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拍手ありがとうございます!
GWからろくに更新もせずモバで怪盗してましたがやっと3日寝かしておいたダブルセカンドをアップしました<殴!!!
いいかんじに熟成しておいたのは別に誤字の修正とか探していたわけではありません。
すっかりアップしたもんだと思ってまし<撲殺☆

あるよね?

おっさん総受ワンダーランド。
優秀(?)なおっさんなんておっさんじゃない!
苦手な方は見る前に逃げて!

ダブルセカンド 19



「とりあえず下ろしてくれるかしら・・・」

いい年こいたおっさんが森の中をお姫様抱っこのまま行くというのはいくらなんでも恥かしすぎる。
周囲の目があるとかどうとか言う以前に男の威厳にかかわる問題だとも思う。
せめて着地した時点でさっさと下ろしてくれればいいものを
「別にいいって、おっさん軽いし」
フレンとアレクセイの手助けで飛び移る女性人を前にして歩き出したユーリの腕の中で暴れて何とか脱出する。
「あーあ」
とたんに軽くなった腕の中にユーリは舌打ち混じりに残念そうに言うも、俺は少し肌蹴た羽織を羽織りなおし、腰に手をあてユーリを見上げる。
「あのね、おっさんが進まないとどっちいけば良いか判らないでしょ」
「テキトーに進めばいつか着くんじゃねぇ?」
「なわけないの。この広い森の中に目的地は一つなんだから。適当じゃいつまで経っても着かないわよ」
あきれ返りながらもめっと睨めつければはーいと反省の色なしの返事が適当に帰って来た。
それじゃあ改めて先を急ごうかと少し傾きだした太陽の位置に足を進めようとすれば
「でもおじさま」
とジュディスちゃんに呼び止められてふりむいた。
「あまり顔色が良くないみたい。気分が悪いようだったら休むべきよ」
ひたりと紫水晶の瞳が俺を見る。
見透かすような視線に口角を少し上げ
「ああ、これ。これはおっさんの仕様なの。大丈夫だから気にしないで」
くるりと背中を向けて歩き出した。
よく気がつく洞察力のある子だとは思っていたけど、この森に足を踏み入れてから息苦しさを覚えるようになった心臓魔道器の不調を見抜かれるとは思わなかった。
何かに気付いたようにはっとしたような顔でアレクセイが俺を見ていたが、先はまだ長い。足を止めずにこの現象の確認を目的に彼らを案内しなくてはならないと、さっきより少しペースを上げて森の奥へと足を運んで行った。
じめじめとした森の濃い匂いを吸い込みながら深い霧の中を進んでいく。
いつの間にか隣に歩いていたユーリはしんがりを勤め、背後からの魔物の襲撃からリタ達を守っていた。
上空からの攻撃にはジュディスちゃんが迎撃して、道先案内人の俺を守るかのようにすぐ後ろにアレクセイが歩いていた。
ちくちくと背中に刺さる視線に居心地の悪さを覚えるも、次第に迫る夕闇に戦い慣れをしていないリタとエステリーゼの同行とは言え休憩を挟む事無く目的地へと急ぐ。
「魔物も少なくなった事だし少し休憩してはどうでしょう」
息の弾むエステリーゼをちらりと見ながらのフレンの提案にアレクセイも小さく頷くが、木々の隙間から暗くなりだした夜空を探し、その位置を探し、辛うじて見えた隙間からすでに東南に位置しているのが見えた。
「悪いけど、時間がないのよ。たぶんもう少しだから頑張って」
しゃがみ込もうとしたリタを引っ張り上げる。
「ですが、私達よりもレイヴンの方が休憩が必要な顔をしてますよ」
何とか呼吸を整えておっさんを見上げる嬢ちゃんの心配そうな顔に苦笑で返しつつも僅かな木々の枝の隙間から見える月を見上げ、それを指で示す。
「ほら、天才少女。上を見て」
言えばリタは指が示すその先の霧がかった夜空を見上げる。
「月がどうしたって言うのよ」
風流とは程遠い生活をしているだろう彼女とは別に、腹違いの姉はうっとりと
「綺麗な満月ね」
溜息混じりに燦々と輝く月を見上げる。
「そうなのよ。綺麗な満月なのよ」
ジュディスちゃんの言葉に頷きながら、
「でもこの満月が南天にかかる頃ちょっとした悪さをするのよ」
ちょっとした悪さどころでは無い。
下手したら命にもかかわる大事な現象を引き起こすのだ。
さっきからだいぶ息苦しい所ではない魔道器の不調に気付かれないように深呼吸を何度も繰り返しながら足を運んで居る。
何とか現象が始まる前にエアルクレーネの位置を見つけ出して安全な場所からその現象を確認しておきたかったのだが、だいぶ近くにいるはずなのにまだ見つけられないで居た。
「だが、目的地と言うのはだいぶ近いのだろ?」
アレクセイの紅い瞳が心配の色を乗せて俺を見ている。
「たぶんだけど、この周辺にあるはずなのよ」
ぐるりと見回すも知っている森の生態系と違うように目標としていた巨木の姿が見当たらない。
「例えば、何か特徴は無いのかしら?」
目的地に近いと言う事を察してか後は分かれて探してもよいのではなくてと提案するジュディスに、これだけのエアルの濃さなら魔物はほとんど居ないだろうとふむ。
「特徴は・・・そうねぇ。透明度の高い黄色い石なんだけど、大きさは子供ぐらいのサイズで、結晶の形をしている場合が多いわ」
「それだとかなり目立つな」
ユーリの感想に一つ頷き
「ただ注意して欲しいのはもしその石が光っている場合はすぐに離れておっさんに知らせて。間違っても近付いちゃ駄目よ」
約束ねと付け加えれば
「あんた記憶喪失なのにやけに詳しいのね」
リタの胡散臭そうな目の突っ込みに冷や汗が一つ流れた。
「そ、そうかしら?」
思わず上擦る俺に畳み掛けるように
「前にも自分の年齢言えたでしょ。本当に記憶喪失なの」
既に疑問形でもなんでもない確信に満ちた言葉に冷や汗を垂らしつつも
「今はその確認よりも石を捜すほうが先だ。ユーリはエステリーゼ様とリタと一緒に、フレンはジュディスと、君は私と一緒に来なさい」
思わぬ助け舟はアレクセイだった。
あえて俺を見ないまま指示する姿にこれはばれているなと一つ息を飲み込み乾いた笑を零した。
ちらちらと何度も俺の方を振り返えりながらユーリに連れられて去って行った彼女達を見送り、フレンとジュディスちゃんも同じように別方向へと向って歩き出していた。
残された俺は寡黙に見下ろすアレクセイに冷や汗を静かに流していれば、目の前に手がぱっと差し出された。
ぶたれる。
彼は間違ってもしないだろうと俺は知っているのに、その紅い瞳と対峙した時の緊張から奥歯をぎゅっと噛み締める。
しまったと思うももう遅く、一つ呼吸を置いて頬に触れたグローブ越しの手は何処か暖かかった。
「君が・・・何かを隠そうとしている事ぐらい知っている」
頬を幾度か撫でた後白状するかのように口に出した言葉は何処か寂しそうだ。
「私はそれをレイヴンの口から言ってくれる事を期待していた」
その言葉に自虐的にははっと笑みを零してしまった。
期待を裏切った。
何所かでそう感じて悲しいと思ってしまうもアレクセイはなお言葉を紡ぐ。
「だが何時かは話してくれる。私はそう信じているから、今は無理をしないで欲しい」
騎士団の団長ともあろう者がこんなにも簡単に人を信じていいのだろうかと思う反面、その優しさを利用している自分が浅ましい。
好意にばかり甘えてまだ何も返していない自分にこういった真っ直ぐな人物と相対すると嫌になるほど人間味を感じない人物だと己を分析するも、その無言の優しさに心地良さを覚え離れられない寂しさに口を開きかけるも、閉じてしまう。
そのすぐ側の紅玉の瞳が何処か落胆するのを視界の端で捕らえるも、今俺に起きているこの事をどう説明すればいいかなんて判りもしない。
リタのように言葉巧みに物理的な証明が出来なくても可能性を見つけ出す事が出来れば説明も何とかなる。
大体だ。いつのまにここに来たのかさえ判らないのに何をどう伝えれば良いのかなんて判らない。
思わず考え込むように唸っていれば、不意に膝の力が抜けた。
「レイヴン?!」
地面に崩れ落ちる前にアレクセイの腕が俺を受け止めてくれた。
力が入らない体で周囲を何とか見回せばすぐにフレンの俺を呼ぶ声が聞えた。
「レイヴンさん!あなたが仰っていた物に類似する物がこの先に・・・」
ジュディスちゃんと一緒に駆けつけてくれた物の、体の力が入らないおれを見て息を飲む。
「一体何が・・・」
驚く彼女にアレクセイは首を振り判らないとだけ返す。
「とにかく、石から離れろ・・・」
思わず左胸を鷲掴む様に何とか指示をすればすぐにフレンがさっき来た方向と反対方向へと俺達を導く。
「どうした?!」
何処からかユーリ達までやってきて、アレクセイの肩を借りてというかほぼ引き摺られるように逃げている俺達を見て、その尋常じゃない様子に驚いていた。
何とか自分の足で立てる所まで連れてってもらえばそこで足を止めてもらう。
「所で石は何処に?」
熱に魘されるような中でフレンに聞くも、彼の指が示す方は生い茂る葉っぱに何も見えない。
「悪いけど、向うの葉っぱを魔術かなんかで燃やしてくれない?」
こんなにも弱っている人間を見るのは初めて見ると言うような顔のリタに言えば戸惑いながらもファイアーボールで周囲の葉っぱを燃えつくしてくれた。
水分を多く含むこの森の生態系にちゃんと燃えるかしらと思うも、魔術の熱は自然の発火現象よりも強く、次々に景気良く自然を破壊をして行って、ファイアーボールの乱発の後、ポッカリとすすけた一帯の中に黄色く輝く宝石にも似た結晶体が現れた。
「あれは・・・」
ジュディスの驚きに説明を加える。
「エアルクレーネ、エアルの源泉。
 魔道器によってエアルが大量に消費されると大量に放出されるようになるって、受け売りね」
「ばかなっ?!確かに我々は魔道器によって大量のエアルを消費してきたが、こんな現象を起すような真似は・・・10年前の戦争で我々は学んだはずだ」
驚くアレクセイに何も知らないだろう子供達はキョトンとした顔で意味を読み取ろうとしている。
その中ジュディス一人が知っていると言うように自身を抱きしめ
「ヘルメス式魔道器はもうこの世には残ってないはずなのに・・・」
ヘルメス式魔道器を破壊して世界を巡っていた彼女の孤独な旅路の一遍を知る身としてはやっぱりこの世界の彼女にも繋がりがある事を覚える。
そんな中でリタは研究者らしくエアルクレーネに向ってコンソールを開き、浮かび上がるモニターの数値を愕然とした顔で眺めていた。
「一体これ何なのよ?!」
悲鳴にも近い叫びにアレクセイもそのモニターを見る。
「普通じゃないわ!こんな数値見た事もない!!」
次々と塗り替えられていく情報を読み取りながら、魔力の消費を惜しまず新たなモニターで別の情報収集を始めた。
忙しなく動く指先と視線に見守っていたエステリーゼは邪魔をしないように息を殺して見守っていたが、アレクセイもコンソールを開いて呼び出した異常なまでの数値を見て目を瞠る。
「レイヴンは・・・この事を知っていたのか?」
平常時の数値を知らないユーリとフレンはこの場の雰囲気に飲み込まれたように緊張して見守っていたが、アレクセイの言葉にただ不安げな視線だけが揺れていた。
「俺はこの調査の為にユニオンから派遣されてたんですよ」
一斉に並ぶその顔が意味を理解しかねないと歪んだのを何処か面白く思いながら眺めていた。

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