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空に向かって手を上げて
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おっさん本の衝撃が止まらぬ内に更新です。
あまりにもこゆい中身に満腹の椎名です。
ゲームのノベライズ化を馬鹿にしてました。
今までいくつもの本を読みましたが当たりと言える本ってこのみはあるとは思いますがほんと少ないと思うんですよ。
同作品の別のノベライズだったり。
外伝とは言えこれだけ紙面が黒いと読み応えがあります。
しかもこのこゆい内容でまだ前半。
後半どうなっちゃうんだろうって、あの人は?あの人は?
しかも冒頭の下りの時代はどうなってるの!!
おっさんの人生波乱に満ち溢れすぎです。

おっさん総受ワンダーランド。
苦手な方は見る前に逃げて!

ダブルセカンド 16


窓際のベットに寝転んで高い壁に囲まれた狭い空を見上げていた。
何時もと変わりない青い空と宙に描かれた淡く輝く白の結界。
騎士団にいれば何か情報を得られるだろうと身を置いてもうすぐ月が一つ巡るぐらいの時間を無駄にした。
鳥さえ通り過ぎていかない空を見上げながら頭の中で今の現状を整理する。
星喰みと共に魔道器の文明が消えたぐらいだろうか。
満月に共鳴するかのようにエアルクレーネが暴走するようになったのは。
最初はカドスの喉笛を通過しようとした幸福の市場の商人からの情報だった。
すぐにユニオンから俺が派遣されて報告を受けてからひたすらその現象を待ってもう起きないだろうと判断したぐらいに心臓の魔道器のが不調を訴えた。
何処からか集まった魔物の凶暴さに息絶え絶え逃げ出せば砂漠の乾いて澄んだ夜空の向うにポッカリと満月が浮んでいた。
あまりに見事な月に酒があればいいのにと思いながらも、砂漠を砂を少し掘って潜り込み、ござを取り出してスッポリ覆われるように被って朝を待った。
うっかりと言うか随分と陽が高くなった頃になって漸く目が覚めた。
砂漠の夜は寒く、こうやって地熱で暖まってなければ凍え死ぬかと思ったが何とか凌げたし、胸の魔道器も昨日の不調が嘘のように調子を取り戻していた。
不調の原因はわかっていて、少し躊躇うもどの道帰るにはここを通るしかないとカドスの喉笛に入れば、そこはもう何度も往復をして知っている薄暗い道だった。
エアルクレーネも昨日の暴走ぶりが嘘のように治まり、地下水の中で淡やかな輝きを放っていた。
顎の無精ひげをなでつけながら考え周囲を見回す。
近くが無理でも遠くから観察できる場所はないかと周囲を見回すも岩場を切り開いたというような細い通路では隠れる場所はおろか、魔物と戦う足場の確保がやっとだ。
しかも昨日の集まったあの魔物の数は一体なんなんだ。理性を失ったようなあれはまるで・・・ケーブ・モックの森の出来事と重なった。
今回の調査は失敗として、戦士の殿堂のナッツに挨拶に行く。
近くに寄っただけだからと、カドスの喉笛の事を愚痴交じりに情報を与え、それとなく様子を見てもらう事にした。
ついでにいつの間にかしっかり闘技場でバイトをするようになっていたシュヴァーン隊の面々にも協力するように言いつけて、急ぎ足でダングレストへと向う。
一通りをハリーに報告してからケーブ・モックが気になるからと単身乗り込み、何時起こるか判らない現象をひたすら待ち続けた。
雨の多いここではしっかりとテントを張って魔物対策もした所で待つ事どれだけ過ぎただろうか。
そろそろ風呂にも入りたいし、人恋しい。食料もほぼつきかけていて自給自足の生活にも飽きたという所で再び心臓が不調を訴えてきた。
エアルの源泉を包み込むかのように育った木々の中央からは溢れんばかりの輝きを放っている。
おいおい、と言う間もなく無意識に手を心臓に当てていた。
逃げる間もなくどんどん輝きは強くなり、十分以上に距離をとっているのに呼吸が苦しくなり、重い足取りで何とかと言うように更に距離をとればドンと言う、強い衝撃音を聞いた。
砲撃の音と言うより魔道が発動した音にも近いもの。
振り向けば見た事もないくらいのエアルの奔流が空に向かって真っ直ぐ突き抜けて行く。
呆気に取られるように眺めれば、ケーブ・モックを覆う厚く重たげな雨雲を一掃したかのように払いのけていた。
何が起きたのかと思うも美しいまでの真っ直ぐな光の柱が天を支えんと伸び上がっていて、色々この世界の不思議を覗いてきたつもりだったが、これもまたなんと言う神秘だとガラにもなく息絶え絶えのまま感動の中にいた。
それをピークにゆっくりとその力は弱くなっていき、気がつけばさっきまで身動きすら出来なかった影響はなく、体はまだ苦しいと悲鳴を上げるも魔物の住処であるこの森で寝転がっているわけも行かず、とりあえず体を起して近寄れるだけ近寄ればまだ弱々しくも光の点滅を繰り返すようにして収まっていく途中だった。
やがて触れても大丈夫なくらいの巨大な結晶にも似たそれに手を翳せば、透明度が高いガラス質の表面にまだ夜明け前と言うのに影が落ちた。
思わずと言うように空を見上げれば、雲が吹き飛ばされた深い森の木々の合い間に大きな真円を描いた月が何事もなかったようにただ浮いていて、一月前の夜空を思い出す。
遮る物が何もない宝石をちりばめたような星空の中で燦然と輝いていた月も満月ではなかったか。
一つの仮定を作り上げ、それから暫らくの間満月の日が近くなるとケーブ・モックへと通い続けた。
まさかそこでデュークと会うとは思わなかったが、奴には精霊と言う強い味方もいる。
デュークでも初めて出会う現象にお互い持つ情報を幾つか交換したまではいいけど・・・
「もうすぐ満月だけどデュークの奴、調査ちゃんとやってくれてるかな」
協力と言う言葉なんて彼の辞書から消し去った文字を再び付け加えてくれているだろうか不安になるも、たぶん予想は外れていないだろうと、長年カンだけで生きていただけに自分のカンを一つ信じてみる事にする。
が、その前にだ。
「どうやったら帰れるのかねぇ」
この大問題に頭を抱えればこんこんとノックの音と返事をするまでに呼びかけられる「レイヴン起きているか?」と言う落ち着いたテノールの声。
「何か御用で?」
珍しく鎧を着込んでやってきたアレクセイは腰を屈めておはようと挨拶のキス。
なんだか最近では抵抗もバカバカしくなりアレクセイの好きなようにさせているのに、離れた彼は怪訝な顔で俺を見ていた。
「最近はなんだか元気ないな」
「そうですか?」
へらりと当たり障りのない笑みを顔に貼り付ければ
「張り合いがない」
なんか物騒にも聞える呟きを拾ったが聞えないフリをして
「おや?どっかお出かけですか」
コンコンと鎧を折り曲げた指で叩けば、彼はそうだと頷き俺が座るベットに同じように座る。
「実はこれからケーブ・モック大森林と言う所に行く」
地名まで一緒な事はイエガーから手渡された本で知る事もできて今更驚きはしない。
「トルビキア大陸でしたっけ。ダングレストの南西にあるですよね?」
得た知識の確認とでも言う風に聞けばその通りだとひとつ頷き
「実は今そのケーブ・モックで信じがたい事が起きている」
何がと黙って首を捻って先を促せば
「この時期になるとどうやら魔物が暴れだすとギルドより援護要請が来ているのだ」
「この時期って、まるで周期的に起きてるような言い方ですね」
嫌な予感に知らず知らず声が硬くなる。
「ような、ではなく起きているんだ」
嘘では無いというような緊迫した声に息を飲む。
だってその現象は、まるで
「もうすぐ満月を迎える。
 どうやら満月になると魔物が暴れだし、ケーブ・モック近くのダングレストに結界を無視してまで迫ってくるのだ」
世界中で結界魔道器のを信じて暮らしている人の常識を覆すような出来事などあってはならないというような重い溜息を吐いてその後真面目な顔で俺の顔を覗き込んだ。
「先日と言ってももうだいぶ前になるのだが、ギルドのユニオンから魔物の討伐を正式依頼された。
 前回の時に魔物のが暴れる様を確認したのだが、今回も原因を突き止めるために協力する事になっている」
前回原因がつかめなかったのはきっと俺が倒れているのを見つけたからだろう。もう少し奥まで行けば原因がわかったはずなのだが・・・
「君が騎士団でもギルドでもない事は重々承知だ。だがそれを承知で君に頼みたい」
言って正面から見詰められて何故か手を握られた。
「私と共にケーブ・モックまで来てくれないだろうか」
「私と共にではなく私達と共にだ」
カチャリといつの間にか目の前までせまっていたアレクセイと俺の間に銀色に鋭く光る剣が間を割った。
「ユーリ!」
思わず呼び止める声にゆっくりと視線を移せばアレクセイを睨み付けるような視線で仁王立ちしていた。
さすがにやりすぎだというフレンは更に背後に控えていたイエガーに助けを求めるも、楽しいからほっときなさいと言う援護を聞かなかった事にして危ないのでこちらにとフレンがおっさんお手を引いてイエガーの陰に隠れるように廊下に出た。
「これは一体なんなのだ?不敬罪だぞ」
指先で軽く剣を押せば、警告のつもりだろう剣はそのまま鞘に収め
「だったらあんたは暴行罪か?それとも脅迫罪か?」
まるで火花でも散るんじゃなかろうかと言うような空気の中でアレクセイは笑う。
「合意だが?」
ふふんと鼻で笑う言葉にユーリがたじろいたが
「そんな自信満々に嘘を言わないでよ!!」
イエガーの背後から猛烈に抗議。
「ばれたか」
悪びれる事無くひょいと肩をすくめて
「まだ挨拶のキス程度どまりだがな」
自分の優位を表すように立ち上がってその長身を活かして見下ろせば怒りに震えるユーリに対しフレンが
「羨ましい・・・」
小さな声でポツリと零し、なんとも言えない静寂が広がった。
「この騎士団大丈夫?」
唯一まともな神経のありそうな妻帯者に向って聞くも
「ちょっと難はありそうな気はしますが、この程度なら居たってまとものうちでしょう。
 それよりも閣下、彼は承諾してくれましたか?」
これがまともか?と聞きたいが既に話は別の方へと向いてしまってこの話題はお終いだ。
「ああ、今丁度返事を貰う所だったのだが」
言ってユーリを睨むも、彼は既に過ぎた事に知らん顔だ。
「魔物退治でしょ?俺様で役に立つなら何処へだってご一緒させてもらいますよ」
腕を頭の後ろで組み、へらりとした笑みを貼り付けて承諾をする。
「ですが、今回の任務のケーブ・モックは本当に危険な場所ですが大丈夫ですか?」
フレンの心配顔に少しだけ拗ねるようにして
「フレン君ならおっさんの実力知らないわけじゃないでしょ?
 それともおっさんがそんなにも信じられない?」
一緒に魔物の大群と殺りあった仲じゃないと言えばそうでしたね、すみませんでしたと彼らしく申し訳なさそうな謝罪につい笑みを浮かべたくなる。
そしてその話の流れのままアレクセイに向って
「じゃあ後は勝手知ったる何とかで俺はフレン小隊の所に世話になります」
じゃあフレン君よろしくねーとウインク一つ投げてお願いすればまさかのご使命にイエガーの顔を見て、小さく頷いたのを見て敬礼をする。
「こちらこそよろしくお願いします」
「では、彼が同行する事をフレン小隊のみんなに説明に行きなさい。
 レイヴンも出発前に招待のみんなに挨拶を」
下がっていいとの指示に時間のなさから駆け足気味で退出する。
そして一刻もせず城の前で再度集合した時のこれからさぁ行くぞと言うのにアレクセイとユーリの消沈した姿に何があったのかとフレンと共にイエガーに聴いてみてもただ彼は
「さあ?一体何があったんでしょうねえ」
と意味ありげな笑みと共に最後まで何も語りはしなかった。

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