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拍手ありがとうございます!
珍しくおっさんのターン。
アダルトで攻めてみませた。



花韻 07


思わず同情で拾った青年は想像以上にお得な物件だった。
いつの間にか友人達さえ寄り付かなくなった家を瞬く間に綺麗に片付けた挙句、一見細身に見えてもそこそこ締った筋肉をまとう腕からは驚くような美味しいご飯を作り出す腕前に苦労を覚えれば良いお年頃の子供に破格のアルバイト料を払っても確保したいと思うのは、その料理を食べれば誰もが思うことだろう。
高校生なのに自炊生活で鍛えたと言う腕前はエコ料理に分類されるものかもしれないが、コンビニ弁当と外食の味に麻痺した味覚にはとにかく優しいものだった。
夜中の食事と言う事に気を使ってくれてかお肉や油物を欲しがるようなお年頃なのに野菜を中心とした胃袋に優しい献立にこの子を産んでくれたお父さんお母さん育ててくれた施設の人ありがとうと感謝した。
やがて約束の一ヶ月を向かえようとする時になって焦った。
こんなにも美味しいご飯を作ってくれる子がもうすぐ居なくなる!!!
自分から設定した期限とは言え終了目前の日程をカレンダーで確認しながら会社で一人成年の作ってくれたお弁当をつつきながら涙を流していた。
いつの間にか愛妻弁当と言われるようになった冷めても美味しいお弁当を口に運びながら向かいに座る大学からの友人のキャナリは溜息を零す。
「あのね、お弁当を食べるか泣くかどちらかにしてちょうだい」
呆れた声に彼女の背後に位置どるイエガーも呆れながら
「鼻水ぐらい拭きなさい」
なんてポケットティッシュを投げつけてくれた。
ありがたく貰って二人に背を向けて鼻をかむも
「だってもうすぐユーリちゃんおうち出てっちゃうんだもの」
美味しいご飯が食べれなくなるこの悲しみ判る?なんて言うもイエガーはあっさり
「キャナリのご飯は美味しいからな。俺は問題がない」
この会社唯一の妻帯者はしれっと妻の自慢をして、彼女の作るお弁当を美味しそうにかみしていた」
「そんなにも美味しいんだったら卒業までアルバイト続けてもらえば良いじゃないの?」
尤もな言葉に
「青年アルバイト情報誌買ってたし履歴書もどこか出してたみたいだし。
 バイトが決まっちゃえば俺のお守なんて必要ないんだし」
思わず愚痴ってしまう口調にキャナリはもう一つ溜息を吐き出せば会社の入り口がノックもなく開く。
そこからこの会社の社長と言うべき歴史の短い社だが、確実に周囲に影響を及ぼす事の出来る男アレクセイがガタイの良い男をつれてやってきた。
「お帰りなさい」
キャナリがさっと立ち上がり二人にお茶を入れる。
少人数即戦力と言う会社の規模に対して明らかに人数の少なすぎる会社に時々応援に駆けつけてくれるのは大学当時の教員で短い間同僚だった男がよお!と軽い挨拶と共に現れた。
「あら~?ナイレンまで呼び出されたの」
いつもなら月末に来るはずなのに・・・と考えて、もうすぐユーリのバイト期間の終わる月末だった事を思い出して自然に涙がこぼれた。
「ど、どうしたんだ?」
いきなりの涙にナイレン所か動揺なんて滅多に見せないアレクセイさえも避けるように遠回りして来客用の椅子に座る。
「ほら、あなたの所のユーリのバイト期間がもうすぐ終わるってんで寂しがってるんですよ」
「ああ、あいつ元気にしてるか・・・」
と言う質問に俺はこんなにも寂しい思いをしているのにユーリの元気な顔を思い出してまた涙が溢れ出したのを見てナイレンは言葉に詰まった。
「あああ、もう。折角落ち着いたと思ったのに」
「ほら、弁当を食べたなら仕事でもして寂しさを紛らわしなさい」
米粒ひとつ残さず食べた弁当を片付けさせればアレクセイは封筒に入った書類から一枚の紙を取り出して与えた。
思わずキャナリとイエガーが一緒に覗き込めば学会の案内状だった。
開催会場や参加者の名前にアレクセイを二人で睨めば
「そろそろシュバーンも立ち直っていい時期だろう」
何のためにクソ忙しいのに毎週バイトに行かせてるのかとそれが当然と言うようにふんぞり返って茶を啜るアレクセイに三組の非難の視線が向けられた。
「ですが大将、シュヴァーンはあの盗作騒ぎに巻き込まれて・・・」
「二度と学会に係わりたくないのは知ってるでしょ」
「あの時の騒動、シュヴァーンの潔白を証明する為にどれだけ大事になったか忘れてませんよね」
言い詰められるもアレクセイはふんと鼻を鳴らし
「シュヴァーンの実力さえあればすぐに判ることだった。
 寧ろ盗んだ相手が悪すぎたなと同情したぐらいだが?」
いつの間にかなくなったお茶にもういっぱいと当然と言う顔でキャナリにお替りを所望。
しかたがないと言うように急須にお湯を直接注いだものを空になった茶碗に淹れればはしたないと言うような視線が向けられるも今のキャナリ様には無駄な訴えだった。
シュヴァーンの無実は相手に白状させて学会の追放とシュヴァーンの研究で再度学会に認知させて収まった。
「研究以外にとりえのない男にレイヴンなんてふざけた名前でこんな所で燻らせるよりも物理学会の発展に貢献させるのが我々の役目では無いかな」
訊ねる言葉に思わず反論できない。
「なんせシュヴァーンは宝くじの特賞を当てる以上の確率で研究の成果を残している。
 優秀な人材は山ほど居る中、役に立つ研究を残した学者はどれだけいるか。
 彼の持つ特許の数を見れば判るだろう。
 シュヴァーンが恐ろしく幸運に恵まれた人間と言うことかを」
言うも当の人物はのこりすくないひづけのかれんだーと睨めっこして涙を流していた。
とても幸運の下に生まれたような人間には見えないと誰ともなくそっと目を反らせばアレクセイは立ち上がる。
「ふん、いつまでも女々しい事を。
 そのユーリとやらがお前の許に居られるように私に任せろ」
ふふんと鼻を鳴らすアレクセイに何をするつもりですかと4対の瞳が向けられて
「何。彼がバイト先を見つけられなければ言いだけの話しだろ?」
どうするつもりですかなんて恐ろしくて聞けない。
アレクセイの謎の人脈は今だ把握する事が出来ず、ただナイレンがぎゅっとシュヴァーンの肩を掴む。
「シュヴァーンの餌係にあいつを育てたつもりは無いが、アレクセイに目をつけられた以上なにかあった時はユーリの面倒を見てくれ」
「ユーリのご飯が食べれるなら俺様なんでもします!」
どう言う基準かは判らないが確かな約束がそこに結ばれた。
そして、こんなやり取りがあった事を知らない青年は何故かアルバイトを見つけることの出来ない事実に一人焦っていた事を誰も知らない。

なんて事があって、気がつけばもうすぐ年も明けようとしていた。
年末はどうするかとユーリに聞かれて家族は既に他界した事を告げれば少し気まずそうな顔でユーリのちいさな謝罪を聞いた。
遅れた勉学の時間を取り戻そうとするようにずっとテキストを開いていたユーリだったが
「じゃあ毎年正月は何してんだ?」
その質問に
「大体寝てるわよ」
何処かのホテルのお節を注文して、テレビ見ながら寝正月。
毎年定番の生活はどうやら今年は少し彩が違うようだ。
その証拠に今も台所ではことことと鍋の蓋が小さく踊り、圧力釜がしゅーしゅーと蒸気を吐き出している。
今年も何所かで注文しようかとユーリに言って見せるも折角だからとユーリが手作りのお節を作ってくれると言う。
思わず感動して涙が溢れそうになった。
「で、会社の方は新年会とかやらないのか?大将って人そう言うイベント好きそうだろ?」
確かにイベント大好きと言うかイベントで仕切るのが大好きな人だが
「大将は今頃常夏の何所かで太陽を満喫してるわよ。
 クソ寒い所にいても休まらないって言う主張してるからね」
海外にいくつ別荘を持ってるかしらないが毎年行き先が違うのだから何所にいるかなんて予想も付かないし休みまで仕事の事を考えたくない。
コタツに丸まり真昼間から熱燗を啜る以上の幸せ。すぐ横で稼動するパソコンには年明け早々のテスト問題の製作中だが、キッチンを眺めるようにカウンターで勉強しているユーリにはまったく見えないだろう。
と言うか、プライバシーを尊重してか同じ部屋で仕事をしていてもまったく覗こうとしないその精神を尊敬する。
俺なら間違いなく好奇心を止められないのになと感心しながらデータを保存する。
「ユーリは孤児院の方に行くの?」
正月は一人かな?と少し寂しい気もするが、その為の大量のお節作りだろう。
自身も忙しいのに気を使ってくれているのなら我慢しなくてはとあまりはかどらないテスト製作にキーボードを人差し指一本で操作しながら何気なく聞く。
「俺?俺は正月に挨拶しに行くだけでさっさと戻ってくるぜ。
 なんせ年明けの実力テストも何とかしないといけないからな」
一応推薦はもぎ取った物のまだぎりぎりの所にいるユーリには正月を休むなんて時間は無いらしい。
「ああ、それとおっさん悪いんだけど・・・」
何処か歯切れの悪い言葉の切り出しになんだと思っていれば
「年明けたらフレン来てもいいかな?」
「泊まりで?別に構わないわよ」
既に客間はそのフレン君の個室と言っても間違いじゃないくらい彼が使っていたが、律儀な彼は私物どころか自分が使用したと言う痕跡を残さない。
真面目ねぇなんて、パジャマと着替えぐらい置いていけば良いのにと思っていたが、ユーリの服を着まわしていると言うのをつい最近知った吃驚だ。
神経質そうで案外図太いわねと感心するもナイレンの所の施設で育っていれば図太くもなるわなと納得できた。
賑やかな正月になりそうだと想像していれば
「おっさん味見してくれ」
艶やかにふっくらと炊き上げられた黒豆の甘い香りが鼻腔を擽り、正面から差し出された小鉢を受け取る。
一緒についてきた匙で口へと運べば
「おいひい」
あら熱に包まれてつい変な発音になるもユーリは楽しそうに笑う。
「甘いの苦手だけど、これぐらいなら全然気にならないわぁ」
もう一度、小さな豆に含まれる熱に気をつけながら口へと運び、ゆっくりと噛み砕きながら少しぬるまった熱燗で流し込む。
「甘さはおっさん好みに合わせたからな」
「青年良いお嫁さんになるわよ」
「俺が嫁になってどうすんだよ」
言って笑うユーリにおっさん悪魔の下で頑張るからずっとおっさんのためにご飯作ってくれないかしら。
なんて続ける事はできず
「それもそうね」
なんて当たり障りのない返答のまま新たに開いた別のフォルダから仕事のファイルをあけた。

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