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下町で遭遇したシュヴァーンとユーリの小話。
シュヴァーンだってちゃんと仕事しています。
デスクワークだけではありません。
部下は空気が読める人が一番ですね。
シュヴァーンだってちゃんと仕事しています。
デスクワークだけではありません。
部下は空気が読める人が一番ですね。
珍しい事にシュヴァーンを先頭にシュヴァーン隊が下町を歩いていた。
騎士にはあまりいい印象を持たない下町の住民だが、大半が平民で構成されている平民出身の隊長は悪い印象を抱いている者は少ない。
だが問題は隊長、しかも主席が下町を歩いている事事態目を疑わなくてはならない。
下町巡回なんて下っ端のまだどこの隊にも割り振りされない奴等がする仕事だ。
あまりの珍事に思わずかつてこの下町の水源でもあった噴水の所まで走れば、俺に気付いたシュヴァーンは足を止めて振り向いてくれた。
「どうした?」
「いや、それは俺のセリフ」
珍しくルブラン以外の奴を引き連れているおっさ・・・シュヴァーンの背後を物珍しそうに見れば、ああと合点が言ったように小さく頷く。
「ルブラン小隊なら今はデイドン砦に出かけている」
仲がいいんだなと笑うおっさんをどこがだと睨めば、俺に難癖をつけては追いましている事実を知る下町の住民はあからさまに笑って見せる。
当然シュヴァーンもそれを承知で真顔で言うのだからレイヴンと同じで性質が悪い。
それはさておき
「シュヴァーン隊長主席がこんな埃っぽい下町を通るとは、何かあったのか?」
聞けば
「いつもの魔物退治に借り出されただけだ。魔物を追って気が付けばこっちの門まで来ていたからな。城までの近道でここを通っただけだ」
またぐるりと貴族街の方の門まで回るのは面倒だとのボヤキには確かにと頷いてしまう。
「じゃあ貴族街の方で待って居る奴らが居るんじゃねえ?」
「あっちは団長が指揮をしている。こっちに分かれる時にそのまま上がる事を行ってるから大丈夫だろう」
だからと言って近道って言うのもなんだかおかしなもんだなと思えば、シュヴァーンの後ろに立っていた見習い騎士がガチャンと派手な音を立てて尻餅をついていた。
なんだと振り向けば蒼白な顔色にシュヴァーンは膝をついて様子を見る。
「怪我人か?」
「いや、怪我は見当たらない」
じゃあなんだと問う前にシュヴァーンのすぐ後ろについていた男がその体調の悪そうな男を背負って先に城へ戻りますと断わって残りの騎士を引き連れて行ってしまった。
「ひょっとしてすごい邪魔だった俺?」
「いや、何事も初めてには色々な事が起きるものだろ」
小さく溜息を零した男は彼は初めての実戦だと打ち明け血にでも酔ったのだろうとこれが原因で騎士を辞めなければよいのだけどと付け加えた。
「そんな事で辞めるもんか?」
「三ヶ月。それだけもてば色々と慣れる事が出来るだろう・・・」
と言った翡翠の瞳は俺を見て
「すまない」
「そこで謝れると俺としては非常に居心地が悪いんだけど」
今更ごまかす事の出来ない過去に苦笑して少し困った顔にほんのりと血糊がついていた事に気が付いた。
「ちょっと待ってろ」
かつては噴水、今は井戸へと変わった水場へと足を向けてポケットからハンカチを取り出す。
ポンプのレバーを何度か押せば澄み切った冷たい水がコポッと音を立てて溢れ出したその先でハンカチを水に浸す。
固く絞って何を始めたと問うシュヴァーンの顔へと押し付けてた。
「またさっきの奴みたいにぶっ倒れる奴が出るぜ」
「だが、そのハンカチを汚すまでの事では無いだろう」
朱の線が走る真っ白なハンカチを受け取る。
「青年がハンカチを持ってるというのは驚きだが・・・」
言って少し建物がひしめき合う狭い下町の空を見上げ
「汚してしまったお詫びに今度代りのハンカチでも贈ろう」
「別にいらねーって」
そう答える事が判っていても言わざるをえなかったという男に代りに今度シュヴァーンのおごりで飲みに行こうぜとまとめてみた。
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