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ちょっと私生活でバタバタする事になります。
趣味の園芸

Jovibarba heuffelii Toronto
のこいつらの仲間↑を布教する為に農作業に専念します。
ちなみにこいつは手放せない超お気に入りw

おっさん総受ワンダーランド。
苦手な方は見る前に逃げて!

ダブルセカンド 21



「レイヴンは恋人居ないのか?!」

何処か嬉しそうな声で突然話しに混ざって来たのはユーリだった。
てっきりエアルクレーネの所で少女達と戯れている物だと思ってたのにいつのまにだろうかやってきてこの話の中に混ざっていた。
「悪いわねぇ。こう見えても俺様は仕事に生きる人間なのよ」
「悪いとは言ってないだろ?ってゆーか、あんたどんな仕事してたんだよ」
すっかりばれた記憶喪失設定にユーリは興味を持って話しを切り出してくる。
「仕事って言ってもねぇ。人使いの荒い上司だったから何でもやったわよ」
書類書きから侵入捜査、騎士団の隊長主席からギルドのナンバー2、ちょっとしたお使いから誘拐までジャンル問わず本当に色々とやってきたなと自分で感心した。
「上司に恵まれなかったのか?」
ちらりとアレクセイを盗み見てから苦笑。
彼の部下なら今頃騎士団に生き甲斐を見つけていただろうが、随分とお世話になった方のアレクセイの下では青春を棒に振ろうがうたい文句だった。
尤も俺の場合は人生まで棒に振ってしまったが、これから取り返せば良いと背中を押してくれたのは目の前のユーリと瓜二つの彼。
「今となったらよくわかんないけど、一概に悪い上司だとは言えなかったわ。
 上司は仕事に人生を捧げた人でね、自然と部下の人生まで上司にもぎ取られる結果になったのよ」
おかげで随分とはちゃめちゃな10年だったが、その中でもドンとの出会いにはこれ以上とないくらいの感謝はしている。
「随分と・・・身勝手な上司だったようだな」
「あんたが人の事言えるのか?」
胡散臭そうな視線のユーリにこらえきれない笑が口の端から零れ落ちる。
そう。アレクセイと同じ顔のあんたには言われたくないと引き攣る口元を何とか手の平で隠せば心外だと非難する顔に視線をそらせずには居られない。
ふるふると震える肩がひとしきり落ち着いた所でレイヴンと名前を呼ばれた。
なんだ?と振り向けばユーリとアレクセイが何処か感情を殺したような顔で
「これが終わったから、レイヴンは帰ってしまうのか?」
無表情と言うよりはどこか悲しさを隠した顔で尋ねられるも答えようがない。
本来帰るべき場所は何の因果があってか別の世界にいるのだ。
帰る場所所か帰り道さえ判らないそんな迷子に何処に帰ると言うのだろうかと俺の方が訪ねたい。
その質問に少しだけ考える素振りを見せ小さな苦笑と共に弱音を一つ。
「帰り道を見つけたらね」
帰り道を見つけてあの綺麗な顔と正面から向き合いたい。
勝気で生意気な視線がほんのちょっぴりの優しい色を灯し、強引なまでな力強い腕がそれでも嫌われないようにと何処か怯えながらも甘えてくるのを受け止めてもいい。
今ならどんな我儘だって聞き入れてあげたい。それこそあの青年の為にクレープだってどれだけでも作れる自信がある。
離れて気がついた餓えに正直戸惑いながら驚きつつも、聞いてる方が恥かしい浮ついた言葉が紡ぐ魘された時の熱にも似た錯覚を今は愛しいとさえ思ってる。
この世界をいくら探しても居ない彼と、きっとまったくと言ってもいいはずだろう瓜二つの彼に罪悪感を交えながら姿を重ねてわかりかねないだろう意味に失笑してその肩をぽんと叩く。
「とりあえず今回もこの現象を確認したから帰りましょ」
仮初の帰る場所に、何も知らない彼らの優しさを騙しながら自分も騙して森の外へと向って足を運ぶ。
「レイヴン?」
意味が判りかねないという顔を隠しもせずついてきたユーリにウインクを一つ飛ばし
「さあ、森の外に逃げた魔物が一気に帰ってくるわよ。気をつけなくちゃ、ねっ!」
背中から取り出した変形弓を瞬時に展開し、矢を番えて一気に放つ。
木々の枝の隙間からこちらへと真っ直ぐ攻撃を仕掛けてきた鳥に良く似たモンスターを貫けばユーリはもちろんアレクセイも少し離れていた場所に居たフレンさえエステリーゼ達を守るために剣を抜く。
「いい忘れたけど、すごく気が立ってるから油断しちゃ駄目よ」
油断どころでは無い。
遠くから迫ってくる足音にすぐ側にいたユーリの息を飲む音を聞く。
「一体どういう事・・・」
足音さえ聞き分けれないその量にアレクセイは眉間をよせる。
「魔物の方が本能で行動するからね。エアルクレーネの異常にとっさに逃げ出すんでしょうけど、エアルクレーネが正常に近付いてきたら今度は自分の縄張りの心配にすごーく殺気立つのよ」
まるで何処かの町で人から聞きかじったような離し方で説明すればいつの間にか集合していたリタにが魔道書を振り上げて
「何でそういう大切な事を先に言わないのよ!」
ゴンと子気味良い音と共に湿った大地を全身で抱きしめた。
「すぐ暴力で訴えるのは辞めなさい」
アレクセイの教育的指導が入るも知らないと言う顔はあさっての方向を向いている。
くらくらする頭で何とか立ち上がろうとすればすぐさまフレンが手を差し伸べてくれて、遠慮なく厚意に甘えさせてもらった。
「それで、どちらに向えばよいのでしょう」
行きは案内されるままに付いて来て、帰り道用に木の幹に目印をつけていたが、丁度その方向からギガントモンスターまではいかないだろうがどうレベルのモンスターが群を成してやってきた。
さすがのアレクセイも無言になって、この森を知り尽くしてるのだろうと言いたげな紅い瞳が如何するのだと聞く。
「こう言うときはあれよ。逃げるが勝ちって」
「三十六計逃げるに如かず。退却し敵を避ける、撤退しても構わない。それは、兵の常である。ですね」
エステリーゼの丁寧な説明に撤退とか逃げるとかなんて言葉は俺の辞書には無いと言いたげな何でか張り合っている三人に向って
「俺様無駄な戦いはしたくないって言うのが本音だけど、さすがにあれは無理だから」
だいぶ群も近くなって来てその姿がはっきりとわかり、次第に顔を引き攣りだした三人を余所にエステリーゼとリタの手を引き
「じっとしてないで走る!奴らには俺達石ころにも思われてないからとにかく逃げる!」
え?ええ?!呆然と引っ張られるままに走り出したリタとエステルの横をジュディスが並走する。
「でもおじさま、どっちに向っていけばいいのかわかっていて?」
二人を引っ張って走る俺の前へ移動し、空から降ってきた鳥形モンスターをしなやかな脚力であっという間に蹴り伏せた。
「とりあえず行きは月を左手に見てきたから」
「なら帰りは右手ね」
月だって移動してるのよ!と背後で喚くリタにジュディスはクスリとだけ笑って槍を構えてキノコにも似たモンスターを串刺しにする。
そのまま駆け出した背中を追うように走れば呪文を詠唱する集中する時間すらないリタは俺の手を払いのけて走る事に専念してくれた。
「それよりも男共は一体何やってるのよ!役立たずがっ!!」
主力戦力は何処行ったと喚く彼女にエステリーゼは申し訳なさそうに
「アレクセイに向ってそれは無いと思いますよ」
義父なのだから役立たずはいくらなんでも言いすぎだとさすがに思うも
「仕事する時に仕事しない人間を役立たずって言うのよ!それとも無能って言って欲しい?!」
意味違いますと言いたげなエステリーゼに気付かないフリをして手厳しい意見にちらりと背後を見ればジュディスに遅れを取る形になった三人の・・・見なかった事にして上げるわ。
女子供の脚力に漸く辿り着いたアレクセイは指示を出す。
「ユーリは私と共にジュディスと前衛に。フレンはエステリーゼ様を!」
はっ、と小気味良い返事と共にユーリは速度を上げて、先行くジュディスの残した魔物の屍骸を目印に前方へと急ぐ。
フレンは俺の前を走りながら、ジュディスがしとめ損ねた手負いの魔物を確実に倒していく。
アレクセイもとても俺様より年上とは信じがたい脚力で追い越し、追い越す僅かな合い間に「無事で」と一言言葉を置いて行った。
「ああーっ!ったく。キザなんだから」
「そうですか?私は物語に出てくる騎士様のようで素敵だと思いますよ?」
まったく別々の意見を聞きながら既に手を離したエステリーゼをリタに任せ彼女達の背後に回りしんがりを勤める。
足元に転がる魔物の屍骸を跨いでとおり、アレクセイたちの攻撃を見事避けてきた魔物をフレンが迎撃する。
さすがに上空からの対応は難しいから、俺が矢を放ち、リタも時々足を止め詠唱破棄した下級魔術で手助けをしてくれた。
だけどやっぱりリタとエステルを守りながらの逃走は限界がある。
迫りくる魔物の数も半端なく、何よりフレンの負担が大きい。
矢の残りの数も気になりだしてなるべく剣の状態で戦う事にする。
エステリーゼの強力な回復魔法で足を止めるだけの余裕は無く、同様にリタの上級魔術の期待も出来ない。
一人で三人を任されていると言ってもいいフレンにも疲れから次第に剣にキレもなくなる。
と思った側で魔物の爪がフレンの左腕を裂いた。
飛び散った防具の下に隠れた腕にも朱の線が走るも、見た感じはあまり傷が深くないようで安心はした。
フレンもこれぐらいの傷は慣れているというように唇を噛み締め痛みをこらえるも、目の前で友人が自分を守る為に傷を負う事になったエステルにはそれだけで十分だった。
「フレンっ?!」
大声で悲鳴にも似た呼びかけに先を行っていたユーリ達が止まるのが遠目に見える。
「大丈夫!」
大声でなんて事無いと言うもエステリーゼのうろたえた顔に足が止まってしまう。
止まったら最後、囲まれて終わりだ。
「フレンっ!」
呼びかければ振り返る顔に向って弓を番える。
なにをするの?!と叫ぶリタの悲鳴にさすがと言うかユーリが戻ってくるのが判る。
それとは反対にフレンの顔が何処か輝いて見えるのは何故だろう。まあいい。
「愛してるぜっ!」
光の矢が三本飛び出し、フレンに真っ直ぐ向って当たり、光を撒き散らしながらフレンに纏わり溶け込むように消える。
「ありがとうございますっ!」
やけに元気な声で返事をしてからエステリーゼに向き合う。
「もう大丈夫ですから」
かすり傷だったのが助かった。俺の術でも癒えた傷にフレンはその傷を見せるもステルは震えていた。
「これが噂の真相なのですね!」
震えている割には頬が高揚して大きなおめめはうるうると潤っている。
胸の前で手を組み、感動と言うポーズにも似た佇まいで幸せそうに微笑んでいた。
「それよりもレイヴン、俺も怪我した」
いつの間にかやってきたユーリが俺の目の前にぐっと肩を寄せる。
右の肩の鎧のない部分の服が裂けているも滲み出る血もなければ、隙間から見えたのは蚯蚓腫れのような細い線だけ。
「舐めときゃ何とかなるでしょ」
リタのあきれ返った声と、さあ行こうというフレンの号令にエステリーゼとはあからさまな反対な態度でユーリは項垂れていた。
先を行くジュディスとアレクセイの「足を止めるな」との叱咤にのろのろと立ち上がり、ユーリと交代と言うようにフレンが前衛に混じる。
西に傾きかかった月の動きに朝までもうすぐだと薄い霧に覆われて星明かりの届かない森の中、辛うじて届く月明りを目安に走り続ける。
しかしいくら体力に自信があるとは言えども、早々走ってばかりは居られない。
コケで覆われる木の上を走る緊張もあれば、飛び移ったりよじ登ったりもしなくてはいけない。
霧だか朝靄だか判らなくなりかけた頃何度目かの休憩をする事になった。
丁度いい洞があり、あまり深くもなく、魔物が寝床にしている様子がなかった。
とりあえず結界を張り、体力回復に取り組む事になった。
グミを齧りながら何とか来たけど、物理的に腹を満たしたいのは薄っすらと太陽の恩恵を感じるような時間になったからだろう。
少しずつ魔物も少なくなり何とか一息つけると判断すると同時に誰ともなくなりだした腹の虫に女の子達が今朝食を用意してくれていた。
と言っても簡単にサンドイッチと言うが・・・
「パンとパンの間にグミが挟まってるんだけど・・・」
あえて誰も直視しなかった斬新なアイディアにエステリーゼは微笑む。
「食事も取れて体力回復。素晴らしいメニューだと思いません?」
合理的では有るが思えませんとは言わずにユーリはそのサンドイッチを一口で食べて見せた。
「キャナリに教えてもらったのです」
誇らしげに言われても誰もどう答えたらいいか判らない。
「あの人だったら有りそうだね」
苦笑しながらフレンは笑って食べる中、アレクセイは黙々と食べていた。
「確かに斬新だけど、野戦向きの食事よね」
どう考えてもお城に住むお姫様の作る食事では無いと思うも
「私は食べやすくって結構好きよ」
本を読みながら食事をするリタの食生活にはばっちりだろう。
こんな時でなければごめんだとモチモチのパンの触感の合い間に広がる甘いグミの人工甘味料に顔を歪ませながら、それでもちゃんと体力回復できる食事を堪能した。

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