに滞在してわかったんだけど、どうやら満月の日に向って魔物が暴れだす傾向がある。
ピークは満月の夜の間。それから陽が昇るまで暴れまわって、昼ごろにはすっかり納まった。
どうやら一時的なものみたいね。満月の日前後近寄らなければ大丈夫」
だからみんなに気をつけるように連絡してね~と能天気な声で笑いながら言えば、何処か毒気抜かれた面々は了解といわんばかりにスッキリした顔で去って行った。
そして気付けば残ったのはユニオンの主とも言ってもいい天を射る矢の面子と俺達、そして魔狩りの剣が残っていた。
とたんになった静かな部屋でクリントがレイヴンを睨みつける。
「で、原因はなんだ?」
単に魔物の大暴走では無いだろうと言う言葉に俺達もレイヴンを見る。
カロルもいったが、こんな風にケーブ・モックの魔物が大暴走する事は無いという。
ただ唯一の記憶としてはまだこの世界の至る所で魔道器の恩恵を受けて居た時。
エアルクレーネの暴走によって魔物が影響を受けたあの時を思い出した。
「ひょっとして・・・」
同じ事に思い当たったかのようにジュディが口を開けばおっさんはウインクを一つ。
「正解。案の定大暴走してたわ」
ふーっと溜息を付いて、そうそうと付け足す。
「デュークにも会ってね、宙の戒典で中和してもらったんだけど、どうやら今回のエアルクレーネの大暴走は自然現象らしくて、宙の戒典の力を持っても一時しのぎにしかならなかったわ」
ふうと溜息を吐くレイヴンに
「で、あいつは何て?」
過去にレイヴン・・・シュヴァーンとつながりのあるすました顔を思い出しながら何処かいらだたち気に聞けば隣のジュディスがクスリと笑った。
「デュークは、これが自然の現象ならそれを受け入れるしかないだろう。
だって。たぶんもう宙の戒典使ってくれないと思うわ」
ご丁寧にも口真似をしてくれたレイヴンにカロルは小さく噴出していたけど
「まあ、どっちにしろ満月前後は近寄らない事をお勧めするわ。
ほんとすごいんだから」
報告は以上といわんばかりにじゃあ少し休むから後はお願いねとハリーに断わってユニオン本部の部屋に行くと去って行った。
カロルはじゃあ近寄らないようにしなくちゃねと常識的な事を言うがジュディはこう言う時の方が素材を沢山集めれるわと何処か喜々と満面な笑みを浮かべている。
おっかねーと思ったのは俺だけでなく、ハリーを初め大半がどん引きしていたが、それでもクリントはジュディの度胸に笑みを浮かべてなら競争するかと物騒話しを持ちかけている。
俺はといえば、レイヴンが出て行ってしまったばかりの扉を眺めていた。
相変らず何時もと同じようにへらへらとした笑みを浮かべていたが・・・
「わりい、俺おっさんと少し話してくる」
この場はカロルとジュディに任せておっさんの後を追いかけた。
ユニオン本部におっさんの部屋があるとは聞いていたが何処にあるかは聞いた事は無い。
適当にそこら辺に居た奴を捕まえて聞けば、しょっちゅう出入りしてただけあってすぐに教えてくれた。
階段を昇り、いくつも部屋が並ぶ廊下を歩く。
しょっちゅう居ないからと言う理由で北側の奥の部屋だと説明を受けた。
「北側って部屋が二つしかないのな」
一つは手前、もう一つは廊下の奥にしか扉は無い。
判りやすいと思っておっさんいるかと声をかけてからドアを開ければベットに倒れこむようにうつ伏せになっていたおっさんがいた。
「レイヴン!」
思わず大声で名前を呼んでしまったけど、おっさんは弱々しく何とかと言うように顔を持ち上げる。
「大丈夫」
「って顔してねーだろ!」
リタが今ここに居ないのが歯痒い。
エステルが居ないのも、自分が治癒術を使えないのをこれほど苛立たしい事だとは思いもしなかった。
「待ってろ、誰か・・・」
言っておっさんが俺の手を掴んだのに気が付いた。
「いいから、それより・・・」
ここにいてとは声にならなかった。けど、何とか唇を読めば、小さな舌打ちと共におっさんをちゃんとベットに寝かして触れた肌の随分冷たかった事に慌てて布団をかぶせた。
「悪い・・・」
声にならない謝罪で誤られても返す言葉が見つからない。
慌ててグミを取り出し口に押し付けるも、上手く飲み込めない。
咽て吐き出したグミに背筋が冷たくなるのを覚えながら不安を滲ませるように「おっさん」と弱々しい声で呼びかける。
冷たい体躯をさすりながら
「あんた良くこの状態であんな所に行ったな?」
怒ってるのか泣き出したいのか判らない気持ちで問えば静かな笑みが零れ落ちていた。
「この心臓はエアルの影響を受けやすいからな。あんな大きな森でエアルの源泉を探すのに大いに役に立つ」
震える体を抱きしめるように布団の中で蹲るレイブンの肩をさすれば、多少グミを飲み込めたようで声が出るようになっていた。
「苦しい方、苦しい方へと足を向ければみーつけたって・・・」
「頼むから」
思わずそれ以上何も言わせたくなく、おっさんの話に言葉をかぶせた。
「頼むから・・・あんたは少し自分を大切にしてくれ」
肩をさすっていた手を止め、そのまま抱き寄せた。
「青年」
少し驚いたような顔で見上げる翡翠が俺を覗きこみ、それからゆっくりと閉じた瞳は何処か困っているようで、笑っているようにも見えた。
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