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ダブルセカンドを書いてる途中で息抜きに書いていたと思ったのですが・・・
存在すら忘れていたようで今頃こっそりとアップ。
フレン→シュヴァーン風味




僕の恋人



久振りにザーフィアス城にやってきたレイヴンはなにやら城の入り口が騒がしい事に気がついた。
門の所にはフレンがいて、取り巻きのソディアを始めとしたフレン隊の皆さんと元シュヴァーン隊の皆さんがなにやらダンゴ状態で固まっていた。
軽装備の所を見ると別に魔物が出たというわけでは無いようだ。
尤も、俺が今日この城に来る事は事前に連絡をしてあるために元シュヴァーン隊の皆様方は単なるお出迎えだろう。
そこにフレンがいて、今や団長の彼が一人で行動する事は許されず・・・といった所だろう。
ちょっと考えれば至極当然の光景として長い階段の上で屯しているフレンに声をかける。

「ひょっとして団長さん自らお出迎え?」

おっさんも偉くなったわぁと感慨深げに伸びかけのひげに指先を滑らせれば

「レイヴンさん!」

彼は下りと言うのも考えずに一段置きにおっさんの所に一直線に駆け下りてきた。

「慌てると転ぶわよ」

転ぶ事は無いだろうけど一応声をかけておけばイヌのシッポのアタッチメントでもつけておけばはちきれんばかりに振り回さんとばかりの笑顔にかつての旅の間に見たその光景を思い出せば口角が上がってしまうのは仕方がない。
一気に階段を駆け下りて目の前で息も切らさず止まれば場所柄一段だけ高い所に立つフレンは、女の子が見たらそれだけで恋してしまうのでは無いかと言うような蕩ける笑顔をおっさんに向ける。
残念ながらおっさんは男なので恋には落ちないが、久しぶりの再会はかつて俺に懐いていた彼には十分過ぎる朗報だったのようだ。

「レイヴンさん」

フレンはもう一度俺の名前を呼んで

「結婚してください!」
「断わるっ!」
「そんな・・・」

間髪いれずの返答にフレンはよろめき泣きそうだ。
いや、泣きたいのは俺の方だ。
何が悲しくて男と結婚しないといけないのだ。
いくら見目良し、将来性良し、財政力有望株としてもだ。
非生産的な結婚に何の意味があるのかと、即行で拒否した俺を自分で誉めた。
だが敵はフレンだけでは無い。
例えばその後ろについてくるフレン隊ご一行とか、元シュヴァーン隊ご一行とか。

「レイヴン殿!フレン団長の何処にご不満がっ!」

まず噛み付いて来たのはもうお約束のソディア。
ご不満がとか言われたけど

「不満以前にもうちょっと常識的なところから考えようよ」

男同士の結婚は帝国の現法と比べても認める言葉は何処にもない。

「大体フレン君ならよりどりみどりでしょ?なんでこんな、しかもギルドのおっさんをご指名なのよ」

人生最大の告白を断わられたと言わんばかりの顔のフレンは俺を見て実はと切り出した。

「議会側から言われたのですが、ここ数十年帝国騎士団の団長と言う者は独身者ばかりらしいのです」

20そこそこのフレンはともかく、アレクセイもドレイクも独身を貫き通した。直接は俺も会った事無いがその前の団長もその前も独身だったと聞いた事がある。

「で?」

先を促せばフレンは少しだけ視線を反らせ

「議会側は騎士団の団長たるもの妻も持たずに仕事ばかりでは怪しいジンクスが付きまとい聞こえが悪いと言われまして」

なんじゃそら。
思わずポカンと口が開いてしまう。

「その証拠ではありませんが、先日から団長にこの様な見合い写真を送りつけられて騎士団としても業務を妨害されて困り果てていると言うわけです」

とルブラン。
フレン隊の皆様がなにやら持っていたものを見せてもらえばどれもこれも何処かの貴族の娘ばかり。
年の頃はカロル少年ぐらいから、フレンと同年齢ぐらい。少しちょっと年上までと幅広く、名前を見るからに貴族は貴族でも評議会でも見た事あるような、そんな品ぞろえだった。

「つまり、平民出身に貴族の地位を与えると言う口実に騎士団の掌握なわけね」

ふーんと、豪奢なドレスにこれでもかと贅を凝らした宝石の数々。決して一人では結い上げる事の出来ない美しい髪形と、元はどうなんだろうかと疑わずには居られない厚化粧。いやいや、これも貴族のたしなみ。多少の不備には目を瞑り

「まだまだ団長としても、一人の騎士としても未熟な為に断わらせていただいていたのですが」
「だんだんネタも尽きるし、向うも納得しないわな」

フレンには悪いが所詮は他人事だ。くつくつと笑い声を零してしまう。

「あまりにも見ていられなくて我々もついフレン団長の手助けをしてしまったのですよ」
「手助け?見合い写真を捨てるとか?」

言えばフレン隊の方々は何故かみんな視線を外す。

「団長には思われている方が居られると」

ソディアの言葉に誰ともなく溜息を付く。
確かに断わるには一番いい方法かもしれないが、権力を目の前に散らつかされた人間に意味があるとは思えない。

「それで我々は考えたのです」
「団長が尊敬をし、評議会側も納得できるような人物を」
「評議会側も諦めのつく人物を・・・って?」

誰ともなく力強く頷く光景に渇いた口でコクンと息を飲む。

「結婚とは言わず是非フレン団長の恋人に!」
「そ、そ、そ、そんなのソディアちゃんがやりなさいよ!副官でしょ!」

彼女は真っ先に出たご氏名に何処か嬉しそうに顔を赤らめながらも

「私の家では利権問題が発生します!」

フレンの目指す騎士団である為には一つ、まずフレン自身が貴族ではない事が前提となる。よって、彼女の家はあまり裕福では無い物の歴史と家柄だけは良い所のお嬢さんだ。お家復興と彼女のご両親はここぞとばかり大喜びだろう。

「そのようなわけがありまして」

何故か頬を赤らめたフレンが改まって俺の前に立つ。

「法の前に結婚が成り立たないとしても、レイヴンさんなら騎士団での実績も人としての成りも申し分ないのです」

掛け値なしの誉め言葉なのに嬉しくないのは何故だろう。
聞いてはいけないと思うのはどうしてだろう。
ははは、と、頬を引き攣らせながら逃げ腰なのは、たぶん次のセリフを予測できるから。

「騎士団の為にも僕の恋人になって公表させてください!」

逃げ場は無いといわんばかりに周囲も背後も囲まれた俺は・・・

「とりあえず一度冷静になって、どっかで座りながら話しようや」

今までこれ以上とないくらい頭の中で逃げる手筈の算段をしてみるも

「一つの任務と思ってどうか」

ぎゅっどころかがっしりと手をに握られてしまった。
挙句微笑まれた笑顔の眩しい事・・・

「あ、あう・・・」

そんな眩しい笑顔をおっさんになんか向けないで欲しい。

「我々騎士団の為にも!」
「レイヴン殿なら団長殿をお救いになられます!」
「是非!」
「是非!!」

周囲の大合唱にいくらお人よしと言われようもにげる事はもう無理だ。

「じゃ、じゃあねぇ・・・
 シュヴァーンの名前なら使ってもいいわよ」

バクティオンの神殿の最奥に眠る名前を条件に妥協すればそれでも十分なのかキラキラと光るフレンの瞳。
そんな目をおっさんに向けないで欲しいわと思う間もなく

「ありがとうございますっ!」

フレンを始めとしたありがとうの大合唱。
気のせいか城に続く階段の最上段に嬢ちゃんと天然陛下が揃ってお見えになるのは幻だとありがたい。

「じゃあ、これギルドからの報告書。おっさん疲れちゃったからちょっと宿にでも戻・・・」

る?と言おうとした所で後ろから羽交い絞めをされた。
首を後ろに向けても誰か判らないが、隊服の色から言えば元シュヴァーン隊の誰かだろう。

「隊長殿、何を言っておいでです。お休みになられるなら城に隊長のお部屋がありましょう。
 団長も本日はもう勤務時間外なので、さぁ」

ルブランが元シュヴァーン隊に向ってなにやら指示をして道を作り

「お忙しいお二人が久方ぶりに再会したのですぞ。
 こう言うときはデートをするのが恋人と言うものでしょう」
「ちょ、何言っちゃってんのルブラン?!」

手足をばたつかせても外せないがたいを恨みながら

「これも任務ですシュヴァーン隊長」

さあ、と何処からかうながさられる大合唱に問答無用で運ばれる。

「レイヴンモテモテですね」
「知りませんでした。フレンにこんな奥ゆかしい恋人がいるなんて」

奥ゆかしいなんて意味なんだったっけ?と考えつつ天然皇族に見送られの次の角を曲がればフレンの私室。
ユーリが部屋に遊びに来ていて無事このピンチから脱出できることを願いつつ、カチャリと開いた部屋に漆黒の天使が居る事を切実に祈った。

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