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レイヴンではなくシュヴァーンの時とユーリの小話。
フレンが尊敬するシュヴァーンと会って色々驚けばいい。
そんなお話です?





ザーフィアス城の門をくぐり、シュヴァーン隊の詰め所へと向う。
ユニオン本部から預かった手紙を持って来るのが仕事で、先にフレンに連絡を入れておいたおかげで通り過ぎる騎士達に不審者扱いされずに済んだ。
尤も、フレンのおかげでしょっちゅう城へと顔を出しているせいかも知れないが、一応知人も居るし、星喰みのおかげでごく一部に何故か有名人だ。
広く長い石畳の明るい廊下を歩いた先にレイヴン、もといシュヴァーンの執務室がある。
レイヴンは今ギルドと騎士団を行ったり来たりと疲れた、面倒臭いと喚きながらも両方の仕事を精力的にこなしていた。
判ってはいたけど面倒見のいいおっさんだと改めて感心しつつ、部屋と廊下を分け隔てる一枚のドアをノックした。
「どうぞ」
落ち着いた声が扉の奥から届いた。
「邪魔するぜ」
誰だとは問わず入れと言った相手に苦笑を零しながら扉を開けば、同時に現れた俺の姿を見て俯くあまり表情のない顔が僅かに綻んだように見えた。
「青年、久しぶりだ」
先ほどの感情のない声とは違い、今度は温かみのある声で再会を喜ぶ。
「ああ、久しぶり」
言いながら手紙を渡す。
蝋蜜で封をされた封筒を見て誰とは聞かずに封を開けた。
「おいおい、無用心だな」
「これでも青年を信用している」
と言っただけで誰からとか本物かとか聞かなくていいのかと言えばただ小さく笑って見慣れた印だ。間違える事は無い。と言ったあと少し首を傾げて実はと前置きをして判りにくいかもしれないけど教えてもらわなければ判らないぐらいの傷があると言った。
ちょっとしたずるだなと小さく笑いながら手紙を読む。
事務的な真っ白な手紙をくつくつと肩を震わせて読めばその手紙を俺に見せてくれた。
「いいのかよ」
そういいながらも手紙を見ればそこにはハリーの愚痴が綴られていた。
「あいつ、んなことに俺達を使ったのかよ」
呆れたように手紙を返せば騎士団の隊服に身を包んだ男は穏やかな表情を浮かべ
「あれ以来滅多に弱音を吐かなくなったハリーの愚痴だ。多少の我儘ぐらい見逃してやってくれ。
 悪いがすぐ返信を書く。手紙を届けてもらえないだろうか?」
あれとはやっぱりドンの事だろう。
星喰みの一件を通して精神的にも強くなり、天を射る矢を周囲の仲間に支えられながら文句を言わずにがんばっている。と、前にカロルがいっていた事を思い出した。
「別にかまわないがちゃんと料金貰うぜ」
「当然だ」
言って思わずおっさんと目があってしまいどちらともなく溜息を零す。
「じゃないとジュディに叱られるからな」
「私もまだ嫌われたくない」
思わずこぼれた本音にどちらともなく笑みを浮かべてしまうも思わぬ違和感に眉を顰める。
「おっさん、今“私”とか言ってなかったか?」
「レイヴンじゃないからな。シュヴァーンの時はいつもそう言うが」
それが何かと言われてもこの違和感を上手く言葉にする事ができない。
「いや、ちょっと驚いただけ」
「そうか?青年なら余計胡散臭くなったと言うと思ったのだが」
レイヴンの時にはしないゆがむ口元に手を添えて隠しながらくつくつと笑う姿にも確かに胡散臭いなと、こう言う時は豪快に笑うレイヴンとのギャップに居た堪れない気分になるのは仕方がないだろう。
「ま、悪くは無いな」
何がだと問う視線から逃げるように背中を向けて手紙が書き終わるまでフレンのとこに居るといい訳をつけて思わず逃げ出したのは居た堪れなさだけでは無いと思った。

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