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拍手ありがとうございます!
そして例によってお返事遅れててすみません。もう少しお待ち下さい。

月だけが知っていた
小説ネタでアレクセイとダミュロン。
続は暗い話しになってる上に途中書き。
なのでライトでポップなうちに終わらせてみました。
ポップって何だろう・・・




月だけが知っていた



アレクセイは執務の合間を縫ってキャナリ隊の訓練場へと足を向けた。
先日小隊長に任命した彼女が早速キャナリ隊に相応しい人材を見つけたと報告を受けて隊の変更届の書類を用意した。
そしてその彼を副官に任命したと聞いた時は驚いた。
なんせ入隊して僅か数ヶ月しか経っていない者に役職を与えるのだ。
大抜擢もいい所だと心配する。
前から居た隊員にどう思われるかもさることながら、彼女の恋人も心配の種の一つ。
折角築きあげた理想の騎士達がまたばらばらになるのでは無いかと心配だったが、彼女は大丈夫と笑うだけ。
そうは言われても心配せずには居られない事態に半ば仕事そっちのけで訓練場へと来たのだが・・・

訓練場へと付いたとたん目の前をゴロゴロと一人の若者が転がってきた。
見事なまでにゴロゴロと、そして足元に来たとたんパタンと広がって止まった。
何事かと思うも小隊最年長のヒスームが剣を掲げて笑っていた。
足元で伸びていた彼は別に気を失っているようではなく突然ムクリと立ち上がったかと思えばキャナリ隊の象徴でもある変形弓の剣を弓へと一呼吸で姿を変えて矢筒から二本の矢を取り出し喰らえっ!と叫びながら矢を放っていた。
二本同時に矢を放つなんて事事態驚いたが更に驚いたのはその二本の矢は正確にヒスームの急所と死角を狙うも、彼は大きく逃げる事で辛うじて免れる事が出来た。
これが入団して数ヶ月の者の実力かと驚く反面、まだ何処か幼さの残る顔立ちに目が留まった。
ファリハイドの貴族の息子だと聞いていたが、埃まみれになるのも姿が乱れる事にも頓着せず、頬に土ぼこりをつけながらその奇襲作戦にも似た攻撃が僅かながらもヒスームを驚かせた事に無邪気に笑って見せていた。

「・・・閣下」

何度か呼ばれる声に気がついて、キャナリが私を見上げている事に気が付いた。
「いかがなされましたか?」
小首傾げる彼女になんでもないと言って
「彼が例の副官かな?」
私と並んで視線の先で訓練なのに危険を帯びた反撃にヒスームに攻められている彼を見てキャナリは小さな声ではいと答えていた。
「随分と元気の良い」
「彼のとりえですから」
ヒスームの手から何とか逃げ出した彼は手にした変化弓を手元も見ず弓から剣に変形させて再びヒスームに挑みかかっていた。
何度か剣を結んだ後ヒスームの一撃にまた吹っ飛ぶ事になった彼はゴロゴロと景気良く足元まで転がってきて仰向けにぱたりと止まった。
仔犬がじゃれて転がるような姿に大丈夫かなと覗き見れば、ぱちっと開いた翡翠にも似た瞳が私とキャナリを捕らえ驚いたように見開く。
それから少し視線がずれて口角が上がり
「ピンクか。意外とかわいい・・・」
「くたばれっ!!!」
とっさに横に転がってキャナリの一撃をかわした身の軽さに驚くよりも、見た事のない形相で変形弓を連射するキャナリの態度に思わず一歩下がる。
暫らくもしないうちにキャナリの放った矢で壁に縫いとめられた彼を誰ともなく笑い、気が納まったのか勝利の笑みを零した彼女に皆が賞賛の拍手を送っていた。
「随分と・・・隊の雰囲気が変わったな」
「そうでしょうか?」
さっきの出来事どころか、壁に縫いとめられた彼さえ一切なかった事にした彼女の微笑みに何もなかった事にした。
「まあいい。訓練を続けなさい」
「はい」
敬礼してまた訓練へと戻った彼女を見送り、この日はそのまま執務室へと戻った。

それから数日後。
随分と夜遅い時間にキャナリ隊の訓練場が見える廊下を歩いていた時だった。
風を切る音に気がついて足を止めれば一人剣を振るう姿があった。
他に誰も居ないのかと思いながらも、感心だと思い、自室へと向うだけの予定の中に彼の元へと予定を一つ書き加えた。
小さな覇気と空を切る音。
どれだけ続けていたのかしらないが、夜の澄んだ空気の中、軽装を解き、隊服まで脱ぎ捨てていた彼の肌は汗ばんでいた。
近づく足音さえ気付かないというように一心不乱に剣を振り下ろしていたかと思ったらその剣先が突如目の前に現れた。
鼻先でピタリと止めてみせた腕の良さに驚きつつ、呼吸一つ置いて突如驚いた顔が慌てて剣を背中に隠して、敬礼を取る。
「失礼いたしました!」
暗闇でも真っ青な顔色の彼から剣を取り上げればキャナリ隊の象徴でもある変形弓。
支給品にもかかわらずよく使い込まれたとあって私の手には合わなくなってちょっとおどろく。
「いつもこんな時間まで訓練を?」
聞けば彼は敬礼したままはいとだけ短く答え
「故郷でも訓練はしていたつもりでしたが、ここではまったく通用しないから・・・」
一人訓練をしていたという。
騎士団でもこんなにも訓練する者はあまり居らず、驚きの中キャナリ隊に相応しい人物がよく来てくれた物だと関心さえしてしまう。
「立派な心がけだ」
言って剣を返しながら
「けど、訓練するのも立派だが、今日はもう休みなさい」
言って月を指させば、まさかこんな遅い時間になっているとは思わなかったのだろう。
驚く顔に苦笑を零せば、その顔がみるまに赤く染まっていく。
「如何した?」
訊ねるも、赤い顔を隠すようにそっぽを向き
「な、何でもありません」
どうやら教えてはくれないようだ。
まあ、別にそんな事はいい。
「ダミュロンだったな」
「はっ」
夜独特の空気の中、緊張を纏う小気味良い返事に小さく笑みを浮べ
「名前を覚えておく」
短く切り揃えた何処か癖のある髪をくしゃくしゃと混ぜ、あわわと驚く声に笑い声を零しながらその場を去った。

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