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拍手ありがとうございます!

3日ほど熟成させた更新。

・・・したとおもったのになあ。あれ?




ダブルセカンド24



だいぶはしょったつもりだったが長い話になったなと思う。
落ち着きを取り戻しかけているケーブモックに張る結界の中で車座になってこちらに来た話と、その理由に当たる昨晩の現象を想像と仮定を織り交ぜて説明をした。
それから嘘をついていた事を素直に謝り、怪我を癒し体力の回復に努める事を称して情報収集をしていた事を吐いた。
見る間に険しい顔になっていく面々に今すぐこの場から逃げ去りたい衝動に駆られるも、それを見越してかいつの間にかユーリによって繋がれていた手に逃げる事さえ出来なかった。
簡単に話したつもりだったが一通り話すと随分と時間は経ち、白み始めた朝靄はいつの間にかこの森独特の水気を置く含んだ霧に抱かれていた。
見晴らしのよい場所だけに吹き込む風に視界は森の中ほど悪くは無いものの、重くじめっとした空気はまさに俺の事を表していると思っても良い天候だった。

「つまり、あんたはいつの間にか別の世界からこっちの世界に来たわけね」

ふむふむと一応バカらしいと捨てずに説明を聞き終えて自分なりの解析を試みている天才少女はなにやら独り言をぶつぶつと言ってはいるものの導き出される答えに前例はなく、答えは今だ見つからない。
難解な問題に何処までも追求していく彼女とは反対に、隣に座るエステリーゼは瞳をキラキラとして何処か夢現と言うように手を胸の前で合わせていた。

「それにしても素敵ですね!レイヴンの世界と私達の世界がこれほどまで似ているのにまったくの別世界だなんて小説のようです」

今正に物語の一ページの中に居るのですねと頬を染めてウットリと微笑むも、メルヘンや物語とはあまり縁のなさそうなユーリが嘘を吐き騙していた事に完全に拗ねてしまったまま顔も合わせてはくれなくなっていた。手は繋がったままなのに。
ジュディスは相変らずにこにことして愛想の良い顔をしている物の、逆に読めないだけあって怒っているのかどうでもいいのかの差も判らない。
せめて嫌ってくれてもいい。一ヶ月に渡る芝居になんか感想を言ってくれてもいいものの、彼女は初めてあった時に見せた笑顔のまま、はしゃぐエステリーゼに何処か楽しそうに返事をしていた。

そこへいくとフレンとアレクセイはひそひそと何か話し合っている。
普通に考えるとこの二人が一番騎士団の情報を俺に与えてくれたのだ。これでも内心二人に対して申し訳ないわねぇと思っているのだが、時折ちらりと俺を見る視線は先ほどまでの優しい彼らのものとは別物に見えた。
仕方がない。こう言うのを身から出た錆と言うのだったか、もう少し真面目に勉強しておけばよかったとこの年になって少し反省をした。
そのうちフレンとアレクセイは話しを終えて俺の前に膝を付く。
「レイヴンさん。あなたが仰った事を疑う事をしたくないのですが、何故あなたの世界と、別の世界と言えるのか訊ねてもよろしいでしょうか」
いやな質問が来たわねと思いながらアレクセイの顔を見る。
視線が合いどこか緊張したように顔が歪むも、まずは説明しやすそうな所から情報を開示する。
「まずはエステリーゼ姫」
はい?と小首傾げた嬢ちゃんに、この世界でも彼女が皇帝争いの真ん中にいるのを承知で彼女に言う。
「俺の居た世界では、ヨーデル殿下が皇帝につき、嬢ちゃん…エステリーゼ様は副帝にお着きになられました」
「・・・そうですか」
一瞬驚いた顔を見せる物の悲しそうな素振りなどまったく見せずに
「ヨーデルならよい皇帝でしょうね?」
「苦労は多いけど頑張られておいでですよ」
若き皇帝に評議会は敬意を払ってる様子はあまり見られないものの、少ない味方を最大限有効活用して徐々に彼の求める帝国を作り始めている。と言ってもまだ最初の一歩だが、それでも長い歴史を誇るザーフィアスではとても大きな一歩である事は確実だ。
「次にジュディスちゃんとリタっち」
私達?と二人で顔を見合わせれば
「おっさんとこじゃ姉妹じゃないのよ」
いえばジュディスちゃんは少し寂しそうに
「赤の他人なのかしら?」
リタは興味なさそうな顔で見ているも、何処か寂しそうに瞳が潤んでいる。
「さあ、そこまでは知らないけど、姉妹って言うのは聞いた事無いわ。
 リタっちも母親の事はうろ覚えでおぼえているらしいけど父親の事はさっぱり覚えてないらしいの。
 もし二人が姉妹で、ひょっとしたらジュディスちゃんがなんらかしら知っていたとしても…彼女は今更姉妹だから仲良くしましょうね何て言わないわね」
「なんか、それも寂しそうだな」
親の記憶事態ほとんどないというユーリがポツリと言うものの
「今更家族?ばっかじゃないの~?そんな事今頃確認しなきゃいけない事なの?
 って、うちんとこの天才少女なら言うわね」
彼女の性格ならこう言うだろうと説明すれば呆れたような面々に口の端を吊り上げて気付かれないように笑う。
「じゃあ、僕とユーリは・・・」
どんな風になっているんだろうと好奇心と少しだけ恐怖を織り交ぜながらフレンの呟きにまずは話しやすい
「まずはユーリ。残念だけどとっくに騎士団辞めていまはギルドを仲間と立ち上げて世界中を飛び回ってるわよ」
「俺がギルド・・・」
今のユーリには想像できないと言うように瞬きを繰り返している彼に
「ユーリが騎士団に居られるのはアレクセイが騎士団を正しく導いてるからよ」
言えば何故か誇らしげに胸を張るアレクセイに尊敬の眼差しを向けるフレンに対してユーリは胡散臭げだがじゃあフレンはどうなんだよとそっぽを向きながら何処か納得できないでいるようだった。
「フレン?フレン君はねぇ、ちょっと前に騎士団団長になって、新しい騎士団を引っ張ってるわよ」
その言葉にフレンとアレクセイは驚いたように俺を見詰める。
リタもジュディスもエステリーゼまで意味を考えあぐねるようにポカンとし、質問したユーリ自体も自分が何を聞いたのか考えれないでいるようだった。
「それは、つまり・・・アレクセイ団長が退役したと?」
一番無難な可能性を口にしたフレンに俺は頭を横に振り
「ちょっと前にクーデターがあって、アレクセイはその時に・・・ね」
他人とはわかっていても誰もがアレクセイを見上げずには居られない。
何があったのか興味が尽きない所だろうが、それを口に出して訪ねていいのだろうかと言ったような所だ。
沈黙を守ったままのアレクセイは暫くしてからゆっくりと口を開き
「なるほど。だからすぐに違う世界だと気付いたわけなんだな」
感情をごそっと抜き落として仕事をしているような事務的な口調に
「キャナリは10年前の戦争で死んでるはずだし、イエガーだってもうこの世にはいない。ドンだってそうだ」
それだけじゃない。
城の中で出会った中にはすでに他界した顔ぶれもいくつも見たのだ。
これがあの世でなければ別の世界と考えるのがぶなんな所だろう。
不思議な体験をいくつもしてきたのだ。
今更一つ二つ増えた所で順応してみせる自信はあったものの、キャナリの未来と言う不意打ちには忘れていた涙を思い出すには十分だった。
「どう考えても俺様の知っている世界じゃないし、夢だとしたら・・・悪趣味すぎ」
そっぽを向いて自嘲するような笑みを浮かべれば、繋いでいたユーリの手が何処か優しくなった気がした。
「では、レイヴンは向こうではどんな事をしていたのです?」
暗い話しを払拭するようにエステリーゼが陽気な声で俺自身の事を聞いてきた。
「嬢ちゃんおっさんの事興味あるの?」
彼女の努力に答えるように嬉しそうに笑みを作って話題に喰らいつけば
「す、少しだけ」
何処か逃げ腰で答えた彼女から引き剥すようにユーリに引っ張られる。
「俺もレイヴンの事興味あるな」
「でしょ?おっさん結構すごいのよ?顔広いのよ?」
想像つく?と言えば好奇心に満ちた眸がへえと笑う。
「こう見えても天を射る矢のナンバー2にまで伸し上がって、ユニオンでもちょっとは知れた名前なのよ」
「おっさんギルドやってんのか?あ、じゃあ向うの俺と一緒に仕事したりとかしてるのか?」
「ユーリたち凛々の明星もそこそこ名前の知れたギルドだからね。だけどやっぱりまだ新興ギルドのうちだから仕事には困らないけどつてがまだ少ないし、事情って言うのもあまり詳しくないからね。そんなときはおっさんが助けてあげてるのよ」
おっさんやさしいでしょ?と言えば横から厳しい声。
「そして君は騎士でもある。一体何者なのだ」
さすがにそれは想像しなかったと言うようにユーリを始めリタたちまで警戒をする。
アレクセイの隣りで厳しくも何処か信じたくないフレンの瞳が揺れている。
「騎士崩れのギルドなんて珍しくもないでしょ?」
仮令こっちの騎士団の居心地が良いとしてもだ。ここの世界にだってユーリみたいに枠にはまった事に我慢出来ない者だっている。
ケーブ・モックに来る前のダングレストでも古い知人を見かけたと言うように挨拶を交わしている姿をちらちらと見たのだ。
俺の言葉にフレンは何処か安心して見せるもアレクセイは厳しい顔をしたまま。
やっぱり誤魔化せないかと思えば
「レイヴンは先ほど騎士団が管理している魔術を発動した。
 その魔術は扱いが難しく、教えられた者は片手で足りるほど。
 騎士崩れになるような人物では無いとこれでも私は君を評価している。ひょっとしたら地位ある騎士ではなかったのかな?」
確信めいた言葉には肩をすくめてもうお手上げと手を上げて降参する。
アレクセイのとなりにいたフレンが驚いたように息を飲み込むのを見て
「こっちにも事情ってのがあって、そこは勘弁して下さいよ」
他の世界とは言えアレクセイに受けた命令を考えると他人とは言え目の前の彼の人は後悔をするだろう。
複雑そうな目の前の人物に苦笑交じりで沈黙を保てば
「レイヴンと言う名の騎士をユーリ達は知りませんか?」
思わぬエステリーゼの気転に思わず苦笑。
「なるほど。おっさんが話さないのならこっちの世界のレイヴンを探せばいいだけ、ってか」
ナイスアイディアだと言わんばかりの顔で
「あんただったらおっさんみたいな騎士、知ってるだろ?」
「ユーリ、アレクセイ団長だ。それにもし知ってるとしたら既に気づいて騎士団でも騒ぎになってるだろ?」
「あ、そうか」
「ですね」
リタまでも溜息をついて呆れ果てて見せれば
「で、おじさまはこれから如何するつもりなのかしら?」
ジュディスが暗にこれ以上騎士団で保護してもらうには限界があるのではと遠まわしに聞くのでやはりこれ以上は騎士団にいられない事を感じながら

「そうね。ここでおいとまして帰る方法探してみるわ」

彼らも判っていただろう一言に返す言葉も見つからず、ただ息を飲む音だけが静かに零れ落ちていた。

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