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拍手ありがとうございます!
いい加減ダブルセカンド以外も書きたいのですが、終わるまでガマンしているのでもう少しお付き合い下さい☆

それにしても映画のおっさんが可愛い。
酔っ払ったおっさんが可愛い。
お持ち帰りしたい<マテ!



ダブルセカンド 23



「援護するっ!」
残り少ない矢に弓を剣に変えて構えれば魔術を解放ち制御を放棄したアレクセイが濁流に飲まれ足の止まった魔物を仕留めに剣を抜く。
追いかける形でユーリとフレンも次々と魔物をしとめていく中リタの魔術が解放たれる。
火球が次々と魔物に襲い掛かるのを確認してからジュディスが大地を蹴る。
身軽な彼女はクリティア族特有のしなやかな身体能力で上空の魔物を叩き落していた。
上空の彼女を援護はしたいが矢の数を考えると躊躇いがちになるものの、魔物もそこそこ知恵があるのか攻撃に警戒を含めたためらいが見られてきた。
肩で息をするようになったユーリとフレン、ジュディスの背中を眺めながら、魔物の壁が少ない所を探す。
アレクセイの強力な魔術が魔物を一気に吹き飛ばすのを見てフレンを呼び寄せて魔術の詠唱に入る。
既に一度同じ戦場に立った事のある彼にエステリーゼ達を含めて援護を任せれば長い集中力を要する魔術に精神力がいっきに削られるのがわかる。
それでも脳裏に浮かべるイメージを細密画のように描き
「ストップフロウ」
その言葉と共に世界から彩が消える。
突然身動きせず時が止まった世界にユーリを始め驚くが、騎士団長のアレクセイは彼らとは違う驚きで俺を眺めていた。
なんせ騎士団が保管している魔術をアレンジして発動する魔術だ。
世の中に出回っているわけもなく、管理している騎士団長は信じられんと言う目付きで俺を見ている。
「崖沿いが魔物の壁が薄いっ!」
先導するようにリタとエステリーゼの手を引っ張りながら走れば、俊足のユーリが先回りをして今だ時を止められたままの魔物を崖下に落とすように叩き切りながら逃げ道を確保してくれる。
その中で俺は走りながら上級魔術のイメージを作りながら、ストップフロウの効果が切れる頃を見秤り、再度魔術を解き放つ。
「テンペストッ!!」
時が動き出し、餌だろう俺達を見失った魔物は一瞬の虚をつく事に成功した物の、魔物の群の中に飛び込んでいる形の俺達はすぐさま見つかる事になるも巨大な竜巻が周囲の魔物を巻き上げながら吹き飛ばしてくれた。
撒き上がる砂埃と共に髪を押さえるエステルの手をユーリが手を引けばフレンがこの嵐の中を魔物が少ない方へと案内する。
リタもジュディスに手を引かれながらフレンを追いかけ、俺は何故かアレクセイに抱えられていた。
「立て続けにそんな上級魔術を使う者があるかっ!」
あまりの無茶な戦術に対しての物だろう。
彼にこんなにも真剣に叱られるのはいつ以来かと考えれば自然と何故か笑みが浮ぶ。
嵐を抜ければ魔物の群をつきぬけ、混乱の極みの中に置いてきた魔物に向って再度テンペストを解放つ。
アレクセイに抱きかかえられたままで。
しかめっ面のアレクセイが俺に向って何か言いたげに眉を顰めるどこか見慣れた顔に苦笑をかえすも無意識に胸を鷲掴む手に視線を落として走る足を止め、俺をフレンへと押し付けたかと思えば事もあろうか魔物相手に秘奥義を発動させていた。
「げっ、団長マジぶち切れてる」
巻き添えにあわないようにとアレクセイの背後にある木の陰に身を潜めて静まるのを待てば、風に流れてくる土埃が治まったのを見てユーリが状況の確認をしてくれた。
もう大丈夫だと言う合図と共に立ち上がろうとするも足に力が入らず座りっぱなしになってしまう。
アレクセイを出迎えるフレンとユーリと好奇心旺盛なエステリーゼが魔物を一掃し無残な爪痕を残すだけの戦場の跡地に溜息と驚きの感嘆を零すも、アレクセイは俺の正面までやってきて膝を付く。
「調子はどうだ?」
総てお見通しですかと苦笑紛れに視線を反らせば、心臓魔道器の事を知らない少女達の前でも関係ないというように容赦なくパネルを開かれた。
「ちょ・・・」
「魔道器の扱いなら私も心得ている。が、正常値を知らないからよかったら教えて欲しい」
初めて扱う・・・二度目だろう心臓魔道器の取り扱いは何処か慣れた指付きでコンソールを操作していく。
天才少女を見れば、初めて見る魔道器に驚き、そして彼女の義姉は息を止めたように静かにこの光景を眺めていた。
嬢ちゃんは嬢ちゃんで心臓魔道器を見せれば痛々しいものを見るように泣き出しそうな眸を何とかこらえている。
「レイヴンの不調がこの魔道器を理由としている事は判っている。これだけ濃いエアルの中に居れば魔道器が不調を訴えるのも尤もだ。寧ろ、その程度で治まっている方が不思議なくらいだ」
次々と展開されていくパネルを覗くリタも驚きは最初だけで今は既に研究者としての顔で自ら展開したコンソールを繋いで信じられないスピードで流れていく情報を解析していた。
「一体何のなよ!魔道器をこんな風に・・・」
苛立ちは尤もだが、知らないわけでもない俺の顔を見て舌打ちを一つ。
唇を噛み締めながら何を捜しているのか判らないが次々と膨大な量の情報を読みあさっていた。
「それで、正常値は?」
たぶん生体情報のページだろう見覚えのあるような文字とパラメーターのモニターに困惑の色を浮かべる。
「すいやせん。大将にまかせっきりだったので覚えがないんですよ」
少し擦れた自分の声に驚くも驚いたように膝を付いたフレンと、体を大事にしない俺に怒りを向けるユーリの二人から思わず顔をそらす。
ポケットからグミを取り出し齧りながら、少しだけ呼吸がしやすくなった体に深く息を吸い込めば、パラメーターに変化が出たのか、そこを修正していくアレクセイにの指をぼんやりと眺める。
コンソールパネルとモニターを見ては眉間を寄せ、物言わずひたすら黙々と修正作業をする姿を思い浮かべる。
道具だとか言う割には毎度丁寧なメンテナンスを怠らなかった。
大概深夜に二人きりでの作業になるのだが、膨大な量のメンテナンスは一晩かけての大仕事となる。
最初はなすがままだったが、回を重ねるうちに見よう見まねで少しずつ記憶した知識で覚えていったは良いが、少しだけ弄った魔道器はアレクセイにあっさりとばれて酷く叱られた事がある。
いつもみたいに殴ったり蹴ったり、それこそ犯したりすれば自分が道具だと再度認識するには十分なはずだったのにこの時は酷く悲しそうな顔で切々と説教をされた。
この魔道器は一部だけ修正すればよくなるものでは無い。
大量の情報のバランスを保ちながら君の心臓の代わりとなっているのだ。
見よう見まねで心臓魔道器を弄ればそれこそ取り返しの付かない事になる。
同じ言葉を何度も繰り返しながら、それこそ一晩中いかに他の魔道器とは比べ物にならない繊細なものかと言う事を静かにとくとくと説明された。
いつもの激情型の彼とは違いすぎたためにそれ以来二度と自ら魔道器を開く事はなく、命をゆだねるようにアレクセイ以外に触らせる事はしなかった。
それを同じアレクセイでありながら別のアレクセイが修正しているのを不思議な気分で眺めながら如何したものかと思っていれば
「なんなのよこれっ!!!」
リタの悲鳴にアレクセイでなくても意味なんて判らないだろうモニターにユーリも覗き込む。
「ちょっとあんた、いつのまにこんなもの開発していたのよっ!」
悲鳴のような声と共に掴みかかるリタにアレクセイの顔も驚きが広がる。
「私も知らないっ!」
罪を否定するかのように反射的に答えたそのモニターをのぞきこみ、思わず手で顔を覆った。
まさか開発情報に署名がしてあるなんて誰がそんな事想像するだろうか。

たった一行発光体が連なる文字の羅列はアレクセイ・ディノイア 。

持ち物に名前を書くくせは無いものの、大概の物には赤色のインクで騎士団の印をつけて誰とは言わずに彼の印としていた事を思い出す。
だが、まさかこんな所に名前を書いておくなんて正直思いもしなかった。
「二度と魔道器の開発はしないと約束したはずよ」
ジュディスにも詰め寄られるも身の覚えもないアレクセイはただただ困惑の色を浮かべるだけで知らないとしか言う事が出来ない。
「だが、あんたの知らないところで魔道器の開発なんて早々出来たもんじゃないよな」
ユーリもどういうことだと言いたげに詰め寄るから慌てて間に入る。
何で庇うんだと言いたげにユーリの眉がピクンと跳ねるのを見て唇を噛みながら「違う」と首を振る。
「アレクセイ・ディノイアとあるけど違う人なんだ」
何処まで話していいのか頭の中で考えつつ、優しい彼らに吐いていた嘘を白状するせざるおえない状況に恐怖を覚えながらもゆっくりと口を開いた。

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