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ブログパーツを1つ貼り付けてみました。
良かったら頭をなでてやってください。

おっさん総受ワンダーランド。
優秀(?)なおっさんなんておっさんじゃない!
苦手な方は見る前に逃げて!

ダブルセカンド 20



ここではドンと懇意のアレクセイがその秀麗な顔を歪ませ理解しがたいというように口を開く。
「ドン・ホワイトホースはレイヴンの事を知らないといっていたようだが・・・」
天を射る矢のドンであり、ユニオンの主である彼の記憶力は素晴らしい物があった。
特に人と人の繋がりを重んじる老人は出会った人総ての顔と名前を覚えているのではというくらいの才能を発揮していた。
その彼が知らないと言うのに俺は彼の下から派遣されているというかみ合わない言葉に漸くここで初めて出会った頃のような視線を俺へと向けた。
知らず知らずと言うようにアレクセイと皇女でもあるエステリーゼを守るような陣形に苦笑は隠せず、ただこれから起こる事に対して俺はできるだけ闘う意思は無い事を言うも彼らの警戒は解かれない。
それよりもまずだ。
俺はエアルクレーネが遠くに見える場所に座り一本の木に背中を預ける。
「で、座りこけて何するつもりよ?」
リタが背中から魔道書を取り出し今にも振り下ろさんと言う体勢を見上げてながらエアルクレーネを指さす。
つられるように目を向けた彼女の息を飲むのを聴きながら
「これからケーブ・モックの異常の原因が始まるわよ。特に天才少女は良く見ておきなさい」
言いながら空を見上げれば異常発達した森の木々の隙間から満月が南天に差し掛かっていた。
リタの驚きに導かれるようにエアルクレーネへと目を向けた一同の呼吸が止まる音を聞く。
それもそのはず。
普通なら肉眼で確認する事の出来ないエアルが光を帯びて具現化しているのだ。
ゆらリゆらりと炎のように揺れながら光は徐々に強く、輝くという優しい表現では済まされないほどの眩い光を放っていた。
「これが、魔物達を脅かしている原因・・・」
エステリーゼの呟きには圧倒された誰もが答える事が出来なかった。
初めて見るだろう現象に一同唖然としていれば、息を吸う事さえ苦しいくらいの状況に心臓魔道器に手を当てて遠くなりそうな意識を何とか留める。
十分に距離をとっているから安心していたつもりだが、エアルの影響を初めて体験するだろう彼らは熱に魘されて力が入らない時の様に崩れ落ちる膝に誰もが恐怖の色を浮かべていた。
「エアルが人体に影響を与えているだけだから・・・大丈夫とはいえないけどね。これが終われば問題ないはずよ」
生きていられればとは言わずエアルクレーネの中から随分と篭った力を見ていれば、リタが再びコンソールを開き森の入り口で見た数値なんて問題ないくらいの異常な数値に呆然とするよりも難問の数式を目の当たりにしたような視線でこの状況に挑んでいた。
こちらのリタもやはり研究肌なのかエアルクレーネとコンソールを見比べながらぶつぶつと呟いていたと思ったら
「きゃぁっ!」
弾き飛ばされたように尻餅をついていた。
コンソールは消えその瞬間エアルクレーネから天に向って何かの爆発音と共に光の帯が集結し何処までも伸びて行く。何処にそんなパワーがあったのかと言うくらいの現象に誰もが動く事も出来ないまま見詰める中俺は口の中で数を数える。
そして蹲りたくなるような気だるさの中何とか顔を、視線を上に向け、光の先端を探す。
俺の世界とは対比する物が違い、正確さにかけるがそれでも見届けておかなくてはならない。
俺の予想が正しければそれは・・・
「レイヴンはこの調査をしてて森で倒れてたのか?」
ユーリの問いかけにカウントを頭の中で刻みながら
「そうだ」
と短く答える。
「君は随分とこれについて詳しいようだが、原因はわかっているのか?」
膝を付くアレクセイと言う珍しい姿にやっぱりあんたみたいなバケモノでも人の子なのねと妙な関心をしながら口角を上げる。
「原因はまだはっきりしてないけど、推測はできている」
「判ってんならさっさと言いなさいよ?!」
未知の現象だが既にある程度の予測が付いてる出来事を自分が知らないのがそんなにも苛立たしいとでも言いたげにエアルに押しつぶされそうな体で俺に向ってリタは非難するも、エアルの影響を受けて半ば正常な働きをしていない心臓魔道器のを埋め込まれた俺の体は呼吸もおろそかに重症患者のように喘いでいた。
さすがにこんな姿を見てか口を閉ざすも、他のみんなとはあからさまに違う苦しみ方に彼女の目は新たな疑問を見つけたように輝いているのを苦笑せずには居られない。
アレクセイがやはりと言うような顔で俺の隣に移動してきて物言いたげに胸元を見るも被りを振ってエアルクレーネを見上げる。
森を突き抜けた幻想的な光の柱がやがて力をなくすかのように短くなり、やがてなくなり。淡く輝く光も消える頃になって漸く呼吸が楽になって体が動くようになった。
「終わったようね」
誰ともなく重たそうに立ち上がり、恐る恐るというようにエアルクレーネへと近づく。
体に影響がないかどうかと言うような足運びでエアルクレーネの側に立ちながら手を翳してみたり触れてみたりと、今となってはそこら辺の石っころとなんら変わらなくなってしまった結晶の感触を手の平で調べていた。
その傍らリタはコンソールを開き、今だ正常値とは言いがたいエアルの残留量を調べはじめる。
少し離れた場所で好奇心旺盛な子供達の様子を眺めていれば同じように見守る視線を投げながら小さな声でアレクセイは語りかけていた。
「魔道器の調子はどうだ?」
ひょいと見上げるも視線は交わらない。
気を使ってくれてるのは判るのだがと苦笑を隠しながら、今だ疲労感を覚える体にグミを一つ齧りながら体力の回復に努める。
「もう魔道器に影響が出るくらいのエアルは無いみたいだし、あれが終わればもう元通りよ」
アレクセイが作ったこの心臓魔道器はとかく持ち主に対して親切な作りをしてあった。
最初は何で生命力を原動力に変換するのだろうかと、生前のように自由の利かなくなった体に恨めしく思った事もしばしばあったが、エアルを大量に使用するこのヘルメス式魔道器の特徴を考えたらこれも彼の優しさの一つだったのかもしれないと今頃になって考えていた。
これが他のヘルメス式魔道器と同様なら始祖の隷長達にすぐさま見つかり、魔道器の破壊として今頃生きては居なかっただろう。
その点生命力を変換していた為にあれだけバウルの側に居たのについぞ彼には気づかれる事もなく、星喰みに挑んだ折にもこの心臓魔道器は世界に影響を与えないからと理由でお目こぼしを預かったのだ。
尤も、そんな残酷な選択を出来る人間があの時あの場所には居なかっただけの事だろうが、それでも未だに共に生きる魔道器に感謝をする日を迎えるなんて10年前には思いもつかない事だった。
散々引き剥がそうとしたらい、不満や恨みをかつては命ある姿を持つ者に向って吐き散らかしたのに、この魔道器はどんな緊急時にも常に最低限の生命活動確保を維持してくれていた。そうプログラムし生きろと言ったアレクセイの優しさを恨んだ日もあったが、今の俺はちゃんと知っている。これだけ魔道器が悪影響に晒されても自動で修復されて俺を生かそうと懸命に働いてくれる事に感謝するように服の上から魔道器を子供の頭を撫でるようにそっと撫でてみた。
そんな俺に何か聞きたそうな顔でアレクセイはいつの間にか俺を見ていたが、同じ顔は少し困ったような顔をして
「それは・・・特別なのか?」
心臓魔道器なんてきっと今まで見た事も聞いた事もなかっただろう。今となっては唯一の魔道器を特別かといえば特別なのだが
「どんな意味で?」
それだけの意味でない事は確かだ。
考えたら魔道器事態安い物では無いし、騎士団で管理もしている。入手だって困難な品だ。
よほどのコネがあるか、上手く横流し品に出会えたかの幸運でもなければまず無理と思ってもいい。
そんな魔道器のこの特殊さに心臓魔道器を与えたとなるとただならぬ関係をかんぐっても仕方がないというものだろう。
複雑そうなアレクセイは言葉を選ぶように
「大切な人・・・からの物だろうか、と」
さっと避けられた視線に思わず苦笑。意外と純情と言うか、聞きたくなければ聞かなければいいじゃないのにと思いながらも俺はその質問に出来る限り正しく答える事にした。
「大切な人といわれたら複雑よね。大切だった人には変わりは無いけど気が付いたらこれが埋ってるのだもの。当時は恨んだし自暴自棄にもなったし」
死んだ心で思いもしない言葉を口にして彼を追い詰めた日もあった。
そんな日々さえ懐かしく思うのだから時間と言うものは素晴らしいと感慨深げに過去を振り返りながら
「けど、おかげで随分と救われたわ」
生きてみたいと思うようになった。
手を差し伸べてあげたい子供たちともめぐり合えた。
心からバカ騒ぎ出来る仲間も居るし、こんな俺にでも慕ってくれる仲間も出来た。
考えているうちにいつの間にか変わったこの変化を嬉しいとでも顔に出ていたのだろう。
何処か後悔したというようなアレクセイが佇んでいる。
「君は・・・その人と幸せなのか?」
小さな呟きにも似た言葉に彼が誤解している事にやっと気が付いた。
そりゃそうだ。隠しておく事では無いけど、記憶喪失と言う設定から話せずにいたし、話した事もないしするつもりもない。
と言うか、その前にだ。
「ちょ、ちょっとなにいっちゃてるのよ!」
逃げ出さんといわんばかりに足を一歩下げて仰け反りながら冗談は止めてくれと言う。
驚いたようにしぱしぱと瞬く呆気に取られた顔に
「如何したらそういう考えになるの」
項垂れたくなる頭を支えれば現金にも何処か嬉しそうなアレクセイはなおも言う。
「恋人とかでは無いのか?」
常識を超えた禁忌にも似た蘇生方法に恋愛関係とかが絡んだゆえのものだとでも思っていたのだろうか。
確かに憧れはしたし尊敬もした。こんな事になってから戯れに色々とあった事もなかったとは言えないけど、そんな事を言う必要は無い。
「ないに決まってるでしょ」
溜息混じりに返せばご機嫌な顔がそこにあった。

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