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小説ネタでGO
気持ちユリ→レイ風味
気持ちユリ→レイ風味
夢の欠片
机の中を整理して抽斗と抽斗を囲む机の枠の間に書類が挟まっている事に気がついた。
何だろうと抽斗を抜いて引っ張り出せば古い書類をまとめておいた封筒だった。
埃を払い、中身を抜き出せば見覚えのある丁寧な文字。
記憶よりもまだくせは少なく、それがやけに年月を感じさせた。
書類の最初に書かれた名前を指で辿る。
10年前に与えられた名前。
死んだ心とは別に生き残った体のために与えられた人物。
ぱらりと書類を捲ればシュヴァーンを形作る紙上の人物の履歴。
平民、生き残り、英雄。
アレクセイが求めていた夢の人物がそこに居た。
こんな立派な人物居るわけないのにと10年ぶりに見る書類に感情もなく視線を落とす。
この命は1/1000の上に紛い物の生としてあるの。
いや、もう一人いたのだが、こんな生を与えられるくらいならあの戦争で死んでいた事を彼だって望んだだろう。
今では本当に最後の生き残りとなってしまったが、この書類の人物にいつの間にかなりきっていた事に一人苦笑。
またぺらりと書類を捲る。
昔は文字通りの意味にしか捉えて疑問も何も持たなかったが今こうやって過去を振り返るように読み返してみると何故か口元が緩む。
あまりに出来すぎたこんな人物いないだろうと、震える肩にいつの間にか浮ぶ涙。人がいないのが判っていても憚られる内容に腹筋がふるふるとわなないて痛いくらいだ。
俺はこんな人物になりきっていたのかと思う反面こんな出来すぎた人物胡散臭くて俺様ついていけないわと思うも、改めてそれが自分なのだと気づいて一人で赤面したり。
確かにこんな人物だったら夢を抱き目標目指す真面目な若者、例えばフレンが良い例だ。シュヴァーンに憧れても仕方がないと当の本人は今だ夢どころか目標を見つけ出せずに足踏み状態の俺をどんな風に思っているのか申し訳なくて尋ねる事もできない。
ぺらぺらと捲り最後の一枚を読み終える。
かつて記憶したとおりの文字を目で追いながらまた最初の懐かしいアレクセイの署名に無言で見詰める。
「大将、あんた趣味悪いわよ」
アレクセイの理想を描いた人物。
夢の最後の一欠片になった俺をどんな目で見ていたかなんてもう思い出す事も出来ない。
だけどだ。
こんな人物がもし本物が居たとしたらだ。俺だって何処までもついて行っただろう。
ダミュロンにとってのキャナリのように。
眩しいほどの輝かしい日々を思い出すように書類に書かれた名前を見詰めた。
「おっさんいるか?」
随分とその書類を眺めていたようで黄昏の訪れていた室内に青年の声がノックと共に訪れた。
慌ててランプに火をつけて
「おっさんなら居るわよ」
いくら考えても書類上の人物とかけ離れた威厳もクソも何もあったものじゃない口調で答えれば扉は勝手に開く。
「なんだ?こんな真っ暗な部屋で」
眩い光源に溢れた廊下から入ればそう捕らえられても仕方がない。
しかし、暗闇になれたこの目にはくわえられたランプの明かりでも十分に明るく
「ちょっとお片づけしていたんだけど、いつのまにこんなに暗くなっちゃったのかしらね?」
とぼけた口調で言いながら何気に書類を封筒に片付ける。
そのまままた抽斗の、その僅かな隙間へと落とすように奥へと片付ければ抽斗の底よりも僅かに深い所に落ち着く音を聞いた。
下手に隠すよりも見つけにくい、片付けた本人でさえ忘れていた場所へともう一度眠りについてもらう事にした。
コツコツと闇に混じりながらの漆黒をまとう青年がやってきて
「で、お片づけは終わったのか?」
下からの光源を受ける顔は怪しいほどに美しく見惚れるほどに艶かしい。
だが所詮は男だ。
残念だと思う気持ちを悟られないように席を立ち上がり机を回る。
僅かに高い視線を見上げ
「まあ、もういいんじゃないかしら?」
「それでいいのかよ」
苦笑を隠さない声で俺を見下ろす。
「で、御用は?」
「おっさんを食事に誘いに」
恭しく騎士の礼をとれば、同じように騎士の礼を返す。
「折角のお誘いお断りするわけにはまいりませんな」
騎士らしくシュヴァーンの口調で返せば、少しずつ青年も知るようになったシュヴァーンに笑みを向けていた。
火を点されたばかりのランプを消して、どれだけ時が過ぎようとも変わらない豪奢な城の廊下を抜ければまだ藍の残る夜空を見上げ、かつてより瞬く星の数が増えた夜空を見上げる。
存外、この星空を見る為に生き残ったと理由を付けても悪くないなと考えてみた自分に片側の口の端を吊り上げていた。
机の中を整理して抽斗と抽斗を囲む机の枠の間に書類が挟まっている事に気がついた。
何だろうと抽斗を抜いて引っ張り出せば古い書類をまとめておいた封筒だった。
埃を払い、中身を抜き出せば見覚えのある丁寧な文字。
記憶よりもまだくせは少なく、それがやけに年月を感じさせた。
書類の最初に書かれた名前を指で辿る。
10年前に与えられた名前。
死んだ心とは別に生き残った体のために与えられた人物。
ぱらりと書類を捲ればシュヴァーンを形作る紙上の人物の履歴。
平民、生き残り、英雄。
アレクセイが求めていた夢の人物がそこに居た。
こんな立派な人物居るわけないのにと10年ぶりに見る書類に感情もなく視線を落とす。
この命は1/1000の上に紛い物の生としてあるの。
いや、もう一人いたのだが、こんな生を与えられるくらいならあの戦争で死んでいた事を彼だって望んだだろう。
今では本当に最後の生き残りとなってしまったが、この書類の人物にいつの間にかなりきっていた事に一人苦笑。
またぺらりと書類を捲る。
昔は文字通りの意味にしか捉えて疑問も何も持たなかったが今こうやって過去を振り返るように読み返してみると何故か口元が緩む。
あまりに出来すぎたこんな人物いないだろうと、震える肩にいつの間にか浮ぶ涙。人がいないのが判っていても憚られる内容に腹筋がふるふるとわなないて痛いくらいだ。
俺はこんな人物になりきっていたのかと思う反面こんな出来すぎた人物胡散臭くて俺様ついていけないわと思うも、改めてそれが自分なのだと気づいて一人で赤面したり。
確かにこんな人物だったら夢を抱き目標目指す真面目な若者、例えばフレンが良い例だ。シュヴァーンに憧れても仕方がないと当の本人は今だ夢どころか目標を見つけ出せずに足踏み状態の俺をどんな風に思っているのか申し訳なくて尋ねる事もできない。
ぺらぺらと捲り最後の一枚を読み終える。
かつて記憶したとおりの文字を目で追いながらまた最初の懐かしいアレクセイの署名に無言で見詰める。
「大将、あんた趣味悪いわよ」
アレクセイの理想を描いた人物。
夢の最後の一欠片になった俺をどんな目で見ていたかなんてもう思い出す事も出来ない。
だけどだ。
こんな人物がもし本物が居たとしたらだ。俺だって何処までもついて行っただろう。
ダミュロンにとってのキャナリのように。
眩しいほどの輝かしい日々を思い出すように書類に書かれた名前を見詰めた。
「おっさんいるか?」
随分とその書類を眺めていたようで黄昏の訪れていた室内に青年の声がノックと共に訪れた。
慌ててランプに火をつけて
「おっさんなら居るわよ」
いくら考えても書類上の人物とかけ離れた威厳もクソも何もあったものじゃない口調で答えれば扉は勝手に開く。
「なんだ?こんな真っ暗な部屋で」
眩い光源に溢れた廊下から入ればそう捕らえられても仕方がない。
しかし、暗闇になれたこの目にはくわえられたランプの明かりでも十分に明るく
「ちょっとお片づけしていたんだけど、いつのまにこんなに暗くなっちゃったのかしらね?」
とぼけた口調で言いながら何気に書類を封筒に片付ける。
そのまままた抽斗の、その僅かな隙間へと落とすように奥へと片付ければ抽斗の底よりも僅かに深い所に落ち着く音を聞いた。
下手に隠すよりも見つけにくい、片付けた本人でさえ忘れていた場所へともう一度眠りについてもらう事にした。
コツコツと闇に混じりながらの漆黒をまとう青年がやってきて
「で、お片づけは終わったのか?」
下からの光源を受ける顔は怪しいほどに美しく見惚れるほどに艶かしい。
だが所詮は男だ。
残念だと思う気持ちを悟られないように席を立ち上がり机を回る。
僅かに高い視線を見上げ
「まあ、もういいんじゃないかしら?」
「それでいいのかよ」
苦笑を隠さない声で俺を見下ろす。
「で、御用は?」
「おっさんを食事に誘いに」
恭しく騎士の礼をとれば、同じように騎士の礼を返す。
「折角のお誘いお断りするわけにはまいりませんな」
騎士らしくシュヴァーンの口調で返せば、少しずつ青年も知るようになったシュヴァーンに笑みを向けていた。
火を点されたばかりのランプを消して、どれだけ時が過ぎようとも変わらない豪奢な城の廊下を抜ければまだ藍の残る夜空を見上げ、かつてより瞬く星の数が増えた夜空を見上げる。
存外、この星空を見る為に生き残ったと理由を付けても悪くないなと考えてみた自分に片側の口の端を吊り上げていた。
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