忍者ブログ
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
アクセス解析
忍者ブログ [PR]
http://altoxxx.blog.shinobi.jp/
空に向かって手を上げて
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

拍手ありがとうございます!
ダミュロンに未だにそわそわとさせられて今ひとつ集中力切れがちですが何とか更新です。
はい。思ったよりも話が進みませんでした・・・

おっさん総受ワンダーランド。
苦手な方は見る前に逃げて!

ダブルセカンド 17



ダングレストの東側の開いた場所でキャンプをはった。
確かにこの規模を集めるにはここぐらいしかないだろうと思うも、同じように集っているギルドの連中を数えると狭いくらいだ。
ただ、目と鼻の先に彼らの本拠地がある為に、彼らはただ一時の滞在なのだろうがそれでもその中に見知った顔を見つけて何処か懐かしく思う。
先日のキャナリの家に赤ん坊を見に行ってからこういった気持ちがやけに膨らむようになった。
同じ顔がいくつもあるのに誰一人として知り合いでは無い。
それをやけに寂しいと思い、気持ちを誤魔化すために長く息を吐きながらその場に座った。
「如何しました?溜息なんてついて」
ゆっくりと目の前で止まる足は騎士の物。
呼びかけられた声には心当たりもあり、見上げながらなんでもないと言うような笑みを貼り付ける。
「我らが小隊長もレイヴン殿が最近元気がないようで心を痛めておりましたが」
予想通りの顔はフレン小隊の副官の顔。
誠実でよく気がつき、フレンを騎士として育てようと誰よりも奮闘している彼が隣に座った。
「そんなにも態度に出てたかしら?」
訊ねれば小さくもなく、大げさにもならないような何気ない調子で「はい」とだけ答えた。
「あー、やっぱり随分堪えてるのかもねぇ」
苦笑交じりに吐露すれば同情とは別の顔で
「記憶をなくされて随分経ちます。仕方ありませんよ」
ただ事実を述べる事務的な口調に励まされているのかしらと考えるも、自分の気持ちを整理するには丁度良いと折角話しかけてきてくれたのだ。甘える事にする。
「それもあるけど、記憶取り戻したら俺様にも家族とかってあるのかと思ったらちょっとね」
隣の顔が少しだけ眉間に皺がよる。
「先日キャナリ隊長とこに挨拶に行ったのよ。
 ちっさい赤ん坊が出てきてさ、何も知らない顔してみんなに囲まれてるの」
家族も居なければ子供も居ないが、それでもまったくの赤の他人でも家族的に気に掛けてあげたい子供達が俺の世界にはいる。
特に図体ばかりでかくなってこんなおっさんに何かと親切にし、無意識の寝言を繰り返す心配性がどんな状態でこの一月を暮らしているのか気にならないといえば嘘になる。
この人込みの中の中心で話しをしている同じ姿形を持つ彼を見て、最後にみたあの泣きそうな顔がいつかみたいに自分を追い詰めてなければいいがと思うが、それはそれで甘い心地良さを俺に与えてくれた。
「なんていうんだろうねぇこう言うの。ホームシック?
 帰る家が判らない所か帰り道さえ判らないなんて、いいおっさんがホント何やってんだろうねぇ」
わざとらしく盛大に溜息を吐けば慰めるように肩に手を置かれた。
言葉が見つからないと言う様に何も語りはしなかったが、酷く慰められた。
考えてみたらこっちに来てからやけに気を張り詰めていた。
向こうとはあまりに違うみんなの特にアレクセイの性格に戸惑ったりして慣れるにも随分かかったし、何よりも記憶がないからと親切にしてもらっている以上最後まで騙し通さなくてはならない後ろめたさが追い討ちをかける。
いっその事何もかもぶちまけてしまいたいが、優しい彼らにもし帰らないでくれと懇願されたら・・・流されやすい俺としては帰り道を探す事を諦め、ここに腰をすえてしまうのだろう。って、さすがにまずいか?
「それならそれでそろそろ騎士団に腰をすえてみませんか?」
「おや?勧誘の話だったのかい」
片方の目をちょいと大きく開いて訊ねれば、フレンの腹心の部下は別にまったく企んでいませんと言うような策士の顔で微笑んでいた。
「フレン小隊はあなたのような人を求めていますので」
「ははっ、そりゃどうも」
どうとでも取れる曖昧な答えで返してその後あまり熱心では無い勧誘を暇つぶしに聞いて、こっちの世界で出来たあまり多いとはいえない初対面の友人と時間を潰していた。
暫らくもしないうちだ。
彼がいきなり立ち上がったかと思えば
「あんた、まだ居たの」
何処か冷たい口調なのに見下ろす視線はそっぽ向いていた。
「おんや?どうしてここに」
アレクセイの養女が仁王立ちで立っていた。
一応団長閣下の娘と言う事で副官殿は敬礼をしているのだろうが、俺はここの騎士団じゃないしねと何も改めず、ただ話し難さも手伝って立ち上がり、尻についた埃を叩き落とした。
「決まってるでしょ。この原因の調査よ」
で、あんたは?と言いたげな視線に
「俺様は魔物退治の頭数に入れてもらったの」
すごいでしょと笑えば
「おじさまこんにちは」
と、ジュディスちゃんの声。
お淑やかとか慎み深いとか深窓の令嬢のイメージがあったけどこんな人込みの中にもこれるのねと嬉紛れに抱きつこうと両手を広げて
「ジュディスちゃ~ん、おっさんに会いに来てくれたのぉっ?!」
振り向けばイカがそこに居た。
じゃなくてだ。
いつぞよかに見た真っ白の鎧を頭からスッポリと被って、これじゃあ何処の誰だか判らない。
って言うよりも
「ひょっとして人見知り?」
「ジュディスは社交的ですよ」
クリティア族の中ではと小声で付け足した声はエステリーゼの物。
「おやおや?姫様がこんな所まで」
相変らず行儀の良い彼女はちょこんと頭を下げて挨拶し
「アレクセイがリタ達のそばに居る事を約束できるならってついてきました」
やけに力説する嬢ちゃんにフルフェイスの兜のなかから少しくぐもった声が付け加える。
「エステリーゼはリタの仕事のお手伝いするのが大好きなの」
ふふっと笑って見せるもさすがにその姿で素直に可愛いとは言えない。
隣の副官も唖然としていたが、
「所でアレクセイ何処に居るか知らない?こんだけ人が多いと見つからないったらありゃしない」
苛立たち気に爪先が何度も地面を叩くのを見て副官殿をちらりと見る。
「アレクセイ団長ならあちらに」
彼に案内を任せれば俺も一緒についていく。
そろそろ話しかけても構わないだろうと人込みをかき分けながら進めば隣を歩いていたリタが俺を見上げる。
「ねぇ、あんたいつまで居るのよ」
睨み上げる視線の鋭さは毛を逆立たせて威嚇する子猫を彷彿させる。
本人は真剣だろうが俺から見たらまだまだ可愛いもの。
顎の無精ひげを撫でながら
「そうねぇ。記憶が戻り次第出て行こうとは思うんだけど、これがさーっぱり。
 なんか戻りそうな方法知らない?」
ウインク一つサービス加えて訊ねれば、胡散臭そうな視線で少し黙り込み、本職じゃないからなんともいえないけど前置きをおく。
「オーソドックスに記憶をなくした時の状態になれば戻るんじゃないの?」
無責任ともいえる声色であさっての方向を見ながらご教授下さった。
「記憶をなくした時の状態ねぇ」
無理だ。今度アレをやったら絶対死ぬ。
運良くすぐ側に人が居たから助かった物の、もう二度と死にたくないし俺様の命は凛々の明星の物だ。
確たる保証がないとか言う以前にそれで何とかなる問題じゃないだろうと冷や汗を流しながら空笑だけが零れ落ちた。

拍手[14回]

PR
"椎名" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY SHINOBI.JP @ SAMURAI FACTORY INC.